室内から海の見える窓を撮ると、室内が真っ黒か、外が真っ白か、どちらかになる。最近のiPhoneの方がきれいに撮れて、一眼で撮った自分が損した気分になる。西巻さん自身が「一眼レフで撮るとこんな感じになっちゃうんですよね」と、自分の旅行写真を出してきました。
「いまさら聞けないRAW現像超入門編セミナー SILKYPIX」のダイジェスト3本目は、その逆光写真をRAW現像で救う実践編です。前半は西巻さんが旅行写真を、後半はカメラマンの横山さんが夕方の逆光写真を、それぞれ仕上げます。
見どころは8分10秒。夕焼けのシルエット写真で、露出を上げると空が白く飛ぶのを見せたあと、HDRのスライダーを極端に上げる場面です。空はそのままで、真っ黒だった暗部だけが持ち上がってくる。「HDRって何かというと、白飛び黒つぶれしている部分を引き出してくれる」を、一発で理解できる画面です。
手元の逆光写真で試すなら、SILKYPIXをインストール済みのノートPCを借りて、同じ順番でなぞってください。
→ SILKYPIX インストール済ノートPC:
最初にやるのは明るさではなく「構図」。傾き、トリミング、パース
西巻さんは、明るさより先に構図を決めます。理由が実務的で、修正ブラシで何かを消したりした後に傾きやトリミングをすると、その部分がずれることがあるから。だから最初に傾きと構図をしっかり決める。
傾きは、詳細の「回転/デジタルシフト」のスライダーでも直せますが、画面上部の回転ツールなら「まっすぐにしたいところをなぞるだけ」で直ります。水平線が見えていれば水平線を、見えていなければ柱をなぞる。さらにビルが上すぼみになる傾きは「パース歪み補正」で、四角の4点をまっすぐにしたいところに合わせてダブルクリック。「初級編という感じじゃなくなってきていますけど」と言いながら、ここまでやっていました。
露出を上げると明るいところも明るくなる。だからHDR
構図を整えたら明るさです。ここで露出補正で明るくすると、手前は出てくるが、もともと明るかったところがさらに明るくなる。これが逆光の難しさです。
そこでHDR。持ち上げていくと、もともと明るかったところには影響せず、暗かったところだけ見えてくる。さらに調整したければシャドウだけ上げる、部分補正ブラシのサイズを大きくして明るくしたいところだけなぞる、と重ねていきます。
ビフォーアフターは「押している間初期状態を表示」ボタンか、キーボードのスペースキー。カーソルをいちいち持っていかなくていい、というのは覚えておくと手が速くなります。
横山さんの夕景:撮影時は「空を飛ばさない露出」で
後半、横山さんが「暑いから昼間は撮らないでしょ」と、夕方や朝の逆光写真の仕上げ方に入ります。ここで一番大事なのは撮影時の話でした。ハイライト、明るい部分を残して撮る。そうすると暗部はどうしてもシルエット気味に暗くなるが、撮影時の露出はそれでいい。太陽は世界一明るい被写体なので、太陽の色を残そうとすれば周りは真っ黒になる。「この空が飛ばない露出で撮影していただく、というのがポイントです」。
これはRAWだからできる段取りです。JPEGでは暗部の情報から色を引き出せない。「実はこれができるのはRAWデータだけなんですよ」と横山さんも念を押していました。
ホワイトバランスには「もう一つの正解」がある
明るさが決まったら、2つ目は写真全体の色合い、ホワイトバランスです。人物のときは「色かぶりを取る」が正解でしたが、横山さんはもう一つの正解を出します。ホワイトバランスは、皆さんが感じた光の色を写真でどう表現するか。夕焼けをもっと赤くしたければ色温度を赤側へ。逆に「これから夜が始まる、一杯飲みに行こうかという雰囲気」なら青側へ振る。写真の色を調整しているように見えて、実際にやっているのは光の色の表現。「色で皆さんのイメージを表現するというのが、ホワイトバランスの作品作りでの本来の目的」。
私はこれを聞いて、動画のカラーで「正しい白」と「見せたい白」を分けて考えるのと同じだと思いました。正解が二つあると知るだけで、迷いが減ります。
HDRの副作用:コントラストが弱くなる。最後にコントラストで締める
HDRを使うと暗部は出てくるが、コントラストが弱くなる副作用がある。だから最後にコントラストを少し高く設定してやる。露出(今回はHDR)、ホワイトバランス、コントラスト。「これは写真全体のイメージを調整する機能」で、この3つで写真の印象が決まる。ビフォーアフターは「全然印象違うでしょ」というくらい変わっていました。
持ち帰りツール:逆光写真の撮影と現像、順番チェックリスト
| 段階 | やること | 理由 |
|---|---|---|
| 撮影 | 空(ハイライト)を飛ばさない露出で撮る。暗部はシルエットでいい。RAWで記録 | 飛んだ空は戻らない。暗部はRAWなら後で引き出せる |
| 現像1 | 構図:回転ツールで水平をなぞる→トリミング→必要ならパース歪み補正 | 後で傾けると、部分補正や修正ブラシがずれる |
| 現像2 | 明るさ:露出補正ではなくHDRで暗部を起こす。足りなければシャドウ、部分補正ブラシ | 露出だと明るいところも一緒に明るくなり、空が飛ぶ |
| 現像3 | ホワイトバランス:色かぶりを取るか、光の色(夕焼けの赤/夜の青)を表現するか決める | 正解は二つある。どちらにするかを先に決める |
| 現像4 | コントラストを少し上げて締める | HDRの副作用でコントラストが弱くなる |
| 確認 | スペースキーでビフォーアフター | 同じ位置で見比べる |
撮影の段階を飛ばして現像だけで救おうとすると、空が飛んだ写真からは何も戻りません。この表は、次に夕方の撮影に出る前に読み返してください。
→ 表の現像1〜4を自分の逆光写真で試すなら:
このダイジェストが向いていそうな人
- 店舗やオフィスの内観を窓際で撮る仕事があって、室内を出すと窓が真っ白、窓を出すと室内が真っ黒、で毎回どちらかを諦めている担当者。空を飛ばさない露出+HDRで両方残ります
- 夕景や朝焼けを撮りに行っているが、現像で露出を上げて空を白くしてしまい、結局シルエットのまま出している人。HDRとホワイトバランスの「もう一つの正解」です
- iPhoneのHDR合成の方がきれいだと感じている一眼ユーザー。一眼のRAWは、同じことを自分の意図で、もっと広い幅でやれます
レンタルで試す価値があるところ
「白飛びと黒つぶれの範囲、ダイナミックレンジが広い写真が作れるのがRAWのいいところ」と横山さんは言いますが、どこまで戻るかはカメラのRAW(12bitか14bitか)と現像ソフトの組み合わせで変わります。手持ちの逆光写真を持ち込んで、SILKYPIX入りのノートで一度HDRを極端に上げてみると、自分のカメラの「戻る範囲」が分かります。それが分かると、撮影時にどこまで暗部を捨てていいかの判断が変わります。
📦 撮るときは空を守る。起こすのは現像で、露出ではなくHDR。
次のダイジェスト04は、モノクロ現像で質感を作る回です。全編アーカイブ(93分)の記事もあります。
