高解像度アクロマチック設計。TTArtisan HX 90mm F1.25の光学性能と手持ち操作性を評価

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PANDASTUDIO.TVのCEOの西村正宏のWeb上ニックネーム。東京都中央区在住。兵庫県たつの市出身。早稲田大学大学院で情報工学の修士号。駒澤大学大学院で経営学の修士号を取得。IT,インターネット、AI、映像機器、音響機器を愛す。

ハッセルブラッドのXシステムは、中判ミラーレスカメラならではの圧倒的な高画質と階調豊かな描写力で、多くのプロフェッショナルやハイアマチュア写真家を魅了し続けています。その卓越したポテンシャルをさらに引き出し、これまでにない浅い被写界深度と美しいボケ味を提供するサードパーティ製レンズとして注目を集めているのが、銘匠光学(TTArtisan)の「TTArtisan HX 90mm F1.25」です。本記事では、この超大口径中望遠マニュアルフォーカスレンズの基本スペック、アクロマチック設計がもたらす高解像な光学性能、そして手持ち撮影における実用的な操作性について、詳細な検証を交えながらプロの視点で徹底的に評価・解説します。

TTArtisan HX 90mm F1.25の基本スペックと開発コンセプト

ハッセルブラッドXマウントに対応する大口径中望遠レンズの概要

TTArtisan HX 90mm F1.25は、ハッセルブラッドのXマウント(X1D、X2Dシリーズなど)にネイティブ対応する大口径中望遠マニュアルフォーカス(MF)レンズです。中判ミラーレスの大型センサー(44×33mm)に対応するイメージサークルを確保しながら、開放F値1.25という驚異的な明るさを実現しています。中判システム向けの大口径レンズは一般的に極めて高価かつ大型になりがちですが、本レンズは高い光学性能と実用的なパッケージングを両立させ、ポートレート撮影やハイエンドな作品制作における新たな選択肢として登場しました。マウントアダプターを介することなく直接カメラボディに装着できるため、電気信号の連動こそありませんが、フランジバックや光軸のズレといった画質劣化要因を排除した精緻な撮影ワークフローを可能にします。

本レンズの主なスペックは以下の通りです。4群11枚の贅沢なレンズ構成を採用し、その中には色収差を補正する高屈折低分散ガラスが効果的に配置されています。最短撮影距離は1.0mとなっており、中望遠レンズとして被写体に適度な距離を保ちつつ、背景を劇的に整理したクローズアップ撮影が可能です。フィルター径は77mmと大口径レンズとしては標準的なサイズに抑えられており、市販の各種円偏光(PL)フィルターやNDフィルターの運用も容易です。これにより、日中の屋外撮影における開放F1.25での露出制御もスムーズに行うことができます。

項目 仕様詳細
マウント ハッセルブラッドXマウント
焦点距離 90mm(35mm判換算:約71mm相当)
フォーカス マニュアルフォーカス(MF)
レンズ構成 7群11枚(アクロマチックダブレット含む)
絞り羽根枚数 10枚

銘匠光学(TTArtisan)が追求した設計思想と光学設計

銘匠光学(TTArtisan)は、クラシカルな操作性と現代のデジタルセンサーに最適化された高い光学性能を融合させることをブランドのコア思想としています。特にこの「HX 90mm F1.25」の開発においては、中判センサー特有の微細な画素ピッチと広いダイナミックレンジに耐えうる解像力の確保が最優先されました。開発チームは、単に「背景を大きくぼかす大口径レンズ」を作るのではなく、ピントが合っている合焦面の芯の強さと、そこからなだらかに崩れていくアウトフォーカス部分の美しさを高い次元で両立させるための独自の光学設計を選択しました。その鍵となるのが、贅沢に配置された高屈折低分散ガラスと、緻密に計算されたレンズアライメントです。

このアライメント設計により、大口径レンズ特有の球面収差やコマ収差を徹底的に抑制することに成功しています。ハッセルブラッドの純正レンズ群が持つナチュラルで透き通るような色再現性に敬意を払い、TTArtisan独自のマルチコーティングを施すことで、カラーバランスの乱れを防ぎ、ヌケの良いクリアな像を安定して結像させます。銘匠光学は、マニュアルフォーカスという「光と対話する行為」を最大限に楽しむための道具として、デジタル時代の新しい中判大口径の基準を打ち立てるという強い意志を持ってこのレンズを世に送り出しました。

焦点距離90mmと開放F値1.25がもたらす表現領域

ハッセルブラッドの44×33mmセンサーにおいて、90mmという焦点距離は35mmフルサイズ換算で約71mm相当の画角に相当します。この画角は、標準レンズに近いナチュラルなパースペクティブ(遠近感)を持ちながら、中望遠レンズ特有の緩やかな引き締め効果と被写体の圧縮感を得られる非常に使い勝手の良いレンジです。歪みが極めて少なく、人物の顔立ちやプロポーションを極めて自然に描写できるため、ポートレート撮影においては最適解の一つとされています。また、スナップ撮影においても、肉眼に近い自然な視野から少しだけ特定の要素を切り取るような、叙情的なフレーミングを容易に行うことができます。

そして、このレンズの最大のハイライトである「開放F値1.25」は、中判システムにおいて圧倒的な表現の自由度をもたらします。被写界深度は極限まで浅くなり、背景を完全に溶かすような大きなボケ表現が可能になります。これにより、煩雑な背景から主役を鮮やかに分離させ、まるで映画のワンシーンのようなドラマチックな空気感を創出できます。同時に、低照度環境においてもISO感度を過度に上げることなくシャッタースピードを維持できるため、光量の限られた室内や夜間のストリートスナップにおいて、中判センサーの低ノイズかつ豊かな階調性を完全に活かしたクオリティの高い撮影が実現します。

質感の高い金属鏡筒と堅牢なビルドクオリティの検証

TTArtisan HX 90mm F1.25を手にした瞬間、まず驚かされるのがその圧倒的な存在感と重厚な造りです。鏡筒のほぼすべてのパーツが高精度に削り出されたアルミニウム合金などの金属製で構成されており、プラスチック素材を極限まで排除したクラシカルなビルドクオリティを誇ります。この金属鏡筒は、手にした時の心地よい冷たさと適度な重量感(約1,030g)を提供し、ハッセルブラッドXシリーズの堅牢かつエレガントなボディデザインと見事に調和します。マウント部の勘合精度も非常に高く、ボディへの装着時にブレやガタつきは一切感じられず、精密な光学機器としての信頼性を体現しています。

また、レンズ先端部には引き出し式のビルトインフードが採用されており、不要な有害光を遮断すると同時に、移動時の前玉の保護にも貢献します。フォーカスリングや絞りリングの文字盤は、単なるプリントではなく精密な刻印に塗料が流し込まれた手法を採用しており、長期間の使用による摩耗で文字が消える心配もありません。プロフェッショナルが過酷なロケ現場や日々の撮影ワークフローにおいて道具として酷使することを前提とした、タフで洗練された設計思想が細部にまで貫かれています。

高解像度アクロマチック設計が実現する圧倒的な描写力

色収差を極限まで低減するアクロマチックレンズの仕組み

大口径レンズの設計において最も困難な課題の一つが、色収差(色にじみ)の発生です。特にF1.25という極めて明るい絞り値では、異なる波長の光(赤、青、緑など)が同じピント面に集光しにくくなり、輝度差の激しい輪郭部分に紫や緑のフリンジ(色にじみ)が発生しやすくなります。この問題を根本から解決するために、TTArtisan HX 90mm F1.25は「アクロマチック(消色)ダブレット」設計を導入しています。アクロマチックレンズとは、分散率の異なる2枚の光学ガラスレンズ(凸レンズと凹レンズ)を精密に貼り合わせることで、主に青と赤の2つの波長の焦点を同一平面上に正確に合致させる技術です。

この高度なアクロマチック設計により、一般的な大口径中望遠レンズにありがちな、開放付近での「解像力はあるが、細部が色にじみによって滲んで見える」という現象を劇的に低減しています。被写体のエッジ部分がスッキリと締まり、金属のハイライト部分や木の葉の隙間から差し込む光など、コントラストが非常に高いシチュエーションでもクリアな輪郭を保つことが可能になります。これは、画像処理ソフトによる後期補正に頼ることなく、撮影されたマスターデータのクオリティそのものを引き上げるための、極めて純粋で物理的なアプローチです。

開放F1.25から実用的なシャープネスと高い解像性能

従来の超大口径レンズの多くは、開放絞りにおいて中央部は柔らかく描写され、絞り込むことで初めてシャープネスが立ち上がっていくという特性を持っていました。しかし、TTArtisan HX 90mm F1.25は現代の高画素センサーでの使用を前提としてチューニングされており、絞り開放のF1.25から中心部は非常に実用的で鋭いシャープネスを誇ります。ポートレート撮影における瞳の虹彩や、衣服の微細な繊維の質感、肌のキメに至るまで、拡大表示しても崩れることなく緻密に描き出す解像性能を備えています。

絞りをF2.0からF4.0へとわずかに絞り込むことで、描写のシャープネスはさらに一段と向上し、画面の中心から周辺部まで均一で極めて安定した高解像度描写へと変化します。開放時の情緒的な描写から、絞り込んだ際の現代的でクリスプな描写まで、1本のレンズで多彩な表情をコントロールできる二面性も、このレンズを扱う大きな喜びとなっています。中判フォーマットならではの情報量の多さと相まって、微細なグラデーションまで損なうことなく再現する実力を持っています。

中判センサーのポテンシャルを最大限に引き出す表現力

ハッセルブラッドが誇る44×33mmの大型中判センサーは、一般的な35mmフルサイズセンサーと比較して約1.7倍の受光面積を持ち、豊かなダイナミックレンジと圧倒的なトーンの連続性を有しています。このセンサーの真価を発揮させるには、レンズ側にもそれに見合う「豊かな光の情報量」を伝達する能力が求められます。TTArtisan HX 90mm F1.25は、大口径ならではの豊富な周辺光量と、卓越したコントラスト再現性によって、中判センサーのポテンシャルを余すところなく引き出します。黒つぶれしやすい暗部のディテールや、白飛びしがちなハイライトの粘りを引き出し、肉眼で見た世界以上の深みを持つビジュアルへと昇華させます。

また、中判センサーならではの特有の被写界深度の浅さは、本レンズのF1.25というスペックと組み合わさることで、さらにその視覚的インパクトを倍増させます。ピントが合っている部分の鋭い立ち上がりと、そこからアウトフォーカス領域へ向けてなだらかに、かつ劇的に変化していくグラデーションの滑らかさは、中判センサーと高品質な大口径単焦点レンズの組み合わせでしか得られない、唯一無二の表現力と言えます。

逆光撮影時におけるフレア・ゴーストの抑制効果

屋外ポートレートや日中のスナップにおいて、太陽光を画面内または画面周辺に取り入れた逆光表現は、ドラマチックな演出に欠かせない要素です。TTArtisan HX 90mm F1.25には、最新のマルチコーティング技術が全面的に施されており、逆光環境下でも不快なフレアやゴーストの発生を効果的に抑制します。強い光源がフレーム内に入り込んだ場合でも、極端なコントラスト低下(画面全体が白っぽくなる現象)を防ぎ、被写体の輪郭やディテールをしっかりと維持したまま、ヌケの良い画像をキャプチャすることができます。

もちろん、状況によってはレンズの個性を活かした適度で美しいフレアや、オールドレンズのような柔らかなゴーストをあえて表現に取り入れることも可能です。意図的にサイドから光を滑り込ませることで、ポートレートに温かみやノスタルジックな空気感を加えるなど、撮影者の表現意図に寄り添った繊細なコントロールを受け入れるだけの、優れた光学バランスを備えています。

美しいボケ味と立体感を活かしたポートレート撮影の魅力

ピント面の鋭さと背景の滑らかなボケ味が織りなす立体感

ポートレート撮影における本レンズの最大の強みは、鋭く立ち上がるピント面と、そこからシームレスに溶け込んでいく背景の滑らかなボケ味が織りなす、圧倒的な「立体感(3D効果)」にあります。ピントが合っている人物の瞳や表情はまるで浮き立つように克明に描写され、一方で背景は二線ボケのようなうるささを一切見せず、まるで絵画の背景のように滑らかに収束していきます。この劇的な対比によって、平面的になりがちな写真表現の中に、確かな奥行きと空気感が生まれます。

ボケの美しさを追求するため、TTArtisanは10枚の絞り羽根を採用した円形絞りを設計しました。これにより、開放F1.25から数段絞り込んだ状態であっても、ボケの形状が不自然な多角形にならず、美しい円形を保ち続けます。ポートレートにおける木漏れ日や街の灯りなど、背景のボケ要素が被写体の邪魔をすることなく、主役をより美しく演出するための最高の引き立て役として機能します。

被写体を際立たせる人物撮影(ポートレート)での実用性

実際のポートレート撮影現場において、TTArtisan HX 90mm F1.25は絶大な実用性を発揮します。特にスタジオでのライティング撮影や、ロケーション撮影における限られた条件下で、被写体の存在感を強調したい場合にこのレンズは無類の強みを見せます。ハッセルブラッドの高品位なカラープロファイル「ハッセルブラッド・ナチュラル・カラー・ソリューション(HNCS)」と本レンズの透明感ある描写が融合することで、肌のトーンを極めて健康的に、かつ透明感あふれるグラデーションで再現することができます。

マニュアルフォーカス(MF)での人物撮影は、一見すると敷居が高く感じられるかもしれませんが、被写体の細かな表情の変化や一瞬の眼差しに意識を集中させ、指先でピントを極限まで追い込んでいくプロセスそのものが、ポートレート撮影の本質的な楽しさを再認識させてくれます。オートフォーカスが迷いがちな、風に揺れる髪の毛越しや、前ボケを大きく取り入れたシチュエーションでも、撮影者の意図通りに正確にピント位置を決定できるため、クリエイティブな表現において妥協する必要がありません。

大口径ならではの夜景・低照度環境での美しい玉ボケ

夕暮れ時から夜間にかけてのストリートポートレートや夜景スナップにおいて、このレンズのF1.25という大口径は真価を発揮します。点光源は画面中央部で美しい正円の玉ボケを形成し、周辺部に向かうにつれて発生する口径食(レモン型の変形)も、適度な回転感を生み出すことで写真全体に独特のダイナミックな流れを与えます。この美しい玉ボケは、夜の街を華やかなステージへと変貌させ、平凡な背景であっても幻想的なアート作品へと昇華させる力を持っています。

また、玉ボケの内部に年輪のような不自然な模様(いわゆるオニオンリングボケ)が発生しにくいことも、非球面レンズの過度な採用を避け、素性の良い球面レンズの組み合わせとアクロマチック設計を主軸に据えた本レンズならではの利点です。濁りのない、クリアで透き通るような美しい光の球が、被写体の背後を優雅に彩ります。

被写体との最適な距離感を保てる90mmの画角設計

ポートレート撮影において、撮影者と被写体(モデル)との間の「物理的な距離感」は、モデルの表情の硬さやリラックス具合に直接影響を与える重要な要素です。換算約71mm相当となる90mmの焦点距離は、被写体に近づきすぎて圧迫感を与えることがなく、同時に離れすぎて大声で指示を出さなければならないような疎遠さも生み出さない、コミュニケーションに最適な距離をキープできます。

この程よい距離感は、自然なポートレートを撮影する上で非常に有利に働きます。被写体自身がカメラの存在を過度に意識することなく、自然な仕草や瞬間的な表情を引き出しやすくなり、それと同時に中望遠レンズらしい適度なパースペクティブの整理によって、背景の不要な要素を簡単にフレームアウトさせることができます。撮影者にとっても、フレーミングのコントロールがしやすく、撮影テンポを崩さずにセッションを進めることが可能です。

手持ち撮影における操作性とマニュアルフォーカスの使用感

重量級レンズでありながら手持ち撮影を可能にする操作バランス

TTArtisan HX 90mm F1.25は、高精度な金属鏡筒と贅沢なガラス構成を採用しているため、重量は約1,030gと、中判用交換レンズの中でも確かな存在感を持つ部類に入ります。しかし、ハッセルブラッドX1DやX2Dといった、グリップ部が深く設計され、ホールド性に優れたカメラボディと組み合わせることで、驚くほど優れた前後の重量バランス(重心設計)を実現しています。レンズ単体の重さが手首への負担として直接かかるのではなく、カメラを構えた際に左手でレンズを下からしっかりと支える「正しいホールドフォーム」をとることで、重心が身体の中心に安定し、数字から想像する以上に手持ちでの撮影を軽快に行うことができます。

この適切な操作バランスにより、三脚に縛られることなく、フットワークを活かしたアングル模索や、スナップ撮影における瞬発力のあるフレーミングが可能になります。重量級レンズだからこそ得られる安定感は、シャッターを切る際の手ブレを物理的に抑制する効果ももたらし、特にボディ内手ブレ補正(IBIS)を搭載したハッセルブラッドX2Dなどのボディと組み合わせることで、低照度下での手持ちMF撮影の成功率を飛躍的に向上させます。

滑らかで微調整が容易なフォーカスリングの回転トルク

マニュアルフォーカス専用レンズにおいて、フォーカスリングの操作感はレンズの価値そのものを決定づける最重要ファクターです。TTArtisan HX 90mm F1.25のフォーカスリングは、非常に上質なヘリコイドグリースが採用されており、スカスカ感や引っかかりが一切ない、重すぎず軽すぎない絶妙な回転トルクにチューニングされています。指先のわずかな力加減にミリ単位でリニアに反応するため、開放F1.25の極めて薄いピント面を、狙った位置(例えば睫毛ではなく、瞳の奥の虹彩)へ正確に、ストレスなく合致させることが可能です。

また、無限遠から最短撮影距離までの回転角(フォーカススロー)が十分に広く設計されていることも大きなメリットです。マクロ域や中距離でのピント合わせにおいて、リングを回しすぎてピント位置を通り過ぎてしまうようなシチュエーションを防ぎ、マニュアルフォーカスならではの「ピントをじっくりと追い込んでいく愉悦」を最大限に引き出します。冬場の撮影で手袋を着用していても滑りにくいよう、ローレット加工(滑り止め溝)が施された金属リングの質感も秀逸です。

絞りリングのクリック感と直感的な露出コントロール

本レンズは、鏡筒先端側に配置された独立した絞りリングを搭載しています。各絞り値(F1.25からF16まで)には、心地よいクリック感が設定されており、カチカチと小気味良いフィードバックを指先に伝えながら、直感的に絞り値を変更することができます。これにより、ファインダーから目を離すことなく、指先の感覚だけで現在の絞り値を把握し、被写界深度や露出をリアルタイムにコントロールすることが可能になります。

クリックの感触は適度に硬く、撮影中に何かに接触した拍子に意図せず絞り値が動いてしまうような誤操作を防ぐ設計となっています。ハッセルブラッドのダイヤル操作によるデジタルな露出制御とは一線を画す、クラシカルなメカニカル操作が、撮影者の五感を刺激し、より深く「写真を撮るプロセス」へと没入させてくれます。各絞り値ごとの正確な露出ステップは、露出計を使用したスタジオ撮影においても正確なマニュアルコントロールを支援します。

ピーキング機能を活用したMF(マニュアルフォーカス)のピント合わせ

F1.25という極浅の被写界深度を持つレンズを手持ちで運用する場合、カメラボディ側の電子アシスト機能の活用が極めて有効です。ハッセルブラッドXシリーズに搭載されている高精細なEVF(電子ビューファインダー)と「フォーカスピーキング機能」を併用することで、MFでのピント合わせの精度とスピードは劇的に向上します。ピントが合っている部分の輪郭がカラー(赤、黄、青など設定可能)で強調表示されるため、被写体のどこにフォーカスが合っているかが一目で判別できます。

さらに、EVF内での「ワンボタン拡大表示機能」を組み合わせることで、ピーキング表示だけでは掴みきれない、瞳のディテールなどの極小パーツへの厳密なピン合わせが可能になります。一瞬の手ブレや呼吸による身体の前後動さえもピントに影響するシチュエーションにおいて、このデジタルアシストと滑らかなフォーカスリングのコラボレーションは、MF撮影を「難しい挑戦」から「確実でクリエイティブな表現手法」へと変えてくれます。

TTArtisan HX 90mm F1.25を導入すべき4つの理由

ハッセルブラッドXシステムで超大口径のボケ表現を楽しめる点

ハッセルブラッド純正のXCDレンズ群は、極めて優れた光学性能とレンズシャッターによるハイスピードシンクロを特徴としていますが、F値に関しては比較的控えめな設計(F1.9からF4など)が多く、超大口径レンズ特有の「溶けるようなボケ表現」を求めるユーザーにとっては、選択肢が限られていました。TTArtisan HX 90mm F1.25は、そのギャップを完璧に埋める存在です。開放F1.25という純正レンズには存在しない別次元のスペックを提供し、ハッセルブラッドの豊かな色階調と組み合わせることで、未だかつてないほどソフトで広大なアウトフォーカス表現を手に入れることができます。純正レンズが持つ高精度な描写力とは異なる、よりアーティスティックでドラマチックなボケ表現をシステムに追加できる価値は計り知れません。

アクロマチック設計による優れたコストパフォーマンス

中判カメラ用の超大口径レンズは、一般的に設計および製造難易度が極めて高く、各カメラメーカーの純正品や大手サードパーティ製であっても、数十万円から時には百万円を超える非常に高価な製品となりがちです。これに対し、TTArtisan HX 90mm F1.25は、色収差を高度に補正する「アクロマチックダブレットレンズ」を含むハイエンドな光学設計を導入しながらも、手頃な価格帯を実現しています。これはマニュアルフォーカスに特化し、電子部品を廃したシンプルな機構設計にすることで、製造コストを抑えつつ光学ガラスとビルドクオリティにすべてのリソースを集中させた結果です。この卓越したコストパフォーマンスは、ハッセルブラッドユーザーが「もう一本の個性的な描写表現」を手軽にシステムに組み込むための最大の障壁を取り除いてくれます。

ポートレートからスナップまで対応する高解像な描写力

単なる「ボケが面白いおもちゃのようなレンズ」ではなく、絞り開放からしっかりと芯のある高解像度描写を提供する実力派である点も、導入を強く推奨する理由です。ポートレート撮影における細部の解像力はもちろんのこと、F4.0〜F8.0程度まで絞り込めば、画面周辺部まで非常にクリーンで歪みのないフラットな描写へとシフトするため、都市スナップや風景写真、静物撮影(物撮り)といった幅広いジャンルでその実力を発揮します。マニュアルフォーカスでじっくりと被写体と向き合いながら、一コマ一コマを最高のクオリティでキャプチャするという、クラシカルでありながら非常に高精細なモダンデジタル表現を両立させることができます。

所有欲を満たすクラシカルなデザインと優れた耐久性

カメラ機材において、手にした時の質感や操作時の手応え、そしてボディに装着した時の佇まいの美しさは、撮影者のモチベーションを左右する重要な要素です。TTArtisan HX 90mm F1.25は、最新のミラーレスレンズにありがちな樹脂製のミニマルデザインとは一線を画し、かつてのクラシックレンズを彷彿とさせる緻密なローレット加工と、美しい金属光沢を湛えたフルメタルボディを採用しています。ハッセルブラッドXシリーズの気品ある北欧デザインと見事に調和し、所有する喜び、そして撮影に持ち出す喜びを深く実感させてくれます。この徹底された金属パーツの使用は、経年劣化に対しても非常に強く、適切なメンテナンスを行うことで、何年、何十年と愛用し続けられる堅牢性と耐久性を約束します。

よくある質問(FAQ)

Q1. このレンズは、ハッセルブラッドのカメラボディと電子通信(AFやExif情報の記録)ができますか?

いいえ、TTArtisan HX 90mm F1.25は完全なマニュアルフォーカス(MF)およびマニュアル絞りレンズです。レンズ内に電子接点が設けられていないため、カメラボディとの電子通信は行えません。オートフォーカス(AF)は使用できず、撮影データ(Exif)にレンズの焦点距離や撮影時の絞り値(F値)は記録されません。撮影時は、カメラ側の露出モードを「マニュアル(M)」または「絞り優先AE(A)」に設定してご使用ください。

Q2. 開放F1.25でのピン合わせは非常に難しいですか?コツはありますか?

中判センサーにおけるF1.25の被写界深度は数ミリ単位と極めて浅いため、ピン合わせにはある程度の慣れが必要です。しかし、以下の方法を活用することで正確にピンを合わせることができます。

  • カメラのEVF(電子ビューファインダー)の倍率を最大に設定し、拡大表示で微調整する。
  • フォーカスピーキング機能をONにし、合焦面の輪郭を強調表示させる。
  • 手持ち撮影の場合は、シャッターを切る瞬間に体が前後しないよう、脇を締めてしっかりとホールドするか、一脚や三脚を使用してカメラを固定する。

滑らかで精密な動きをするフォーカスリングを搭載しているため、慣れると非常にリズミカルにピント位置を合わせられるようになります。

Q3. 約1,030gという重量は、一日中持ち歩いて手持ち撮影するのに適していますか?

確かに1kgを超える重量は、単焦点レンズとしては重い部類に入ります。しかし、ハッセルブラッドのXシリーズ(X1D / X2Dなど)は、しっかりと深く握れる優れたグリップデザインを採用しているため、カメラとレンズを両手で正しくホールドすれば、数字から想像するよりも重心が手元に安定し、バランスよく構えることができます。一日中アクティブに歩き回るストリートスナップでは適度に肩掛けストラップなどを活用して負荷を分散させることをお勧めしますが、ポートレート撮影のセッションや、じっくり構える風景撮影などの用途であれば、手持ちでの運用は十分に可能であり、むしろその重みが手ブレを防ぐ安定感につながります。

Q4. アクロマチック設計(アクロマチックレンズ)とはどのような効果があるのですか?

アクロマチック(消色)レンズとは、異なる特性(光の分散特性)を持つ2枚の光学ガラスを精密に貼り合わせたレンズのことです。これにより、光の波長(赤と青)の焦点ズレを同一平面上でほぼ完全に一致させることができます。大口径レンズで発生しやすい色収差(被写体のエッジに見られる紫や緑のフリンジ)を極限まで低減させる効果があり、撮影データの輪郭が非常にクリアになり、高コントラストなシチュエーションでも滲みのないシャープな像を結ぶことが可能になります。

Q5. 純正レンズではないサードパーティ製ですが、画質に偏りや歪みはありませんか?

TTArtisanは近年、非常に高い光学設計・製造技術を確立しており、本レンズも例外ではありません。特にハッセルブラッドの中判センサー向けに最適化されたイメージサークルを確保しているため、画面の周辺部に至るまで過度な光量低下や像の流れ(歪み)が抑えられています。中望遠レンズ特有の直線が歪む現象(ディストーション)も極めて軽微に設計されており、直線を含む建築物や地平線の入るポートレートでも自然なパースペクティブが得られます。純正レンズのようなオートファンクションや完璧な均一性とは異なる、オールドレンズのような「豊かな個性」と「現代的な解像性能」を併せ持った、非常にバランスの良い光学クオリティを提供します。

TTArtisan HX 90mm F1.25 Xマウント (HX90mm f/1.25)
Xマウント(Fujifilm)

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