ARグラフィックスをカメラの動きに合わせて止めておくには、これまでトラッキングデータを出せる専用のカメラや雲台が必要でした。VizrtがIBC 2026で見せたTriCaster Vizion AI/Rは、それを映像のトラッキングだけでやります。PTZカメラの動きを30秒ほど学習させるだけ、専用カメラは要らない。ブースで実演を見た取材班のカメラの前で、人物の後ろにグラフィックスが「置かれて」いました。
TriCasterはパンダスタジオレンタルでも長く定番のスイッチャーです。今回はラインアップの整理から新機能まで、5分弱で一通り説明してもらっています。
動画で見るべきは2分半すぎ、2.5D ARの実演です。人物をAIキーで切り抜き、背景を残したまま人物とグラフィックスの間に素材を挟む。カメラを動かしてもグラフィックスが同じ位置に留まる。文章では「そうなんだろうな」で終わる話が、映像だと納得に変わります。
Vizion AI/Rは上位モデルのオプションで、現時点では新規取り扱い候補です。TriCasterの基本操作、NDI入力、マクロ、DDRの使い方は現行機でそのまま試せます。
→ TriCasterの入口として一番借りられている小型機:
ラインアップを3クラスに整理:Mini/中間/Vizion
説明はまず製品ラインアップから。TriCasterを3つのクラスに整理し、下からMini、中間クラス(字幕では「Prizm」・要確認)、最上位のVizion。入力数はそれぞれ8、16、44で、SDIは中間モデルが8入出力、上位モデルは最大16入出力(担当者発言・要確認)。入力数で選ぶ、という分かりやすい階段になっています。
LivePanel Pro:担当者ごとに操作画面を作る
新しく追加されたLivePanel Proは、オペレーターに合わせて操作画面を自由に作れる機能。スイッチングとマルチビューアーだけの簡単な画面を用意することもできるし、HTMLグラフィックスを組み込んで入力やDDRプレーヤー、音声まで操作する複雑な画面も作れます。「必要に応じて担当者ごとに操作画面を用意できる」「オープンな仕組みで、システムのすべてのAPIにアクセスできる」という説明でした。
これ、社内配信の現場では効きます。テロップ担当にはテロップのボタンだけ、進行担当には切り替えのボタンだけ。TriCasterの全機能を見せないことで、ミスが減る。
メタデータのパススルーとHTMLグラフィックス連携
NDIのメタデータを取り込んでそのまま出力できるようになり、字幕やSCTEメッセージなど必要なデータを入出力できます。HTMLグラフィックスとの連携も簡単になり、パッケージのIDを入力するだけでそのグラフィックスを使える。内容を編集してプリセットを保存し、表示・非表示を操作、別のローワーサードの出し入れも簡単、というデモでした。
Vizion AI/R:AIキーヤーと2.5D AR、トラッキングデータ不要
最上位のTriCaster Vizionに追加できるオプションがVizion AI/Rで、AIキーヤーとAR機能が使えます。実演の流れは次のとおり。
- 撮影中のカメラ映像(背景もそのまま映っている)に対し、人物をAIでキー抜き
- 背景を残したまま、人物の後ろに好きな素材を挟む(2.5D AR)
- カメラを動かしても、グラフィックスは同じ位置に留まる
- キーイングを使わないシンプルなARも可能。カメラ2でズームインしても重ねた映像が固定される
仕組みは映像のトラッキング。トラッキングデータも専用カメラも不要で、PTZの動きを学習させるだけ。ズームイン/アウト、パン、チルトを行って動きを覚えさせ、設定は最大30秒ほどで完了する、とのことでした(担当者発言・要確認)。
編集部として気になったのは、キーの精度と、学習したPTZの動きから外れた操作をしたときの挙動です。動画のデモは室内の展示ブースで、照明も背景も整っています。これは借りて自分の会議室で試したいところです。
Zoom連携:ブレイクアウトに対応
最後にZoom連携の強化。Zoomのブレイクアウトに対応し、参加者一人ひとりと個別に話せるようになった、外部システムを使わずに実現できる、という説明で締めています。
※TriCaster Vizion、Vizion AI/Rオプション、LivePanel Proは、現時点では新規取り扱い候補として紹介しています。パンダスタジオレンタルでのレンタル開始が決定しているものではありません。商品ページ公開後、この記事にもリンクを追加する予定です。
→ 中規模の配信・収録でTriCasterを本格運用するなら:
この機材が向いていそうな人・現場
- 社内配信でTriCasterを使っているが、オペレーター3人がそれぞれ別のボタンを押し間違えている企業内製チーム(LivePanel Pro)
- ARグラフィックスを入れたいが、トラッキング対応カメラの予算が出ないイベント制作会社(Vizion AI/R)
- Zoom参加者をスイッチャーに取り込んで、ウェビナーの登壇者切り替えを1台で済ませたい配信担当者
レンタルで試す価値があるところ
TriCasterは機能が多いぶん、「自分たちの現場で使う機能は結局3つ」ということがよくあります。その3つが何かを見極めるのに、Mini 4Kを1台借りて通し配信を1回やるのが一番早い。Vizion AI/Rのような新機能は、その基本運用ができてから比較した方が判断がぶれません。
用途別に探すなら
TriCaster・NewTek製品をまとめて見たい人
NDI対応機材と組み合わせたい人
展示会で見た新製品が入荷したかを確かめたい人
→ 新着機材一覧
TriCaster VizionとVizion AI/Rの取り扱いが決まればリンクを追加します。同じNDIブースの小ネタ(「I’m a NODE」Tシャツ)は前の記事に。
📦 ARを入れる前に、TriCasterの「使う機能3つ」を決めておく。
IBC 2026取材シリーズの動画は、撮れたものから順にPANDASTUDIO TVで公開しています。
→ 新着機材一覧(展示会で見た製品の入荷チェックに)
→ 映像制作・撮影技術のセミナー情報
→ PANDASTUDIO TV でIBC 2026取材動画をチェックする
出典:パンダスタジオ IBC 2026 アムステルダム取材動画「IBC Day1 06 Vizrt Rough v01 2」(2026年9月11日収録)
※製品名・仕様・発売時期は取材時のブース担当者の説明(字幕)に基づくもので、収録時点の情報です。掲載のレンタル商品は商品一覧(2026年7月版)でIDの実在を確認済みです。
