7月19日、新潟の関屋浜で「海の花火大会」を撮りました(花火大会の公式ページはこちら)。私の方は「Osmo Pocket 4Pで花火は撮れるのか」の検証と割り切って、三脚に載せて24本・39GB・約37分。設定はマニュアル露出でD-Log 2、後で戻す前提までは頭にありました。ところが2か月寝かせて素材を見返したら、「で、これをどう見せるの?」に答えられない。検証のつもりで、何を検証するかを決めずに撮っていたからです。
そこで順番を逆にしました。まず「花火大会の動画はどうあるべきか」をネットで調べてセオリーを6つに絞り、それに沿って手元の素材を切ったら、37分から残ったのは54秒。この記事はその54秒と、「セオリーに照らして、何が撮れていなかったか」の(反省)まとめです。撮影設定は花火撮影設定編(No.32)、D-Log 2の現像は現像編(No.4)に書いたので、今回は「構成と編集」だけです。
個人的な見どころは中盤、人の頭と海面の反射が入った状態で開く一発を2倍スローにしたところです。4K50pで撮っていたので、25pのタイムラインに置くと全コマを使ったスローがそのまま作れました。その直前までの「待つ人」と「小さい花火」が、この一発のための助走になったかなと思います。終盤では同じ一発を、隣で手持ちしていたiPhone 14 Proと左右に並べています。検証動画なのでテロップは入れていません。
使ったのはDJI Osmo Pocket 4Pの広角20mm側だけ。この記事で書く「撮れていなかったカット」は、全部このカメラで次に撮れるものです。
→ DJI Osmo Pocket 4P スタンダード コンボ:
撮ってきた素材の正体(24本・37分の中身)
まずメタデータで棚卸しをしました。全部4K50p。マニュアル露出に切り替えたのは打ち上げ15分前の19時15分で、シャッター1/50固定、ISOは400→800→1600と暗くなるにつれて上げています。打ち上げ(19時30分)から20時05分までが花火本番で、12本・約20分。その前に「待っている人」を12分半、長回ししていました。
| 時間帯 | 本数・尺 | 中身 | 使えたか |
|---|---|---|---|
| 前日 7/18 16時台 | 5本・1分 | 路地、バス停に来るバス、バス車内 | 「行き」のカットとして1本使用 |
| 19:01〜19:08 | 3本・3分 | 浜に到着。人波、海、夕焼け(オート露出) | 使用。薄暮の人波は資産 |
| 19:15〜19:32 | 3本・12.6分 | 待機の長回し。人が前を横切る | 3秒ずつ2か所だけ |
| 19:33〜20:05 | 12本・20分 | 花火本番。うち4本・2分が真っ黒 | ピーク14発を切り出し |
| 20:05〜20:30 | 0本 | 帰りの混雑を避けて撤収。本当のフィナーレ(20:30)は撮っていない | — |
正直に書くと、この表を作った時点で「動画にならない」理由の半分は分かりました。寄りが1本もない。人の顔がない。フィナーレを撮っていない。三脚に広角を据えて花火の方向だけ見ていた37分です。
花火大会の動画はどうあるべきか。調べて絞ったセオリー6つ
撮り直しはできないので、先に「見せられる動画の型」を調べました。海外の撮影教本系(Videomaker、NewBlue)と、国内のスマホ向け解説(CapCut、Impress Watch)、Osmo Pocket 4Pで花火を撮ったデジカメWatchの記事を読み比べて、言っていることが重なった6つに絞りました。
| # | セオリー | 言い換えると |
|---|---|---|
| 1 | ピークだけ残す | 「上がる→開く→消える」を全部見せない。開いた前後3秒だけ。花火と花火の間の暗い時間は切る |
| 2 | 構成は「期待→開始→中盤→一番派手→余韻」 | まとめ動画は60〜90秒。序盤の単発は短く、一番派手なものを最後の方に置く |
| 3 | 引きと寄りを交互に、前景を挟む | 全景ばかりだと単調。人のシルエット、海面の反射、屋台の灯りを間に入れてリズムを作る |
| 4 | スローは一番見せたい1発だけ | 全部スローにすると間延びする。1発だけ落とすと、そこが山になる |
| 5 | 人と会場は明るいうちに別撮り | 暗くなってから露出を合わせ直すのは無理。薄暮の人波・浴衣・屋台は打ち上げ前に撮っておく |
| 6 | 音は「ドン」を残す | 音楽を敷いてカットをリズムに合わせるが、打ち上げ音は花火の生々しさそのもの。消さない |
読んでいて耳が痛かったのは3と5です。私は「花火=空を撮るもの」と思い込んでいましたが、セオリーは「花火の動画で人が見たいのは、花火を見ている場所の空気」だと言っている。海外記事の言い方だと「人に寄って広く撮れ」。空だけの花火は、どこの花火大会でも同じ絵になります。
セオリーに沿って切ったら、37分が54秒になった
ここからはDaVinci Resolveの作業です。花火本番の12本から「画面の平均輝度が急に上がった瞬間」を機械的に拾って、開いた前後3秒だけを切り出しました。拾えたピークは36か所、そこから明るい順・時間順で14発に絞っています。全部つないだのが下の表で、これがそのまま動画の構成です(公開版はここからさらに数カット削って54秒にしています)。
| 順 | セオリー | カット | 元素材 |
|---|---|---|---|
| 1 | 2・5 期待 | 前日のバス→浜に到着した人波→待つ人(まだ明るい)→待つ人(暗くなる) | 7/18のバス、19:02、19:16、19:30 |
| 2 | 1・2 開始 | 単発3発(奇数で並べる) | 19:33〜19:36 |
| 3 | 3 前景 | 人の頭と海面の反射が入った引きで3発 | 19:38〜19:39 |
| 4 | 3 交互 | 空だけの赤い単発(前景なし) | 19:43 |
| 5 | 4 スロー | 前景ありの一番明るい1発を2倍スロー | 19:39(50p→25p) |
| 6 | 2 一番派手 | 後半の4発 | 19:40〜19:53 |
| 7 | 検証 | 柳のように垂れる大玉を、左:Osmo Pocket 4P(D-Log 2+LUT)/右:iPhone 14 Pro(手持ち)で同時刻比較 | 19:54 |
| 8 | 2 余韻 | 低照度モードで撮った1発(手前の木と浜が写る) | 20:03 |
54秒は、セオリー2の「60〜90秒」より短い。長くできなかった理由は次の章のとおりで、足りないのは尺ではなくカットの種類でした。
反省:セオリーに照らして撮れていなかったもの
- 寄りがゼロ。Osmo Pocket 4Pには望遠60mmがあるのに、一度も切り替えていません。沖合の水上花火は広角だと画面幅の20分の1くらいで、4Kでも小さい。No.32で「望遠側はD-Log 2非対応だからノーマルで手持ち」と書いた自分が、現場で望遠を触っていませんでした
- 人の顔がない。薄暮の人波は撮っていましたが、全部後ろ姿。セオリー5の「明るいうちに人を撮る」は、浴衣、屋台、座って待つ家族、を明るいうちに寄りで撮っておくという意味です
- 本当のフィナーレを撮っていない。20時05分で撤収しました。花火大会は帰りが混むので、ちょうど真ん中にあった「フィナーレみたいな」連発を撮ったところで切り上げた、という判断です。検証としてはそれで足りましたが、記録が目的なら「一番派手なものを最後に」は最後までいないと編集では作れません。次は帰りの混雑込みで撮影計画を立てます
- 待機の長回し12分半に、使えるカットが6秒しかない。人が前を横切る瞬間を待って回しっぱなしにしていましたが、動画に必要なのは「待つ人」の3秒が2か所だけでした。長回しは安心感があるだけで、寄りと入れ替えるべき時間でした
- 真っ黒な4本(合計2分)。19時44分と20時01分に、4K30p・ISO100・ノーマルカラーで記録された4本があります。マニュアル露出のPRO設定が引き継がれない別のモードに切り替わっていたようで、ほぼ真っ黒。操作ミスだと思いますが、覚えていません。暗い現場で画面を触ると、こういうことが起きます
最後の2本だけは、意図して撮った検証です。20時03分、いったん場所を離れてから「AIに『Osmo Pocket 4Pで花火を撮るなら低照度モードは使わない方がいい、白飛びするから』と言われた気がする」と思い出して、わざわざ低照度モード(メタデータ上はシャッター1/4秒・ISO800)で撮りました。結果は下のとおり。それまで真っ暗だった手前の木と浜と街灯が写る代わりに、花火の芯は白く飛んで滲みます。AIの言うことは半分当たりで、花火を主役にするなら使わない、場所の空気を残したいなら1発だけあり。動画の最後の「余韻」はこれで埋めました。
おまけの検証:隣で手持ちしていたiPhone 14 Proと同じ一発を並べる
三脚のOsmo Pocket 4Pの隣で、iPhone 14 Pro(Blackmagic Cameraアプリ・4K50p・露出オート・手持ち)でも2本撮っていました。19時51分から54分、Osmo Pocket 4P側の5.7分クリップと時刻が重なっていたので、同じ一発を左右に並べたのが動画の終盤です。時刻合わせは、緑の花火が開く瞬間を両方の映像で探して手動で合わせました(機器の時計は2秒ずれていました)。
右のiPhoneはオート露出が花火に引っ張られて全体が明るく、夜空が紫に持ち上がって、火花の芯が白く飛んでいます。手持ちなので画も少し動く。左のOsmo Pocket 4Pは夜空が黒く沈んで、金色の火花の粒が最後まで残っています。どちらが「良い」かは用途次第ですが、「花火の色を残す」という一点なら、三脚に載せてM露出にしたOsmo Pocket 4PのD-Log 2は、ポケットから出してオートで撮ったiPhoneより明確に上でした。オート露出が花火で暴れる話はNo.32に書いたとおりで、iPhoneも同じことが起きています。これが今回の検証で一番はっきりした結論です。
持ち帰り:次の花火大会に持って行く9カット表
上の反省を、そのまま「撮る前に決めるカット表」にしました。時刻は関屋浜(打ち上げ19:30)の実測をもとにした目安です。三脚の広角は「引き」の担当にして、手持ちで望遠側を回す時間を、打ち上げ前に確保するのが肝です。
| # | カット | いつ | レンズ・撮り方 | 動画での役割 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 会場へ向かう道・バス・駅 | 前日〜当日夕方 | 広角・手持ち・歩き | 期待(冒頭3秒) |
| 2 | 浜・会場の全景と人波 | 打ち上げ40分前(明るい) | 広角・手持ち | 期待 |
| 3 | 人の寄り:浴衣、屋台、座って待つ家族 | 打ち上げ40〜20分前 | 望遠60mm・手持ち・ノーマル | 前景・空気 |
| 4 | 暗くなっていく空(同じ構図で2回) | 20分前と5分前 | 広角・三脚 | 時間経過 |
| 5 | 単発の花火(引き) | 序盤 | 広角・三脚・M露出・D-Log 2 | 開始 |
| 6 | 前景入りの引き(人の頭・海面の反射) | 中盤 | 広角・三脚を少し下に振る | リズム |
| 7 | 花火の寄り | 中盤 | 望遠60mm・手持ち・ノーマル | 寄り |
| 8 | 見ている人の顔(花火の光で照らされる) | 中盤 | 望遠・手持ち | 前景・スローの候補 |
| 9 | フィナーレと、終わったあとの人 | 最後まで(帰りの混雑込みで計画) | 広角・三脚+手持ち | 一番派手・余韻 |
1台で全部やるなら、5・6は三脚に置いた広角に任せて回しっぱなしにし、自分は手持ちで3・7・8を撮りに行く、が現実的です。Osmo Pocket 4Pは手持ちの望遠でもブレ補正が効くので、混雑した浜でもいけます。1台では足りないと分かった段階で、2台目を借りる判断もできます。
→ この表を持って次の花火大会に行くなら:
この記事が向いていそうな人・現場
- 町の花火大会や夏祭りを「記録しておいて」と頼まれた自治体・観光協会の担当者。去年の素材が40分あるのに、SNSに出せる1分が作れなかった人
- Osmo Pocket 4Pを借りて花火を撮る予定で、設定(No.32)は分かったが「何を撮れば動画になるか」が分からない人
- 三脚で空だけ撮って帰ってきたことがある人。次は望遠で人を撮る時間を作りたい人
編集側の補足:54秒を作るのに使った機能
難しいことはしていません。素材を撮影順に並べたタイムラインを1本作り、そこから切り出してハイライトのタイムラインへ。D-Log 2のクリップにはNo.4と同じ「D-Log2 to Rec.709 size33」のLUTを1ノード目に当てただけで、それ以上のグレーディングは今回していません。2倍スローは50pのクリップを25pのタイムラインに置いて速度50%。iPhoneとの左右比較は、V1とV2に同じ時間のクリップを重ねて、それぞれ中央1920pxだけ残るようにクロップし、左右にパンしただけです。BGMはA2に敷いて、現場の「ドン」はA1に残しました。
ひとつだけ引っかかったのは、50p素材を25pに落とすと通常速度のカットはコマ落としになること。1/50のシャッターで撮っているので、25pで見ると火花の軌跡がわずかにカクつきます。スローを1発入れるために50pで撮るか、軌跡の滑らかさを取って25p・1/50で撮るか。次は「スロー用に望遠だけ50p」という分け方を試すつもりです。
→ 2倍スローとLUTを当てた環境:
レンタルで試す価値があるところ
花火大会は年に1回、失敗しても撮り直せません。だから「本番の前に、薄暮の人波と望遠の寄りだけ練習しておく」ことに意味があります。借りた日の夕方に近所の公園で、上の表の2・3・4を撮ってみてください。三脚に置いた広角と、手持ちの望遠を行き来する動きが身につけば、当日は花火の方を向いているだけで済みます。設定はNo.32のチェックリスト、撮ったあとの眠い灰色はNo.4の現像手順で戻ります。Osmo Pocket 4Pの全体像はハブ記事にまとめています。
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📦 花火は「空」ではなく「見ている場所」を撮る。次の大会の前に1台借りて、薄暮の人波と望遠の寄りだけ練習してください。
