RAWとJPEGを同時記録して、開いて見比べて、「違いが分からないからRAWは要らない」と結論した人へ。それは正しい観察です。開いたままなら差はほとんど出ません。差が出るのは、調整したときです。
「いまさら聞けないRAW現像超入門編セミナー SILKYPIX」のダイジェスト1本目は、RAWとJPEGでカメラの中で何が起きているか、そしてなぜ調整すると差が出るのかを、テクノホライゾンの西巻さんとカメラマンの横山さんが12分で説明しています。
見どころは9分40秒からの船の写真です。左が元画像、真ん中がJPEGを編集したもの、右がRAWを現像したもの。オレンジに色かぶりした白い船体を白に戻そうとすると、JPEGでは船の下がピンクに転び、RAWでは被写体本来の色が戻る。理屈を読むより、この3枚を見た方が早いです。
自分のRAWで同じことを試すなら、SILKYPIXをインストール済みのノートPCを借りて、同時記録した1枚を両方いじってみてください。
→ SILKYPIX インストール済ノートPC:
JPEG撮影でも、カメラの中では必ずRAWができている
西巻さんの説明はこうです。JPEG撮影の場合、まずイメージセンサーがRAWデータを出す。次にカメラ内部の画像処理回路(各社が名前を付けているあれ)がJPEGに変換・加工する。最後に記録メディアに保存する。つまりJPEGで撮っていても、カメラの中では必ずRAWが一度できています。色合い、コントラスト、シャープ、ノイズ処理を、撮影前にカメラ側で設定したとおりに回路が仕上げたものがJPEGです。
RAW撮影は、その画像処理回路を使わず、加工せずにそのままメモリーカードに保存する。だから「RAWデータを加工するのは皆さんですよ」。カメラがやっていた仕上げを、パソコンで自分がやる。それがRAW現像です。
撮影時にしか決められないもの、後で決められるもの
RAWのメリットとして最初に挙がったのが「撮影に集中できる」でした。露出(シャッター速度で川の流れをどう表現するか、といった意味の露出)、構図、ピント、ブレ。この4つは後から直せないので、撮影時はここに集中する。一方、明るさやホワイトバランスをその場でいじっている間に「鳥が飛んでいっちゃった」という失敗は、RAWなら後で調整できるので減らせる、と。
12bit・14bitと8bit。大きな円の中から8bitを切り出す
モニターに表示するデータもプリンターに流すデータも、全部8bitです。ではなぜ12bitや14bitの大きなRAWが要るのか。西巻さんの図がうまくて、調整とは「この大きなRAWの中から、どこかの8bitを切り出す作業」だと言います。8bitしかないJPEGで色を動かすと、円からはみ出して欠ける部分が出る。そこには情報がないので画質の劣化につながる。12bitや14bitなら、その中で動ける範囲があるので劣化せずに調整できる。
横山さんが補足していたのが大事で、14bitの方が12bitより「画質がいい」のではなく「調整幅が広い」。露出補正をしたときに白飛びが戻ってくる量が違う、ということです。
船の写真:JPEGは「色」しか持っていない
ここで冒頭の船の話です。JPEGはRGBデータなので、色でしか判断できない。船体にかぶったオレンジと、もともとオレンジだった部分は「オレンジの仲間」。だから船体を白くしようとすると、もともとオレンジだった部分の色も一緒に抜けてピンクになる。
RAWは、ホワイトバランスの情報(光の色)と、光の強さの情報(階調)をバラバラに持っている。だから船体を白にすれば、そのときの本来の色がちゃんと再現される。横山さんの言葉で言うと、「JPEGになっちゃうと、ホワイトバランスという概念がなくなっちゃうんですね」。RAWで撮っておけば、後からホワイトバランスを変えても、撮影時に変えたのと同じ結果が得られる。
私はこれを聞いて、動画のLog収録と同じだと思いました。あとで色を決められるのは、素材が「色」ではなく「光の情報」を持っているからです。
持ち帰りツール:RAWとJPEG、何が違って、撮影時に何を決めるか
| 項目 | JPEG | RAW |
|---|---|---|
| カメラの中で | 画像処理回路が加工済み | 加工せずそのまま保存 |
| ファイルサイズ | 小さい | 大きい |
| 情報量 | 8bit | 12bit/14bit(カメラによる) |
| 補正の幅 | 少ない。補正量に応じて劣化 | 広い。劣化が少ない(ゼロではない) |
| ホワイトバランス | RGBに固定済み。概念がない | 光の色の情報として後から決められる |
| 開いただけの見た目 | ほとんど差はない。差は調整したときに出る | |
| 撮影時に決めるべきこと | 露出(シャッター速度の表現)、構図、ピント、ブレ。この4つは後で直せない | |
| 後で決められること | ほぼ無い | 明るさ、ホワイトバランス、コントラスト、色、ノイズ |
セミナーで出た豆知識も一つ。圧縮RAW(可逆圧縮)は画質は落ちませんが、開くときに展開が要るので現像のスピードが少し落ちる。非圧縮RAWはファイルが大きい代わりに開くのが速い。どちらを使うかは、容量と速度のどちらを取るかで決めればいい、とのことでした。
→ 表の「後で決められること」を自分のRAWで試すなら:
このダイジェストが向いていそうな人
- ECサイトの商品写真を自社で撮っていて、蛍光灯とLEDが混ざった部屋で白い商品がオレンジやグリーンに転ぶのに困っている担当者。RAWなら、後からホワイトバランスを「撮影時に変えたのと同じ結果」で直せます
- 鳥や電車のような動きの速い被写体を撮っていて、設定をいじっている間にシャッターチャンスを逃した経験がある人。撮影時に決めるのは露出・構図・ピント・ブレの4つだけ、と割り切れます
- 「RAWは容量を食うだけ」と切っていた人。差が出る条件(調整したとき)を知ってから、もう一度判断してください
レンタルで試す価値があるところ
この記事の内容は、読んで理解するより、同時記録した1枚を両方調整して比べた方が10倍早いです。必要なのはRAWが撮れるカメラと、RAW現像ソフトが動くPC。どちらも持っていない人は、両方まとめて借りて、週末に一度やってみてください。手持ちのカメラがJPEGのみの機種なら、RAW+JPEG同時記録ができるミラーレスを1台借りて、同じ被写体を撮り比べるのが確実です。
→ RAW+JPEG同時記録で撮り比べるなら:
📦 RAWの価値は、開いたときではなく、直したときに出ます。
次のダイジェスト02は、SILKYPIXで最短で現像するワークフローです。全編アーカイブ(93分)の記事もあります。
