レフ板で顔だけパッと起こす。スタジオでつい誰もがやりがちなこの手、実は森脇先生いわく「いちばん最低なライティング」なんだそうです。何気ない定番をいきなり全否定されて、こちらは正直ドキッとしました。じゃあ何が正解なのか——その答えのカギを握っていたのが、いまパンダスタジオでレンタルしている「無反射黒バック」でした。
黒は光を吸う。だから色が”そこだけ”に出る
森脇先生の説明はシンプルでした。黒は周りの光を反射せず、吸い込んでしまう。すると光が当たっているところの色だけがスッと前に出てくる、と。逆に白や銀のレフであちこちから光を回すと——人間の目には見えていないそうですが——細かい光の筋が無数に入り込んで、被写体に乗ってしまう。
「光源が1個しかない」状態がいちばん綺麗、というのが先生の持論です。あちこちから光が来るほど画はなんとなく薄ぼんやりして、シャープさが逃げていく。光を一方向に絞ると、ぐっと立体的になって色も鮮やかになる。聞きながら、確かに、と何度も唸ってしまいました。
背景として写さなくても効く
おもしろいのは、黒を「背景」として画面に写し込まなくても効果が出ること。被写体の周りに置いておくだけで余計な反射を吸ってくれるので、画がシャープに締まります。レフの真逆の使い方、というわけです。
ポートレートはむしろ逆。光を”全身に回す”
ただし森脇先生、ここですかさず釘を刺します。ポートレートはむしろ逆だと。人を立たせて撮るなら、体全体に光が回らないといけない。だから地面に8枚くらいレフを敷いて、その光を横からじわっと当てて全身に回す——そういう手間をかける。顔だけ起こすのが最低、というのはこの裏返しなんですね。道具の良し悪しではなく、何を撮るかで使い方がひっくり返る、というのが腑に落ちました。
黒は、いま流行っている
ストロボのパラソルも、昔は内側が白や銀が定番でした。それが今は黒が流行っている、と先生。黒に光を当てると、光がバーッと広がらないぶん、わりと大人しくて品のいい光になるんだそうです。
昔は自作していた
こういう道具、昔は自分たちで作っていたとか。天体望遠鏡を買うと、まず鏡筒の内側を真っ黒にしてタミヤの艶消しスプレーを吹く——あの要領で、自前のマットな黒を仕込んでいたそうです。細かく筋を引いて光に表情をつけたりもしたというから、もう職人芸の世界。
結局、白と黒は”色じゃない”
先生のひと言がいちばん刺さりました。白と黒は、簡単に言うと色じゃない。光をどう操作するかの”道具”なんだ、と。これを上手く使い分けられるようになると、写真は一段化ける——そういう話でした。
で、いまはもう自作しなくても買えるし、借りられる。今回紹介した無反射黒バックは、光を吸い込む別珍風の特殊素材を使った、深くて上品な黒。サイズは2×3mで、紙バックのようなテカリが出ません。樹脂製ベースで折り目がつきにくく、扱いやすいのもありがたいところです。
森脇先生、ありがとうございました。
