テレビのニュース番組や芸能取材、屋外のロケ現場などで、レポーターやインタビュアーが手にしているシャンパンゴールドのスマートなマイクを見かけたことはないでしょうか。その多くが、世界的な音響ブランドであるSHURE(シュア/シュアー)が開発した、取材用マイクの金字塔「SM63」シリーズ、特に持ち手が長いモデルである「SM63LB」です。放送局やENG(報道取材)の現場においてデファクトスタンダードとして君臨するこのダイナミックマイクには、過酷な現場を支える確かな技術と信頼性が詰まっています。本記事では、SM63LBが長年にわたり音声収録のプロフェッショナルから選ばれ続ける理由を、その優れた音響特性、耐久性、操作性の観点から徹底的に解説します。
放送・ロケ業界のデファクトスタンダード「SHURE SM63LB」とは
多くのレポーターやTV局に愛用される信頼の実績
SHURE(シュアー)の「SM63LB」は、日本の放送局をはじめ世界中のテレビ業界やニュース報道、ロケ現場で圧倒的なシェアを誇るプロ用インタビューマイクです。最大の特徴は、どのような過酷な環境であっても「人の声」を極めて自然かつ明瞭に捉える安定した集音性能にあります。長年培われた高い信頼性により、生放送のニュースから芸能レポーターによる屋外インタビューまで、失敗が許されない現場における音声収録のファーストチョイスとして選ばれ続けています。洗練されたエレガントなシャンパンゴールドの外観は、カメラに写り込んだ際にもスマートな印象を与え、番組の品位を損なわないプロフェッショナルなデザインとして広く認知されています。
インタビューマイクに求められるダイナミックマイクの特性
インタビューマイクとして最も重要な要素は、騒がしいロケ現場や突発的な大音量に対しても歪みにくく、電源不要でタフに使える「ダイナミックマイク」であることです。SHUREのSM63LBは、ダイナミック型ならではの頑丈なカプセル構造を持ち、ファンタム電源などの外部電源を必要としないため、ミキサーやENGカメラ、ポータブルレコーダーに直接接続するだけで瞬時に駆動します。また、人の会話音声の帯域(中音域)に最適化された周波数特性を持っているため、周囲の不要な低音や高音を自然にカットし、インタビュアーやゲストの声が驚くほどクリアに聞き取りやすく収録できるという、取材用マイクとしての理想的な音響設計が施されています。
持ちやすいロングシャンク設計(SM63LB)のメリット
型番の末尾にある「LB」は、マイクの柄(シャンク)の部分が通常モデルよりも長く設計されている「ロングシャンク」モデルであることを意味しています。この設計の最大のメリットは、レポーターが取材相手にマイクを向ける際、手を不必要に伸ばしたり、相手のプライベートスペースに過度に侵入したりすることなく、適切な距離感から自然に口元へ集音できる点にあります。また、インタビュー中にインタビュアー自身の腕や肩にかかる負担を大幅に軽減できるため、長時間の会見や街頭での張り込み取材であっても、安定したマイクワークを維持することが可能になります。見た目にもスマートで、複数人が並ぶ現場でもマイクの差し出しが非常にスムーズに行えるプロ仕様の形状です。
取材時のトラブルを防ぐSM63LBの優れた3つの音響特性
複数人の声を均一に拾う無指向性(全指向性)の強み
SM63LBは「無指向性(全指向性)」という、マイクの周囲360度から均等に音を拾う特性を持っています。一般的なボーカルマイクのような単一指向性マイクの場合、マイクの軸から少しでも口元が外れると音量が極端に下がってしまいますが、無指向性のSM63LBであれば、レポーターと取材相手が交互に話す際や、複数人が同時に発言するシーンでも、マイクを激しく往復させることなく双方の声を均一な音量レベルで収録できます。これにより、インタビュー中の音量バランスの偏りを防ぎ、編集時の音声調整の負担を劇的に軽減します。マイクの向きをシビアに気にする必要がないため、インタビューそのものの進行に集中できるという現場目線の強みがあります。
電磁ノイズを徹底的にカットするハムバッキングコイル搭載
取材現場では、テレビカメラや照明機材、多数の通信機器、近くを走る電車の架線などから発生する「電磁ノイズ(ハム音)」が音声に混入するリスクが常に付きまといます。SM63LBには、この厄介な低域ノイズを電気的に相殺して除去する「ハムバッキングコイル」が内蔵されています。この優れたハム音対策により、スタジオ内の照明機器の近くや、電気設備が多いビル内、電線が張り巡らされた屋外であっても、ブーという不快な電気的雑音をシャットアウトし、常にクリアで濁りのないクリアな音声収録を保証します。予期せぬノイズトラブルを未然に防ぎ、収録データのクオリティをプロ基準で維持するために不可欠な音響技術です。
屋外ロケでも風切り音を最小限に抑える内蔵ポップフィルター
風の吹く屋外でのロケや、話者の吐息が直接マイクに当たることで発生する「ボコボコ」という風切り音(ポップノイズ)は、収録音声の聞き取りやすさを著しく損ないます。SM63LBは、マイクヘッドの内部に効果的なポップフィルターを内蔵しており、空気の乱れによる衝撃音を物理的に和らげる設計となっています。風が穏やかな日常的な屋外取材であれば、外部に大きなウインドスクリーンを取り付けることなく、本体のみでクリーンな音声を収録することが可能です。機動力を最優先したいENG現場において、アクセサリーを最小限に抑えつつ、クオリティの高いクリアな会話を収録できることは大きなアドバンテージとなります。
過酷な現場でも活躍する軽量設計と高い耐久性
長時間のインタビューでも疲れにくい軽量ボディの魅力
長時間の取材や報道特番の生中継などでは、レポーターがマイクを持ち続ける時間が数時間に及ぶことも珍しくありません。重いマイクを使用していると、腕の疲労からマイクの位置が下がり、均一な音量で収録できなくなる原因になります。SM63LBは、頑丈な金属筐体でありながら、重量をわずか約124gという極めて軽量に抑えています。この圧倒的な軽量設計により、女性のレポーターやインタビュアーであっても片手で楽にホールドし続けることができ、長時間のインタビューであっても手の震えや疲労を感じることなく、最後まで安定したインタビュー作業をサポートします。
傷や衝撃に強いVERAFLEXグリルによるタフな構造
報道の現場や災害時の取材現場など、機材が過酷な環境に晒されるシーンでもSM63LBはその耐久性を遺憾なく発揮します。マイクの心臓部を保護するメッシュグリルには、SHURE独自の「VERAFLEX(ベラフレックス)グリル」を採用しています。この特殊なグリルは衝撃や落下に対して非常に強い弾力性を持っており、万が一コンクリートや硬い床に落下させてしまっても、グリルがへこむのを防ぎ、内部のカプセルを衝撃から完璧に保護します。また、防湿・防錆性にも優れているため、雨天時の屋外ロケや、高湿度な環境下でも錆びることなく、長期にわたり初期性能を維持し続けるタフな構造を誇ります。
芸能レポーターやインタビュアーが信頼を寄せるデザイン性
SM63LBが長年愛される理由は、機能面だけでなくその優れた美観にもあります。上品で落ち着きのあるシャンパンゴールドの仕上げは、テレビ画面越しでも主張しすぎず、かつプロ仕様の信頼感を醸し出す美しいシルエットを持っています。カメラのフラッシュや強い照明が当たっても不快な反射を起こしにくいマットな質感が施されており、映像の邪魔をしません。芸能人の囲み取材からお堅い記者会見まで、どのようなフォーマルなビジュアルシーンにも美しく馴染むそのデザイン性は、現場の演出や画作りを重視する映像制作陣からも絶大な信頼を獲得しています。
SM63LBが本領を発揮する3つの具体的な音声収録シーン
街頭インタビューやENG(報道取材)での機動的な収録
ニュース番組の街頭インタビューや急な速報を伝えるENG(報道取材)の現場は、1分1秒を争う機動力が求められます。セットアップに時間のかかるワイヤレスマイクや、マイクの向きにシビアな単一指向性マイクでは、瞬時のインタビューに対応できません。無指向性かつ軽量なSM63LBであれば、対象者にサッとマイクを向けるだけで、相手の立ち位置や背丈を選ばず瞬時にクリアな声を拾い上げることができます。電源が不要なダイナミックマイクの強みを活かし、カメラにケーブルを繋ぐだけで即座に収録体制に入れるため、決定的な瞬間を逃したくない報道現場における最強の武器となります。
騒音が多い環境でも声がクリアに通る屋外ロケ
駅前や商業施設周辺、人通りや車の往来が激しい大通りなど、騒音レベルが高い場所での屋外ロケにおいて、SM63LBはその真価を発揮します。人の声の明瞭度を高めるために絶妙にチューニングされた周波数特性(中音域のプレゼンスピーク)により、周囲の不快な街頭ノイズの中に埋もれがちな「話者の声」をくっきりと前面に押し出して収録します。無指向性でありながらも、不必要に広い帯域の環境音を拾いすぎない絶妙なロールオフ特性を備えているため、賑やかな屋外であっても、ナレーションや掛け合いの言葉が視聴者の耳にクリアに届くハイクオリティな音声を残せます。
記者会見やポッドキャストなどの対談形式のインタビュー
複数のマイクを設置するスペースが限られている記者会見の壇上や、簡易的な対談ブース、ポッドキャストの収録現場でもSM63LBは非常に重宝されます。1対1の対面インタビューにおいて、マイクをテーブルの中央にスタンドで固定しておくだけで、無指向性の特性を活かして両者の声をバランスよく同時に集音することができます。また、ゲストが身振り手振りを交えて話し、口元の位置が多少動いたとしても、音量が極端に小さくなることがないため、機材操作に専念するエンジニアがいない少人数の収録体制でも、安定した音声データを収録することが可能です。
SHURE SM63シリーズのラインナップと違いを比較
スタンダードモデル「SM63」と「SM63LB」の主な違い
SHUREのSM63シリーズには、用途に合わせて選択できるよう複数のバリエーションが存在します。その中でも代表的なモデルが、スタンダードモデルの「SM63」と、本記事で紹介している「SM63LB」です。これらは基本的な音響カプセルやダイナミック型、無指向性、ハムバッキングコイル搭載といった音質に関わる基本性能は全く同じですが、マイク本体の全長(長さ)とカラーリングに違いがあります。標準のSM63が全長14.5cmであるのに対し、SM63LBは全長23.3cmと約9cm長く設計されています。また、SM63は明るいシャンパンゴールド仕上げ、SM63LBは落ち着いた艶消しのブラック(チャコールグレーに近い色味)に塗装されており、現場のビジュアル的な要望によって使い分けられています。
シャンク(柄)の長さによる操作性と見た目の印象の差
通常モデルとロングシャンクモデルの違いは、実際の現場における使い勝手とカメラ映りに大きく影響します。短い「SM63」は、マイクホルダーに固定してスピーチ用として使用したり、レポーター自身が自分の胸元で静かに保持して喋ったりするシーンに適しています。一方、長い「SM63LB」は、記者会見で複数のレポーターがマイクを差し出す場面や、インタビュー対象者との物理的なディスタンス(距離)を一定に保ちたい場面で威力を発揮します。カメラのフレーム外から腕を伸ばして集音することも容易になり、視覚的にもインタビュアーがスマートにスマートに立ち回っている印象を与えることができます。
用途に合わせて選ぶための最適なマイク選定基準
SM63シリーズを選ぶ際は、インタビューを行う「ロケのスタイル」と「接続機器とのビジュアル的なバランス」を考慮して基準を決めると良いでしょう。以下の比較表を参考に、現場に最適なモデルを選定してください。
| 型番 | 全長 | カラー | 主な推奨用途・メリット |
|---|---|---|---|
| SM63 | 14.5cm | シャンパンゴールド | 卓上スタンドでの対談、演台でのスピーチ、持ち運びを最小限にしたいコンパクトな取材。 |
| SM63L | 23.3cm | シャンパンゴールド | 長いリーチが必要な街頭インタビュー、カメラ映えを狙う上品な演出の報道番組。 |
| SM63LB | 23.3cm | ブラック | フォーマルな会見、カメラ内で目立たせたくないシチュエーション、機動性を要するENGロケ全般。 |
SM63LBの実力を最大限に引き出す3つの実用的な活用術
風の強い日や屋外取材に不可欠な風防(ウインドスクリーン)の導入
SM63LBには優れた内蔵ポップフィルターが装備されていますが、台風やビル風が吹き荒れる強風時の屋外ロケや、海岸沿いでのロケなどでは、やはり限界があります。このような過酷な自然環境下でクリアな会話音声を残すためには、オプションパーツである「ウインドスクリーン(風防)」をマイクヘッドに装着することが不可欠です。SHURE純正のフォームウインドスクリーン(A63WSなど)を装着することで、集音される音質への影響(高音域のこもりなど)を最小限に抑えつつ、激しい風のパフ音を効果的に低減させ、プロのクオリティに耐えうるクリアな音声収録が可能になります。
レコーダーやENGカメラとの接続時に注意すべき設定
SM63LBはダイナミックマイクであるため、コンデンサーマイクと異なり「ファンタム電源(+48V)」を必要としません。カメラやミキサー、レコーダーに接続する際は、入力設定を必ず「MIC(マイク入力レベル)」に設定し、ファンタム電源供給は「OFF」にしておくことをお勧めします(誤って給電してもマイク本体が破損することは基本ありませんが、ノイズの原因を排除するため)。また、出力感度がコンデンサーマイクに比べて低めであるため、接続機器のプリアンプ側でゲイン(入力感度)を少し高めに設定し、かつ機材自体のプリアンプノイズが少ない高品質なレコーダーと組み合わせることで、SM63LB本来のポテンシャルを100%引き出すことができます。
プロのようなクリアな音声を収録するための適切なマイク位置
無指向性で使いやすいSM63LBですが、より鮮明な音声を得るためには適切なマイクワークが重要です。目安として、話者の口元からおよそ15cm〜25cm離れた位置に、マイクヘッドを斜め下から向けるように保持するのがベストです。この位置であれば、話者の鼻からの息がマイクに直接当たるのを防ぎつつ、周囲の環境音を適度にいなしながら、最も豊かな声の帯域を捉えることができます。また、インタビュー中に無意識にマイクを握り直すと「ハンドリングノイズ(ガサガサという手擦れ音)」が音声に乗ることがあるため、マイクを握る位置は固定し、グリップ部分を優しくしっかりとホールドすることを意識しましょう。
