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こんにちは、パンダスタジオの中村です。
今日の内容は、まず動画でざっとご覧いただけます。Osmo Pocket 4PにNDフィルターは必要なのか、パンダスタジオ浜町の屋上から首都高を撮りながら実演しました。動画を見て「もっと詳しい数字や、なぜそうなるのかが知りたい」と思った方のために、この記事で一段深く掘り下げます。動画で流し見、記事で腹落ち、という使い方をどうぞ。
さて、ここからが記事本編です。今日の結論を先に言ってしまいます。
Osmo Pocket 4Pは、オート露出のままで十分きれいに撮れます。NDフィルターなんて無くても、白飛びしない、ちゃんと見られる映像が撮れてしまいます。
「じゃあこの記事終わりじゃないか」と思われそうですが、そうではありません。オートでOKな人と、NDフィルターを借りた方がいい人が、はっきり分かれるカメラなんです。今日はパンダスタジオ浜町の目の前を流れる隅田川と首都高で、純正NDフィルターセット(ND16/ND64/ND256)を使って実写比較をしてきました。ついでに、オート露出のときカメラの中で実際に何が起きているのかを、撮影データの中身まで開けて数字で確かめました。その結果を見ながら、「あなたはNDが要る側か、要らない側か」を判定できるところまでお付き合いください。
※動画では撮影しながら喋っているため、シャッター速度を「160分の1」「30分の1」などと言い間違えている箇所があります。正しい設定は本番検証を通して1/60で、記事の数字は撮影データの実測値に基づいています。動画の口頭説明ではなく、記事の数字を正としてください。
そもそもNDフィルターとは何か
一言で言うと「暗くするフィルター」です。レンズのサングラスだと思ってください。
暗くして何が嬉しいのか。普通のカメラなら、明るすぎるときは絞りを絞れば済みます。ところがOsmo Pocket 4Pは絞りが固定です。広角レンズはF2.0、望遠はF1.8で、変えられません。つまり明るさの調整手段は「シャッターを速くする」か「ISOを下げる」しかなく、ISOはすぐ下限に張り付きます。夏の晴天では、あとはシャッターを速くするしか道がない。
ここで問題が起きます。シャッターを速くすると、動くものがカチッと止まって写る。動画なのにパラパラ漫画のようなカクカクした質感になるんです。これを避けたい人にとって、絞れないOsmo Pocket 4Pでは、NDフィルターが唯一の解決手段になります。
映画のシャッターは「1コマの半分」
動画のシャッター速度には、映画業界で100年使われてきた基準があります。「180度シャッター」と呼ばれるもので、中身は単純です。1コマの時間の半分だけシャッターを開ける。30fpsなら1コマは1/30秒なので、その半分の1/60秒。これで撮ると、動くものに自然な残像(モーションブラー)が乗って、私たちが「映画っぽい」と感じるなめらかな動きになります。
なぜ「180度」なんて角度で呼ぶのか。昔のフィルム映画カメラは、半円形に切り欠いた円盤をレンズの前でぐるぐる回してシャッターにしていました。円盤の半分=180度が開いていたから、1コマの半分だけ露光する。その名残です。Blackmagicのシネマカメラには今でもシャッターを「角度」で表示する設定が残っています。
で、この1/60秒。夏の晴天で使うとどうなるか。実際にやってきました。
実写比較:ND無し→ND16→ND64→ND256
条件は全カット共通です。パンダスタジオ浜町から首都高6号向島線を狙い、三脚固定、4K/30fps、PROモードでシャッター1/60・ISO 100・ホワイトバランス晴天に固定。変えたのはNDフィルターだけです。
白状すると、最初は失敗しました。勢いよく撮影に出て、ND64を付けたまま全カット回してしまい、スタジオに戻って素材を確認してから「比較になってないじゃないか」と気づいて撮り直しています。さらに撮影中、設定を声に出しながら回していたのですが、あとで撮影データの実測値と突き合わせたら、口で言っている数字をことごとく言い間違えていました。設定は正しく、口だけが間違っていたのが不幸中の幸いです。皆さんは付け替えのたびに指差し確認してください。
ND無し:ほぼ真っ白
NDフィルター無し(1/60・ISO 100)。晴天では全面が白飛びし、輪郭がうっすら残る程度
まずフィルター無し。ご覧のとおり、ほぼ全面が白飛びです。空も川も建物も飛んで、うっすら輪郭が見える程度。露出計算をすると晴天の屋外はこの設定から6段以上オーバーしているので、当然の結果です。「絞れないカメラで晴天に1/60を切るとこうなる」という、この記事でいちばん大事な1枚です。
ND16:まだ明るすぎる
ND16(1/60・ISO 100)。景色は戻るがまだ1〜2段オーバーで、空が飛び気味
ND16は4段分の減光です。だいぶ景色は戻ってきましたが、まだ1〜2段オーバーで、空は飛び気味、全体に眠い画です。日陰や曇り、朝夕ならND16がちょうど良くなるはずですが、真夏のド晴天には力不足でした。
ND64:ドンピシャの適正露出
ND64(1/60・ISO 100)。適正露出。トラックが進行方向に流れ、背景はシャープなまま
ND64、6段減光。これが今日の主役です。空の階調が残り、川の色も出て、そして注目してほしいのが首都高を走るトラックです。車体が進行方向にすっと流れて、背景の橋脚やフェンスはシャープなまま。これが180度シャッターのモーションブラーです。晴天屋外=ND64が基準、と覚えて帰ってください。純正セットの真ん中にND64が入っているのは、ちゃんと理由があるわけです。
ND256:暗すぎて夕方になる
ND256(1/60・ISO 100)。約2段アンダー。昼間なのに日暮れのような暗さになる
ND256は8段減光。今度は2段ほどアンダーになり、昼間なのに日暮れのような画になりました。これは失敗例として載せていますが、ND256が無意味ということではなく、真夏の海面や雪面、ビーチのような「晴天よりさらに明るい場所」用です。都内の街撮りではまず出番がありません。
なお正直に書いておくと、フィルター付け替えのたびに本体にわずかに触れるため、①②④のカットは③⑤と画角が少しズレています。露出比較には影響ありませんが、厳密な同一フレームではありません。三脚に載せていてもズレるものはズレる。これも実際にやってみて分かる現場の話です。
ではオートはどうだったか:実測1/2400の世界
オート露出・ND無し。実測シャッター約1/2400・ISO 140。露出は適正だが車のエッジは硬い
同じ場所で、NDフィルター無し・オート露出でも撮りました。結果、普通にきれいです。白飛びもせず、色も出ています。
このときカメラの中で何が起きていたのか。撮影ファイルのメタデータを解析したところ、オート露出のカメラはシャッターを約1/2400秒まで自動で速めていました(実測で1/2263〜1/2435の間を変動、ISOは140前後)。ND64+1/60の設定と比べると約5.3段分。カメラが「NDフィルターの代わりにシャッターで光を捨てる」判断を全自動でやってくれていたわけです。だから露出は破綻しない。オートは優秀です。
ちなみにこのシャッター実測値、DJIは通常のEXIF領域に書き込んでおらず、動画ファイル内のフレーム単位データを自前で解析して取り出しました。レンタル機材の挙動を数字で説明するためなら、そこまでやるのがうちの流儀です。
等倍で見る:1/60と1/2400、車はこう写る
ND64・1/60の等倍クロップ。車体が進行方向になめらかに流れる(180度シャッター)
オート(約1/2400)の同位置等倍クロップ。エッジがカチッと静止している
同じ場所を走るトラックを等倍で切り出しました。上がND64+1/60、下がオート(約1/2400)です。1/60は車体が進行方向になめらかに流れ、約1/2400はエッジがカチッと静止しています。静止画1枚だとオートの方がシャープで良さそうに見えるのが罠で、動画として再生すると、この「毎フレーム静止」がパラパラとした硬い動きになります。逆に1/60は、コマとコマの間を残像がつないでくれるので、動きがなめらかに見える。露出はどちらも適正、違いはブラーの質だけです。
そしてこの差は、正直に言えば、気にならない人には一生気にならない類のものです。だからこそ、条件で判定しましょう。
おまけ:1/30まで遅くすると、車が溶ける
シャッター1/30(360度シャッター)。トラックは輪郭が判別できないほど溶け、フェンスや橋脚はシャープなまま。※前半セッション素材のためカメラ位置が①〜⑦と異なります
参考までに、シャッターをさらに遅く1/30にしたカットです。30fpsで1/30は、1コマの時間まるごとシャッターを開けっ放しにする「360度シャッター」で、これより遅くは物理的にできません。トラックは車輪も車体も輪郭が判別できないレベルまで溶けて、一方で手前のフェンスや橋脚はシャープなまま。「シャッターが遅い=動くものだけが流れる」ことが一目で分かります。1/60で乗るブラーのちょうど倍です。ここまで来ると独特のぬるぬるした画になるので、常用ではなく演出用の飛び道具ですね。
実はこのカット、冒頭で白状した「ND64を付けっぱなしで回してしまった」失敗セッションの素材です。比較用としてはボツにしたものの、360度シャッターの実例としてここで敗者復活しました。失敗素材も撮っておけば何かに使えるものです。
NDフィルターを借りた方がいい人の条件
1つでも当てはまればNDセットを一緒に借りることをおすすめします。
- 「映画っぽい質感」という言葉にピンとくる人。作品づくり、ブランドムービー、観光PRなど、映像の質感そのものが商品になる撮影をする人。180度シャッターを晴天下で切るにはNDが必須です。
- D-Log 2で撮って自分でカラーグレーディングする人。Logで撮る人はシャッターとISOを固定して露出を追い込むので、光量調整はNDに頼ることになります。
- 照明のフリッカーに悩まされた経験がある人。東日本の照明下では1/50や1/100にシャッターを固定したい場面があります。固定した瞬間、明るさの調整手段はNDだけになります。オートのままだとシャッターが1/2400まで走るのは上で見たとおりで、環境によってはフリッカーの餌食です。
- 水辺・雪・真夏の屋外イベントなど、極端に明るい場所で撮る人。今回の実測でオートはシャッター約1/2400・ISO140まで振り切っていました。これよりさらに明るい環境では、NDで光量そのものを落とすのが正解です。
逆に、社内マニュアル動画、セミナー記録、展示会の様子、日常のVlogといった「記録が目的」の撮影なら、オートのままで何も問題ありません。NDを付け外しする手間の方がリスクです。ここは無理に借りなくて大丈夫です。レンタル会社がこう言うのも変ですが、要らないものを貸してもお互い幸せになりません。
だからこそ「常備」より「必要な時に借りる」
今日いちばんお伝えしたいのはここです。NDフィルターは、毎日カバンに入れておく機材ではありません。ふだんはオートで十分。「もうちょっと表現したい」「明るすぎてどうにもならない」——そう思った時に思い出して、そのとき借りればいい機材です。
使う頻度が低くて、必要な場面でだけ効く。これはある意味、いちばんレンタルに向いた機材だと思うんです。買って防湿庫で眠らせておくくらいなら、撮影の予定が決まったときに本体と一緒に借りて、返す。そのほうが身軽です。映像クリエイターの方で「今回の案件はNDが要るな」となったら、そのときはパンダスタジオレンタルを思い出してください。
借りるならこの組み合わせ
Osmo Pocket 4P本体はスタンダードコンボをご用意しています。
チェックリストに当てはまった方は、純正NDフィルターセット(ND16/ND64/ND256)を本体と同時にどうぞ。デュアルガラス構造で、広角・望遠の両レンズをまとめてカバーする専用設計です。取り付けはフロントレンズカバーを反時計回りに外して、フィルターのタブを溝に合わせて時計回りにひねるだけです。
Osmo Pocket 4Pがどんなカメラなのか全体像を知りたい方は、総合ガイドのこちらの記事からどうぞ。パンダスタジオでの実際の使い方を10連発で紹介しています。
「スマホより安い」!? Osmo Pocket 4Pがインハウス動画制作にめっちゃ使える説
それでは、良い撮影を。
NDフィルターは小さい部品なので、返却前の袋詰めのときに1枚残っていないか、レンズカバーと一緒に指差してくださいね。