ソニー(SONY)が展開するフルサイズミラーレス一眼カメラの中でも、圧倒的な高感度性能と暗所撮影能力で映像クリエイターから絶大な支持を集めているのが「α7Sシリーズ」です。本記事では、初代「SONY α7S ILCE-7S(ボディーのみ)」、第2世代の「SONY α7S II ILCE-7SM2(ボディーのみ)」、そして最新鋭の「SONYα7SⅢ ILCE-7SM3(ボディーのみ)」の3機種を対象に、その進化の軌跡と改善点を徹底比較します。最高ISO409600を誇る高感度カメラとしてのポテンシャルから、4K120p動画撮影、像面位相差AF、5軸手ブレ補正といった最新技術まで、各モデルの特長を詳細に解説し、目的別の最適な選び方をご提案いたします。
ソニー「α7Sシリーズ」の系譜とミラーレス一眼としての基本コンセプト
初代「α7S(ILCE-7S)」が切り拓いたフルサイズ高感度カメラの市場
2014年に登場した初代「α7S(アルファ7S)」は、当時のデジタルカメラ市場に大きな衝撃を与えました。高画素化競争が主流であったフルサイズミラーレス一眼カメラの中で、あえて有効約1220万画素に抑えたExmor CMOSセンサーを搭載し、1画素あたりの受光面積を大幅に拡大するという独自のアプローチを採用しました。この画期的な設計により、常用ISO感度100-102400、拡張最高ISO感度409600という驚異的な数値を実現し、人間の肉眼では捉えきれない暗闇でも鮮明な描写を可能にしました。
この初代モデルの登場により、「高感度カメラ=ソニー」という確固たるブランドイメージが確立されました。特に、夜景撮影や星空撮影をメインとする写真家、さらには暗所での映像収録を必要とするプロフェッショナルな現場において、ILCE-7Sは唯一無二の存在として高く評価されました。ボディーのみの軽量かつコンパクトな設計でありながら、フルサイズセンサーの恩恵を最大限に引き出す本機は、その後のシリーズ展開における重要な礎となりました。
「α7S II(ILCE-7SM2)」における4K動画性能と手ブレ補正の進化
2015年に発売された第2世代「α7S II(a7S2)」は、初代が確立した圧倒的な高感度性能を継承しつつ、動画制作の現場で求められる実践的な機能を大幅に強化しました。最大の改善点は、カメラ本体のSDカードへの4K動画内部記録に対応したことです。初代モデルでは4K撮影に外部レコーダーが必須でしたが、ILCE-7SM2では単体での高精細な4K動画収録が可能となり、機動力の向上に大きく貢献しました。
さらに、光学式5軸手ブレ補正機構がボディ内に新たに搭載されたことも特筆すべき進化です。これにより、手持ち撮影時のブレが劇的に軽減され、暗所でのスローシャッター撮影や、ジンバルを使用しない動画撮影における安定性が飛躍的に向上しました。S-Log3への対応も加わり、カラーグレーディングを前提としたシネマティックな映像表現を追求する映像クリエイターにとって、欠かせない機材として確固たる地位を築きました。
映像クリエイター待望の「α7S III(ILCE-7SM3)」の誕生と位置づけ
前モデルから約5年の沈黙を破り、2020年に満を持して登場した「α7S III(a7S3)」は、シリーズの集大成とも言える最高峰のデジタルカメラです。映像クリエイターの厳しい要求に応えるべく、センサー、画像処理エンジン、オートフォーカス機構、そして記録メディアに至るまで、あらゆるコンポーネントが根本から刷新されました。特に、新開発の画像処理エンジン「BIONZ XR」の搭載により、従来比で最大約8倍の高速処理を実現し、4K120pというハイフレームレートでの動画記録を可能にしました。
ILCE-7SM3は、単なる高感度カメラの枠を超え、本格的なシネマカメラに匹敵する動画性能を備えたミラーレス一眼として位置づけられています。像面位相差AFの採用による劇的なフォーカス性能の向上や、CFexpress Type Aメモリーカードへの対応、さらには長時間の連続撮影を可能にする放熱構造の採用など、プロの現場における業務効率と信頼性を極限まで高めた設計が施されており、現代の動画制作において最も信頼されるツールの一つとなっています。
歴代3機種に共通する「1220万画素Exmor CMOSセンサー」の優位性
歴代のα7Sシリーズ(ILCE-7S、ILCE-7SM2、ILCE-7SM3)を通じて一貫して採用されているのが、有効約1220万画素のフルサイズセンサーです。最新のα7S IIIでは裏面照射型の新開発センサーへと進化を遂げていますが、「1220万画素」という画素数自体は初代から変わっていません。この画素数を維持する最大の理由は、1画素あたりの面積(ピクセルピッチ)を極限まで大きく確保し、光を効率的に取り込むためです。
高画素化が進む現代のデジカメ市場において、1220万画素は少なく感じるかもしれませんが、動画撮影(特に4K解像度である約800万画素)においては必要十分なスペックです。画素加算のない全画素読み出しによる4K動画記録が可能となり、モアレやジャギーの少ない圧倒的な解像感を実現します。さらに、広いダイナミックレンジと卓越したノイズ耐性を両立しており、ハイライトの白とびやシャドウの黒つぶれを抑えた、極めて豊かな階調表現が可能となっています。
暗所撮影・夜景描写における高感度性能の徹底比較
最高ISO409600がもたらす圧倒的な暗所撮影能力とノイズ耐性
α7Sシリーズの代名詞とも言えるのが、拡張最高ISO感度409600という驚異的なスペックです。この圧倒的な高感度性能により、肉眼では真っ暗にしか見えない環境下でも、被写体のディテールや色彩を鮮明に捉えることができます。初代α7Sの時点で既に画期的なノイズ耐性を誇っていましたが、世代を重ねるごとに画像処理アルゴリズムが進化し、高感度域におけるカラーノイズの抑制やディテールの保持力が大幅に改善されています。
特に最新のα7S IIIでは、裏面照射型CMOSセンサーと新エンジン「BIONZ XR」の相乗効果により、常用ISO感度域(ISO80-102400)における中高感度域の画質が飛躍的に向上しました。ISO12800や25600といった設定でもノイズが非常に少なく、実用的な画質を維持できるため、照明機材を持ち込めない夜間のドキュメンタリー撮影や、自然光のみを活かしたポートレート撮影において、クリエイターにこれまでにない自由度をもたらしています。
センサーと画像処理エンジンの刷新による夜景描写の改善点
夜景撮影においては、街灯などの強い光源と暗い夜空が混在するため、カメラのダイナミックレンジの広さが試されます。初代α7Sおよびα7S IIは、その広いダイナミックレンジによって美しい夜景描写を実現していましたが、α7S IIIでは新開発のセンサーと画像処理エンジンの搭載により、さらなる進化を遂げました。特に、ハイライト部の階調表現が滑らかになり、ネオンサインや街灯の光が白とびすることなく、自然な色合いで描写される点が大きな改善点です。
また、ホワイトバランスの精度も大幅に向上しています。最新のアルゴリズムにより、複雑な人工光源下でも被写体の本来の色を正確に再現できるようになりました。これにより、夜景を背景にした人物撮影などにおいて、肌のトーンを自然に保ちながら、背景のイルミネーションを美しく描写することが可能となり、ポストプロダクションでの色補正の手間を大幅に削減することに貢献しています。
星空撮影における歴代モデルの解像感と階調表現の違い
星空撮影は、微小な点光源を捉える必要があるため、高感度性能とノイズ処理能力が極めて重要になる分野です。初代α7Sは、その高感度特性を活かして多くの天体写真家に愛用されましたが、長秒時露光時の熱ノイズなどが課題となる場面もありました。α7S IIでは、ノイズリダクションの最適化により、よりクリアな星空の描写が可能となり、さらに非圧縮RAWフォーマットへの対応により、現像時の自由度が高まりました。
最新のα7S IIIでは、裏面照射型センサーの採用により、周辺部の光量落ちや色被りが大幅に改善されています。広角レンズを使用した星景写真においても、画面の隅々まで星の光をシャープに捉えることができます。また、15ストップ以上という驚異的なダイナミックレンジにより、天の川の微細なグラデーションから、前景の風景のディテールまで、一枚の画像の中に豊かな階調で表現することが可能となっています。
サイレント撮影機能の活用による夜間の静音撮影メリット
夜間の野生動物の撮影や、静粛性が求められる舞台撮影などにおいて、シャッター音を完全に消すことができる「サイレント撮影」機能は非常に有用です。初代α7Sからいち早く搭載されたこの機能は、ミラーレス一眼ならではの強みとして高く評価されてきました。しかし、初期の電子シャッターは、動く被写体を撮影した際に生じるローリングシャッター歪み(ゼリー現象)が課題とされていました。
この点において、α7S IIIは劇的な改善を遂げています。新開発のセンサーによる高速読み出しと、BIONZ XRの圧倒的な処理能力により、ローリングシャッター歪みを従来機(α7S II)の約3分の1にまで低減することに成功しました。これにより、動きのある被写体に対してもサイレント撮影を積極的に活用できるようになり、夜間の静音撮影における実用性が飛躍的に向上しています。
動画制作を支える4つの映像表現とフォーマットの進化
フルHDから4K動画、そしてα7S IIIの「4K120p」への躍進
α7Sシリーズの進化の歴史は、そのまま動画フォーマットの進化の歴史でもあります。初代α7Sは、画素加算のないフルHD動画記録において圧倒的な画質を誇り、外部レコーダーを使用することで4K出力にも対応しました。続くα7S IIでは、カメラ本体のみでの4K(QFHD:3840×2160)内部記録に対応し、4K動画制作のハードルを大きく下げることに成功しました。
そしてα7S IIIでは、動画性能がさらに別次元へと引き上げられました。最大の特徴は、4K解像度での120p(120fps)ハイフレームレート記録への対応です。これにより、4Kの高精細な画質のまま、最大5倍の滑らかなスローモーション映像を制作することが可能となりました。また、全記録モードで4:2:2 10bitの豊富な色情報を内部記録できるようになり、ポストプロダクションでの高度なカラーグレーディングに耐えうる、極めて高品質な映像素材を提供します。
プロのカラーグレーディングに必須となる「S-Log3」の比較
シネマティックな映像表現において、広いダイナミックレンジを確保するためのLog撮影は不可欠です。α7S IIから新たに搭載された「S-Log3」ガンマは、シャドウからミッドトーンにかけての階調特性に優れており、フィルムライクな映像制作を強力にサポートしました。しかし、8bit記録であったα7S IIでは、カラーグレーディング時にバンディング(階調の破綻)が発生しやすいという課題がありました。
α7S IIIでは、4:2:2 10bit記録に標準対応したことで、この課題が完全に克服されました。10bitの豊かな色深度により、S-Log3の持つ15ストップ以上の広大なダイナミックレンジを最大限に活かした、極めて滑らかなグラデーション表現が可能となりました。空の青の移り変わりや、夕暮れ時の微妙な光の変化など、繊細な色彩調整が求められるシーンにおいて、プロの映像クリエイターが求める厳格なクオリティを満たしています。
外部レコーダーを用いた「16bit RAW」出力対応の変遷
より高度な映像制作において、センサーが捉えた生のデータをそのまま記録するRAW動画の需要が高まっています。初代α7SではHDMI経由での4K映像出力が可能でしたが、RAW出力には対応していませんでした。その後、映像業界のニーズの高まりを受け、ソニーはミラーレス一眼における動画機能の拡張を続けてきました。
α7S IIIでは、フルサイズミラーレス一眼カメラとして初めて、HDMI端子を経由した外部レコーダーへの「16bit RAW」動画出力に対応しました。4K 60pまでの高解像度・高フレームレートでのRAW出力が可能となり、ポストプロダクションにおける露出補正やホワイトバランスの調整において、究極の柔軟性を提供します。この機能により、ILCE-7SM3はハイエンドなシネマカメラのサブ機として、あるいはメイン機としても十分に活躍できるポテンシャルを獲得しました。
映像作品に幅を持たせるスローモーション撮影機能の改善点
映像の表現力を高める上で、スローモーション撮影は非常に効果的な手法です。α7S IIでは、フルHD解像度での120fps記録に対応し、最大5倍のスローモーション映像を制作することができました。しかし、フルHDでは現代の4K制作ワークフローに組み込む際に解像度不足を感じる場面もありました。
前述の通り、α7S IIIでは4K解像度での120p記録に対応したことで、高精細な4Kスローモーション映像の制作が可能となりました。さらに、フルHD解像度においては、最大240fps(240p)の超ハイフレームレート記録にも対応しており、最大10倍の極めて滑らかなスーパースローモーション映像を撮影できます。オートフォーカスもスローモーション撮影時にフル稼働するため、動きの速い被写体でも確実にピントを合わせ続けることができ、映像作品の表現の幅を大きく広げています。
オートフォーカス(AF)と手ブレ補正機能における4つの改善点
コントラストAFから「像面位相差AF」への劇的な進化
歴代α7Sシリーズの中で、最も劇的な進化を遂げた機能の一つがオートフォーカス(AF)システムです。初代α7Sおよびα7S IIでは、精度の高い「コントラスト検出方式AF」が採用されていましたが、ピント合わせの速度や、動く被写体に対する追従性においては、他のαシリーズ(α7やα9など)に一歩譲る部分がありました。
最新のα7S IIIでは、シリーズとして初めて「ファストハイブリッドAF(像面位相差AF+コントラストAF)」を搭載しました。センサーの撮像領域の約92%をカバーする759点の像面位相差AFセンサーを配置し、高速かつ高精度なピント合わせを実現しています。これにより、被写界深度の浅いフルサイズセンサーと大口径Eマウントレンズを組み合わせたシビアなピント合わせが要求される場面でも、カメラ任せで確実なフォーカシングが可能となりました。
人物や動物の撮影精度を飛躍させる「瞳AF」の追従性
ソニーのミラーレス一眼カメラの代名詞とも言える「瞳AF」機能も、シリーズを追うごとに大きな進化を遂げています。α7S IIでは、スチル撮影時のみ瞳AFが利用可能でしたが、α7S IIIでは動画撮影時にも対応する「リアルタイム瞳AF」へと進化しました。AI(人工知能)を活用した最新のアルゴリズムにより、人物の瞳を瞬時に検出し、高精度に追従し続けます。
さらに、人物だけでなく動物の瞳にも対応しており、動きの予測が難しいペットや野生動物の撮影においても絶大な威力を発揮します。動画撮影中であっても、被写体が振り向いた瞬間や、障害物に一瞬遮られた後でも、即座に瞳を捉え直す高いトラッキング性能を備えています。これにより、映像クリエイターはピント合わせのストレスから解放され、構図や被写体とのコミュニケーションなど、よりクリエイティブな作業に集中できるようになりました。
α7S II以降に搭載された「5軸手ブレ補正」の補正効果
暗所撮影を主眼とするα7Sシリーズにおいて、手ブレ補正機構は極めて重要な役割を果たします。初代α7Sはボディ内手ブレ補正を持たず、レンズ側の補正(OSS)に依存していました。しかし、α7S IIにおいて、フルサイズセンサー対応の「光学式5軸手ブレ補正」がボディ内に搭載され、角度ブレ(ピッチ/ヨー)、シフトブレ(X/Y)、回転ブレ(ロール)の5つの軸で手ブレを強力に補正するようになりました。
α7S IIIでは、この5軸手ブレ補正機構がさらにブラッシュアップされ、最高5.5段分の補正効果を実現しています。高精度なジャイロセンサーと最適化されたアルゴリズムにより、手持ちでのスローシャッター撮影時における歩留まりが大幅に向上しました。オールドレンズを含む手ブレ補正非搭載のEマウントレンズを使用した場合でも、ボディ側の補正効果を得られることは、システム全体としての大きなメリットです。
動画撮影時におけるアクティブモードの有無と手持ち撮影の安定性
動画制作における手ブレ補正の進化として、α7S IIIから新たに搭載された「アクティブモード」は非常に画期的な機能です。従来の光学式手ブレ補正に加え、画像処理エンジンBIONZ XRの高速処理能力を活かした電子式補正を組み合わせることで、歩きながらの手持ち撮影など、より大きなブレが発生する状況下でも強力な補正効果を発揮します。
アクティブモードを有効にすると画角はわずかにクロップされますが、ジンバルなどの大掛かりなスタビライザー機材を使用しなくても、驚くほど滑らかで安定した映像を撮影することが可能です。機動力が求められるドキュメンタリー撮影やVlog制作において、ボディ単体で高品質な手持ち撮影が行える点は、映像クリエイターにとって計り知れない業務効率化と表現の自由度をもたらしています。
プロフェッショナル仕様の操作性とハードウェアの進化
新画像処理エンジン「BIONZ XR」がもたらす処理速度の向上
デジタルカメラの頭脳とも言える画像処理エンジンは、カメラ全体のレスポンスや画質を左右する重要なコンポーネントです。α7S IIIに搭載された新開発の画像処理エンジン「BIONZ XR」は、従来の「BIONZ X」と比較して最大約8倍という圧倒的な処理能力を誇ります。この処理速度の飛躍的な向上こそが、4K120p動画記録や、高度なリアルタイムAF処理を可能にした原動力です。
また、BIONZ XRの恩恵は画質面だけにとどまらず、カメラの基本操作におけるレスポンスの向上にも大きく貢献しています。電源を入れてから撮影可能になるまでの起動時間の短縮、メニュー画面のシームレスな操作感、連続撮影後のデータ書き込み中の操作性など、プロの現場で求められる「待たせない」レスポンスを実現しており、ストレスのない快適な撮影ワークフローを提供します。
高速データ転送を実現する「CFexpress Type A」への対応
高画素・高フレームレートの動画記録においては、膨大なデータを瞬時に記録メディアへ書き込む必要があります。α7S IIIでは、次世代の記録メディアである「CFexpress Type A」メモリーカードに新たに対応しました。CFexpress Type Aは、従来のSDXCカード(UHS-II)を遥かに凌ぐ高速な書き込み・読み出し速度を誇り、4K120pやAll-Intraフォーマットでの高ビットレート動画記録を安定して行うための必須アイテムとなります。
特筆すべきは、デュアルスロットの設計です。α7S IIIの2つのメディアスロットは、CFexpress Type AとSDXC/SDHC(UHS-II対応)の両方に対応する「デュアル対応スロット」を採用しています。これにより、最高性能を求める場合はCFexpress Type Aを使用し、コストを抑えたい場合や既存の資産を活かしたい場合はSDカードを使用するといった、用途に応じた柔軟なメディア運用が可能となっています。
メニュー構成の刷新とタッチパネル操作における業務効率化
プロフェッショナルな撮影現場では、必要な設定に素早くアクセスできる直感的なUI(ユーザーインターフェース)が求められます。ソニーはα7S IIIの開発にあたり、従来のメニュー構成を根本から見直し、より階層が分かりやすく、目的の項目を探しやすい新メニューシステムを採用しました。カラーコード化されたタブや、動画とスチルで独立した設定を保持できる機能など、操作性が大幅に改善されています。
さらに、液晶モニターのタッチパネル機能も大きく進化しました。従来はタッチフォーカスなどの限定的な操作のみでしたが、α7S IIIではメニュー画面の操作を含め、スマートフォンのような直感的なタッチ操作に全面対応しました。バリアングル液晶モニターと組み合わせることで、ハイアングルやローアングルでの動画撮影時にも、画面をタッチするだけで素早く設定を変更でき、業務効率化に大きく貢献しています。
長時間の動画撮影を可能にする排熱構造とバッテリー性能の改善
高精細な4K動画を長時間記録する際、カメラ内部で発生する熱の処理は大きな技術的課題となります。α7S IIIでは、スマートフォンや他の小型デバイスで培われた独自の放熱技術を応用し、ファンを持たないパッシブ冷却でありながら、極めて効率的な排熱構造(シグマ形状のグラファイトヒートシンクなど)をボディ内部に組み込みました。これにより、4K60p動画をバッテリーが切れるまで連続撮影できる高い信頼性を確保しています。
また、バッテリーには大容量の「NP-FZ100」が採用されました。初代やα7S IIで使用されていたNP-FW50と比較して約2.2倍の容量を持ち、長時間の動画撮影やタイムラプス撮影におけるバッテリー交換の頻度を大幅に減らすことができます。USB Type-C端子経由でのUSB PD(Power Delivery)による高速充電と給電にも対応しており、長丁場の現場でも安心して撮影に臨むことが可能です。
目的別に見る歴代α7Sシリーズ(ボディーのみ)の4つの選び方
コストパフォーマンス重視でスチルメインなら初代「α7S」
中古市場において手頃な価格で入手可能となった初代「α7S(ILCE-7S)」は、スチル(静止画)撮影をメインとし、コストパフォーマンスを重視するユーザーにとって依然として魅力的な選択肢です。オールドレンズの母艦として使用する場合や、三脚を据えての星景写真、夜景撮影など、ボディ内手ブレ補正や高度なAFを必要としない撮影スタイルであれば、1220万画素センサーがもたらす圧倒的な高感度・低ノイズ性能を存分に味わうことができます。
重量わずか約489g(バッテリー・メモリーカード含む)というシリーズ最軽量のコンパクトなボディは、サブ機として常に鞄に忍ばせておくのにも最適です。「暗闇を切り取る」という高感度カメラの原点となる体験を、最も手軽に味わえる一台と言えます。
4K動画と手ブレ補正をバランス良く求めるなら「α7S II」
予算を抑えつつ、本格的な4K動画制作や手持ち撮影を行いたい映像クリエイターには、第2世代の「α7S II(ILCE-7SM2)」が適しています。ボディ内での4K内部記録と5軸手ブレ補正機能を備えているため、現代の映像制作の基本要件をしっかりと満たしています。S-Log3によるカラーグレーディングを前提としたシネマティックな映像表現の入り口としても最適なモデルです。
最新機種と比較するとAF性能やメニュー操作の面で譲る部分はありますが、マニュアルフォーカスでの動画撮影を中心とするユーザーや、ジンバル運用を前提とするユーザーであれば、そのポテンシャルを十分に引き出すことができます。フルサイズ高感度カメラの実用的な機能をバランス良く備えた名機です。
最新の映像クリエイター向け最高峰モデルなら「α7S III」
プロフェッショナルな動画制作現場の第一線で活躍する映像クリエイターや、妥協のない最高品質の映像作品を目指すユーザーには、迷わず最新の「α7S III(ILCE-7SM3)」を推奨します。4K120p対応、4:2:2 10bit内部記録、強力な像面位相差AFとリアルタイム瞳AF、アクティブモード手ブレ補正など、現代のシネマカメラに求められるあらゆるスペックを網羅しています。
価格は歴代モデルの中で最も高価になりますが、BIONZ XRによる圧倒的なレスポンスと、新メニューやタッチパネルによる快適な操作性は、撮影現場でのストレスを排除し、クリエイティビティを最大限に引き出します。長期間にわたって第一線で使い続けられる、投資価値の非常に高いフラッグシップモデルです。
Eマウントレンズ資産を活かしたシステム構築と今後の展望
ソニーのEマウントシステムは、フルサイズ対応の純正レンズ(G Master、Gレンズなど)から、サードパーティ製のシネマレンズまで、業界トップクラスの豊富なラインナップを誇ります。歴代どのα7Sシリーズを選んだとしても、この広大なEマウントレンズ資産をそのまま活かせる点は、ソニー製ミラーレス一眼を選ぶ最大のメリットの一つです。
超広角レンズと組み合わせたダイナミックな星空撮影から、大口径単焦点レンズを用いた被写界深度の浅いシネマティックなポートレート動画まで、レンズの選択によって表現の幅は無限に広がります。ご自身の制作スタイルや予算に合わせて最適なボディ(ボディーのみ)を選択し、目的に合ったEマウントレンズを組み合わせることで、暗所撮影と動画制作に特化した最強の撮影システムを構築することができるでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q1: α7Sシリーズの「S」にはどのような意味がありますか?
A1: α7Sシリーズの「S」は、「Sensitivity(感度)」を意味しています。その名の通り、超高感度性能と広いダイナミックレンジに特化したコンセプトモデルであり、暗所での撮影や高品質な動画制作において圧倒的な強みを発揮するシリーズとして設計されています。
Q2: 1220万画素という画素数は、静止画のプリントや拡大には不十分ですか?
A2: 1220万画素は、A4〜A3サイズ程度の一般的なプリントであれば十分な解像度を持っています。また、WEBメディアやSNSでの使用、4Kモニターでの鑑賞においては全く問題ありません。ただし、撮影後に大きくトリミング(クロップ)を行う用途や、ポスターサイズの巨大なプリントを前提とする場合は、高画素機(α7Rシリーズなど)の方が適しています。
Q3: α7S IIIでCFexpress Type Aカードは必須ですか?SDカードでは撮影できませんか?
A3: 必須ではありません。α7S IIIはV90などの高速なSDXCカード(UHS-II)を使用すれば、4K 60pまでのほとんどの動画フォーマットを記録可能です。ただし、4K 120pの最高画質(All-Intraなど、一部の高ビットレート記録モード)で撮影する場合にのみ、より書き込み速度の速いCFexpress Type Aカードが必要になります。
Q4: α7S IIとα7S IIIのオートフォーカス性能にはどれくらいの違いがありますか?
A4: 非常に大きな違いがあります。α7S IIはコントラストAFのみを搭載しており、特に動画撮影時や動く被写体への追従性に限界がありました。一方、α7S IIIは像面位相差AFを搭載し、最新のリアルタイム瞳AF(人物・動物対応)も備えているため、劇的に高速かつ高精度にピントを合わせ続けることが可能です。
Q5: 動画撮影を全くしないスチル(静止画)専門のカメラマンでも、α7Sシリーズを買うメリットはありますか?
A5: はい、大きなメリットがあります。特に星空撮影、夜景撮影、暗いライブハウスや屋内でのイベント撮影など、高感度とノイズ耐性が要求される環境でのスチル撮影において、α7Sシリーズのセンサーは他のカメラにはないクリアな描写力を発揮します。また、サイレント撮影時のローリングシャッター歪みが少ないα7S IIIは、静音性が求められる現場でのスチル機としても非常に優秀です。
