動画撮影の現場において、ピント合わせの精度は作品のクオリティを左右する決定的な要素です。特に近年では、美しいボケ味やシネマティックな描写を求めて、シネマカメラやミラーレス一眼に高品質なマニュアルフォーカス(MF)レンズを装着するスタイルが主流となっています。しかし、動きのある被写体をソロオペレーター(ワンマン撮影)で追いかけながら、手動で完璧にピントを合わせ続けることは極めて困難です。この課題をクリアし、動画クリエイターの表現力を劇的に向上させるのが、DJI(ディージェーアイ)のプロ向け機材「DJI RS 3 Pro」と革新的な「LiDARレンジファインダー」の組み合わせです。本記事では、ジンバル・スタビライザーとしての最高峰スペックを誇る「DJI RS 3 Pro Combo(コンボ)」が、どのようにマニュアルレンズを最新のオートフォーカス(AF)へと進化させるのか、その仕組みから実践的な活用法まで徹底解説します。
DJI RS 3 ProとLiDARフォーカスシステムの概要
シネマカメラやミラーレス一眼に対応するプロ向けジンバルとしての特徴
DJI RS 3 Proは、映像制作の最前線で求められる高い安定性と柔軟性を兼ね備えた、ディージェーアイの最高峰スタビライザー(ジンバル)です。頑丈かつ軽量なカーボンファイバー製の軸アームを採用しており、大型のシネマカメラや重量のあるプロ用ミラーレス一眼を搭載した状態でも、圧倒的に滑らかなカメラワークを実現します。第3世代のRonin(ローニン)スタビライズアルゴリズムが手ブレ補正効果を最大化し、手持ち撮影から移動撮影にいたるまで、ブレのないプロフェッショナルな映像表現を可能にします。
さらに、本機は単なるカメラの揺れを抑える器具ではなく、カメラコントロール、フォーカス制御、長距離の映像伝送などを一元的に管理できる「総合エコシステム」の中核として設計されています。豊富な拡張ポートを備え、シネマレンズや重量級レンズを装着したシステムでも、高度なバランス調整と精密な制御を可能にするため、ハイエンドな動画撮影現場におけるファーストチョイスとなっています。
LiDARレンジファインダーが実現する革新的な被写体距離測定技術
DJI RS 3 Proを唯一無二のプロ向け機材へと昇華させているのが、革新的な「LiDARレンジファインダー」による被写体距離測定技術です。従来のカメラボディに依存するコントラスト検出や位相差検出といったオートフォーカス方式とは異なり、LiDARシステムは自ら目に見えない赤外線ビーム(レーザー)を照射し、それが被写体に反射して戻ってくるまでの時間を測定することで、正確な距離をミリ秒単位で算出します。
このシステムは、照射距離最大14メートル、43,200点の測距点を誇り、被写体の輪郭や奥行きをきわめて正確に把握することができます。従来のカメラAFが苦手としていた「被写体の質感が均一な場所」や「輪郭が曖昧なシーン」であっても、LiDAR波によって物理的な距離を直接計測するため、迷いのない極めてシャープなフォーカシングをリアルタイムで提供します。
マニュアルレンズ(MF)を最新のオートフォーカス(AF)に進化させる仕組み
本来、オートフォーカス機能を持たないヴィンテージレンズやシネマ用マニュアルレンズ(MF)を、最新の高性能AFレンズへと進化させる仕組みは、LiDARシステムとフォーカスモーターの精密な連携によって実現されています。LiDARレンジファインダーがリアルタイムで測定した被写体までの正確な距離データは、DJI RS 3 Proの内蔵プロセッサーを介して、レンズに装着されたDJI フォーカスモーターへ瞬時に伝達されます。
フォーカスモーターは受け取った距離データに基づき、レンズのフォーカスリングを物理的に回転させます。事前のキャリブレーション(レンズ登録)によって、「どの回転位置がどの焦点距離(ピント位置)に対応するか」をシステムが完全に把握しているため、MFレンズでありながら、まるで最新の電子制御AFレンズを使っているかのような俊敏で正確なピント合わせが実現するのです。
プロの現場で重宝するDJI RS 3 Pro Combo(コンボ)の構成内容と導入価値
本格的な現場への導入を検討する際、最も推奨されるのがオールインワンパッケージである「DJI RS 3 Pro Combo(コンボ)」です。このコンボモデルには、ジンバル本体に加え、マニュアルレンズをAF化するために不可欠な「LiDARレンジファインダー」、「DJI フォーカスモーター(2022)」、持ち運びに便利な「キャリングケース」、さらに低いアングルでの撮影を劇的にサポートする「ブリーフケースハンドル」など、プロ仕様の動画撮影に即座に対応できる主要機材が同梱されています。
個別でアクセサリーを買い足す必要がなく、互換性の心配も一切ないため、セットアップの手間を大幅に削減できます。DJI RS 3 Pro Comboは、単なるジンバルの枠を超え、マニュアルフォーカスレンズの描写力を最大限に活かしたハイクオリティなシネマ表現を最短で実現するための、極めて導入価値の高いパッケージと言えます。
LiDARフォーカスシステムを映像制作に導入する4つのメリット
暗所や低コントラストな環境でも極めて正確なフォーカシングが可能
LiDARフォーカスを導入する最大のメリットの一つは、暗闇や極端にコントラストが低い環境下でも、フォーカス性能が一切低下しない点にあります。一般的なミラーレス一眼などのイメージセンサーによるAFは、十分な光量がない夜間や、のっぺりとした平坦な壁、煙が立ち込めるスタジオ撮影などでは被写体を認識できず、「フォーカスの迷い(ハンティング)」が発生しがちです。
これに対し、LiDARは独自の赤外線光を照射して距離を直接測るため、人間の目にはほぼ真っ暗に見える環境や、低コントラストなシーンであっても、全く影響を受けることなく瞬時にピントを合わせることができます。これにより、ナイトロケやクラブシーン、明暗差の激しいライブステージなどの厳しい照明環境でも、失敗の許されない確実なフォーカシングを約束します。
素早く動く被写体に対してもピントを逃さない高速・高精度な追尾性能
動きの予測がつかない人物や、素早く移動する乗り物などの被写体に対しても、LiDARシステムは圧倒的な高速・高精度な追尾性能を発揮します。内蔵されたAIカメラと測距エンジンにより、ターゲットが突然前後に動いたり、激しくアクションしたりする場合でも、遅延を最小限に抑えて追従し続けます。
この追従性能は、フレーム内に入り込んだ別の物体に一瞬ピントを奪われるといったトラブルを防ぐためにも有効です。被写体を3次元的な深度情報として捉えているため、被写体の手前を障害物が横切った場合でも、追尾ターゲットを見失うことなく、ピンボケのない安定した動画撮影をキープします。
描写力に優れたクラシックなマニュアルレンズを現代の撮影でフル活用できる点
往年の名作レンズやヴィンテージのMFレンズ、独特のアナモルフィックレンズは、現代の最新レンズにはない特有の歪みやボケ味、温かみのあるトーンを持っています。しかし、これまではフォーカス操作の難易度の高さから、テンポの早い現代の撮影現場、特にワンマンでのジンバル撮影でこれらのレンズを投入することは現実的ではありませんでした。
LiDARフォーカスシステムを採用することで、これらのクラシックなマニュアルレンズに完璧な「オートフォーカス機能」を後付けできるようになります。表現力に妥協することなく、個性的で芸術的な映像描写と、現代の効率的なワークフローを完全に両立させることができるのは、プロのクリエイターにとって計り知れない強みです。
ソロオペレーター(個人撮影)におけるピント合わせのオペレーション負荷を軽減
個人で撮影をこなすソロオペレーターにとって、スタビライザーのバランスを取り、カメラワークを意識しながら、同時に手動でフォーカスホイールを回してピントを合わせる作業は、肉体的にも精神的にも限界に近い負荷がかかります。LiDARによるAF化は、まさに「目に見えない優秀なフォーカスアシスタント」が現場に常駐しているかのような安心感をもたらします。
オペレーターは機材の動きや絵コンテ通りのフレーミング、構図の微調整だけに100%集中できるため、映像の芸術的な完成度が向上します。オペレーションの難しさから諦めていたワンカットの長回しや、被写体へと近づいていくダイナミックなカメラワークにも、失敗を恐れることなく自信を持って挑戦できるようになります。
マニュアルレンズをAF化するための詳細なセットアップ手順
ジンバル本体(DJI RS 3 Pro)へのLiDARレンジファインダーの適切な装着
マニュアルレンズをAF化するための第一歩は、LiDARレンジファインダーをカメラシステムへ適切に固定することです。通常は、カメラ上部のコールドシューマウントや、カメラケージに設けられた1/4インチネジ穴を利用してしっかりと装着します。固定が甘いと測距軸がズレてフォーカスエラーの原因となるため、確実なロックが必要です。
次に、付属の専用ケーブルを使用して、LiDARレンジファインダーとDJI RS 3 Proのフォーカスモーターポート(または所定の制御端子)を接続します。接続後、センサーの照射面がカメラレンズの光軸と完全に平行になっていることを目視で確認してください。ここが傾いていると、正確な被写体距離を捉えられなくなります。
フォーカスモーターの設置とマニュアルレンズのフォーカスギアリング調整
フォーカスモーターの設置には、ジンバルのクイックリリースプレート等に取り付けた15mmロッドを使用します。モーターをロッドに通し、レンズのフォーカスリング位置に合わせます。このとき、マニュアルレンズ側にフォーカス用のギアがない場合は、付属の「フォーカスギアリング」をレンズのフォーカスリングに巻き付け、しっかりと締め付けて固定します。
モーターのギアと、レンズのフォーカスギアリングをしっかりと噛み合わせます。強すぎる押し付けはモーターの負荷となり動作遅延や故障の原因になり、逆に緩すぎるとギアが空回りしてピントが狂います。程よいテンションで噛み合っていることを確認したら、ロッドクランプのネジを締めてモーターをガッチリと固定します。
専用システムによる正確なレンズキャリブレーション(キャリブレーションデータ登録)
ハードウェアの設置が終わったら、次はシステムのブレインにレンズの特性を教え込む「キャリブレーション」を行います。DJI RS 3 Proのタッチ画面を操作し、レンズ設定メニューから「新規レンズキャリブレーション」を選択します。まずは、フォーカスモーターにレンズの物理的な回転端(最短撮影距離と無限遠)を学習させるために、自動または手動でモーターを端から端まで回転させます。
続いて、LiDARによる距離測定と実際のピント位置を同期させるため、指定の距離(通常は1メートルや4メートルなど)にキャリブレーションボードや分かりやすいターゲットを配置し、手動で完璧にピントを合わせる作業を画面の指示に従って実行します。これにより、システムが「現在のモーター回転位置=実測距離」という正確なデータマップを作成します。
タッチ画面およびRoninアプリを用いた動作確認とキャリブレーションの保存
キャリブレーションデータが登録されたら、実際にジンバル本体のタッチ画面やスマートフォンの「Roninアプリ」を使用して、動作確認を行います。画面上でフォーカスモードを「AF」に切り替え、被写体に向けてカメラを動かした際、フォーカスモーターがスムーズかつ静かに追従してピントが合うかどうかをテストします。
正常な動作が確認できたら、作成したレンズプロファイルに名前を付けて保存します。DJI RS 3 Proの内部メモリには複数のレンズキャリブレーションデータを保存しておくことができるため、現場でレンズ交換を行う際も、保存したプロファイルを画面上で選択するだけで、面倒な調整ステップをスキップして即座に撮影を再開できます。
現場での表現力を飛躍させるLiDARフォーカスの応用撮影テクニック
被写体を自動でフレーム内に捉え続ける「ActiveTrack Pro」との高度な連携
DJI RS 3 Proのトラッキング機能「ActiveTrack Pro」とLiDARフォーカスシステムの連携は、これまでにない自律的なカメラワークを実現します。LiDARレンジファインダーが捉えた詳細な深度情報と、ジンバルが持つ強力な演算処理能力を組み合わせることで、被写体の顔や身体の輪郭を高精度に追跡し続けます。
被写体がフレーム内を縦横無尽に動き回っても、ジンバルが自動的に首を振ってターゲットを中心に捉え(フレーミング)、同時にフォーカスモーターがピントを極限まで正確に合わせ続けます。これにより、複雑なアクションシーンや、ダンサーの動きを追いかけるワンカット動画撮影などにおいて、オペレーターは足元の安全やカメラの移動速度のみに意識を集中させることができます。
任意のタイミングでスムーズにピントを移行させる「ラックフォーカス」のタッチ操作
ストーリーテリングにおいて、手前の被写体から奥の被写体へとピントを滑らかに移行させる「ラックフォーカス」は非常に効果的な演出です。LiDARフォーカスシステムを使用すれば、プロのフォーカスプラー(ピントを合わせる専門スタッフ)がいない現場でも、DJI RS 3 Proのタッチ画面をタップするだけでこの高度なピント移行を完璧に実行できます。
画面に映し出された映像の中から、ピントを合わせたい対象(手前の人物から背景のオブジェクトなど)をタップするだけで、システムは事前に設定された最適な「トランジション速度」でフォーカスを極めてスムーズに移動させます。急激なピントの移動による不自然さを排除し、まるで一流の撮影監督が操作しているかのような有機的で美しいピント送りが可能です。
複数の人物が交差する複雑なシーンでのインテリジェントなフォーカス対象切り替え
インタビュー撮影や劇映画のワンシーンなど、複数の人物がフレーム内を行き来する複雑なシチュエーションでは、従来のオートフォーカスは誰にピントを合わせて良いか迷い、ふらふらとフォーカスが移り変わってしまう問題があります。しかし、LiDARシステムは複数の対象物の距離情報を個別に把握しているため、インテリジェントな対応が可能です。
ジンバルの液晶モニター上でターゲットを固定するロック設定を行うことで、たとえ別の人や物がその手前を横切ったり、被写体同士が交差したりしても、狙った特定の人物だけにフォーカスを維持し続けることができます。ピントの主導権をカメラに完全に握らせるのではなく、クリエイターが意図した通りのフォーカスワークを実現します。
映像トランスミッター(DJI Transmission)を併用した遠隔でのフォーカス制御
「DJI RS 3 Pro Combo」の真価は、高度な無線映像伝送システム「映像トランスミッター(DJI Transmission)」と組み合わせることでさらに加速します。このシステムを導入することで、カメラから離れた場所にいるフォーカスプラーに高画質かつ超低遅延の映像を送ることができます。
受信機となる高輝度遠隔モニターには、LiDARが捉えている「距離情報が視覚化された波形(LiDARウェーブフォーム)」を表示させることが可能です。これにより、フォーカスプラーは暗所や広角レンズといった目視でピント位置が掴みにくい状況でも、直感的に正確なフォーカスプル(手動またはオートアシスト)を遠隔で行うことができ、プロフェッショナルなチーム運用が可能になります。
プロのハードな現場を支えるDJI RS 3 Proの優れた基本スペック
積載量(ペイロード)4.5kgがもたらす大型シネマカメラへの高い対応力
DJI RS 3 Proは、コンパクトなサイズ感でありながら、驚異の「最大積載量(ペイロード)4.5kg」を誇るプロ向け機材です。このパワフルな仕様により、軽量なミラーレス一眼はもちろんのこと、RED Komodo、Canon C70、Sony FX6といった本格的なシネマカメラに、重厚なズームレンズやシネマ用プライムレンズを装着したシステムであっても余裕を持って搭載できます。
| ジンバルモデル | 最大積載量 (ペイロード) | 主なアーム素材 | 対応カメラの目安 |
|---|---|---|---|
| DJI RS 3 Pro | 4.5 kg | カーボンファイバー | シネマカメラ(FX6, RED Komodo)、重量級ミラーレス一眼 |
| DJI RS 3 | 3.0 kg | アルミニウム合金 | 一般的なミラーレス一眼、標準ズームレンズ |
アーム部分には軽量かつ剛性の高い積層カーボンファイバーを採用しており、高いペイロードを維持しながらもジンバル自体の自重を抑え、オペレーターへの負担を軽減しています。また、軸アームを延長した設計になっているため、大型カメラマウントや複数のアクセサリーを装着した状態でもバランス調整が容易に行え、機材セッティングの自由度が大幅に向上しています。
長時間の過酷なロケでも安心な「12時間駆動バッテリー」と「PD急速充電」
電源インフラの確保が難しい屋外ロケや、朝から晩まで拘束される長時間の動画撮影において、機材のバッテリーライフは死活問題です。DJI RS 3 Proは、新開発のバッテリーグリップ(BG30)を搭載しており、最大「12時間駆動」という圧倒的なスタミナを誇ります。これにより、バッテリー残量を気にすることなく、現場でのクリエイティブな作業に没頭することができます。
さらに、現代の撮影ワークフローに不可欠な「PD急速充電(Power Delivery)」に対応しています。最大24Wの急速充電器を使用すれば、わずか1.5時間でゼロの状態からフル充電まで回復させることが可能です。万が一のバッテリー切れの際も、撮影の合間の短い休憩時間で実用レベルまで素早く充電を完了できるため、予期せぬタイムロスを防ぐことができます。
三脚やジブ、クレーンなど多彩なカメラプラットフォームとの柔軟な連携機能
DJI RS 3 Proは、手持ちでのジンバル撮影だけでなく、多様な特機との連携を可能にする柔軟な設計思想に基づき開発されています。本体底部やポート類は、標準的な「三脚・クレーン」マウント、カージブ、ケーブルカム、ステディカムなど、ハリウッドをはじめとするプロフェッショナルな現場で使用される様々なカメラプラットフォームへシームレスに統合できます。
さらに、DJI RS SDK(ソフトウェア開発キット)に対応しているため、クレーンやジブ、車両のルーフに取り付けた状態であっても、リモートでジンバルの挙動やフォーカス、撮影開始・停止を精密にコントロールできます。これにより、1台のRS 3 Proを中心に、小規模なソロ撮影から、複数台の特機を駆使する大規模なシネマ制作まで、柔軟にシステムをスケールアップさせることが可能です。
強力な手ブレ補正と高度なカメラ制御を実現する第3世代Roninスタビライズアルゴリズム
スタビライザーの本質である「ブレ補正」において、DJI RS 3 Proはさらなる進化を遂げました。搭載されている「第3世代Roninスタビライズアルゴリズム」は、前世代機(RS 2)と比較して手ブレ補正のブレ耐性が約20%向上しており、走りながらのローアングル撮影や、動く車両からのトラッキング撮影など、激しい揺れが加わる環境下でも完全に水平を維持した滑らかな映像を維持します。
さらに、ブレ補正を極限まで高める「SuperSmooth(スーパースムース)」モードを搭載しています。このモードを有効にすると、ジンバルのモータートルクが一時的に強化され、焦点距離が長めのレンズを使用している際や、風の強い屋外撮影であっても、微細な振動を完全に打ち消し、ブレのないシネマクオリティの映像を創り出します。
LiDARシステムを快適に運用するための注意点と4つの対策
使用するマニュアルレンズの焦点距離と検知可能距離における制限への対策
LiDARレンジファインダーは極めて優れた技術ですが、その特性上、使用するマニュアルレンズの焦点距離と検知可能距離には一定の制限があります。特に、超広角レンズを使用する場合は、画角が広すぎてLiDARの測距範囲外の背景情報を拾ってしまい、意図しない場所にピントが合うことがあります。逆に望遠レンズでは、被写体が14メートルより遠くに離れてしまうと、赤外線が届かずにフォーカスが外れてしまうリスクがあります。
この制限に対する有効な対策は、LiDARフォーカスに最適な焦点距離である「30mmから85mm」のレンズを中心にシステムを構築することです。また、14メートルを超えるような超望遠域や広大なロケ地での撮影では、遠距離の被写体に対して一時的にマニュアルフォーカス(MF)モードへ切り替えるか、被写体との距離をあらかじめ10メートル以内に保つような動線設計(絵コンテの工夫)を行うことが確実です。
屋外の非常に強い直射日光下など赤外線に影響を及ぼす環境での測距対策
LiDARシステムは不可視の赤外線レーザーを用いて測距を行うため、環境光、特に太陽光に含まれる強い赤外線の影響を受ける性質があります。カンカン照りの真夏の屋外や、反射光の強い砂浜・雪山などでは、太陽光の赤外線がノイズとなり、LiDARレンジファインダーの有効測定距離が本来の14メートルから大幅に縮小(例えば6〜8メートル程度に低下)することがあります。
この問題への対策としては、強い直射日光下での撮影時は被写体との距離をあらかじめ「5メートル以内」の至近距離に保ち、ノイズの影響を受けにくい環境を作ることが基本です。また、可能であれば日よけ用のディフューザーを使用してレンズおよびLiDAR周囲に影を作ること、あるいは日陰を利用したアングル選定を行うことで、赤外線干渉を最小限に抑えて安定した測距精度をキープできます。
機材全体の重量増加に伴うジンバルの適切なバランス調整と持ち方の工夫
「DJI RS 3 Pro Combo」にLiDARレンジファインダーやフォーカスモーター、マウントロッド、各種ケーブルをフル装備すると、カメラシステム全体の総重量がかなり増加します。この状態で不適切なバランス調整のまま撮影を行うと、ジンバルモーターに過度な負荷がかかって熱を持ち、強制停止するトラブルが発生するだけでなく、カメラマンの腕や腰にも大きな負担がかかります。
対策としては、電源を入れる前の「静的バランス調整」を極限まで精密に行い、ジンバルがオフの状態でもカメラがどの角度でもピタッと止まるように調整することです。また、長時間の持ち運びには「ブリーフケースハンドル」を活用して両手で重量を分散させる持ち方を心がけたり、市販のイージーリグや両手持ち用のリンググリップを併用して身体全体の荷重バランスを最適化させることが推奨されます。
現場でのトラブルを防ぐための予備バッテリー確保とファームウェアの定期アップデート
LiDARレンジファインダーと強力なフォーカスモーターは、DJI RS 3 Pro本体のバッテリーグリップから電力を給電されます。このため、フル装備で常にアクティブなフォーカス駆動を行っていると、仕様上の「12時間駆動」から実駆動時間が若干短くなる傾向があります。現場での突然の電力不足は、撮影全体の進行を止めてしまう重大なリスクとなります。
このリスクを防ぐため、1日を超える長時間の撮影現場では、必ず予備の「BG30バッテリーグリップ」を最低1本は確保しておくことが賢明です。また、DJI(ディージェーアイ)は定期的にジンバルやLiDARシステムの制御精度を向上させるファームウェアアップデートを配布しています。バグの解消やオートフォーカス精度、省電力性能が向上するため、撮影に出発する前に専用のPCソフトやアプリ経由で最新の状態にアップデートしておく習慣をつけましょう。
DJI RS 3 Proに関するよくある質問(FAQ)
Q1: LiDARレンジファインダーはどのようなマニュアルレンズでも使えますか?
基本的にはフォーカスリングの回転角がスムーズで、物理的なストッパー(または指標)があるほとんどのマニュアルレンズに対応しています。ただし、一部の非常にフォーカスリングが重いレンズや、鏡胴が極端に伸縮するズームレンズでは、フォーカスモーターに負荷がかかり正しくキャリブレーションできない場合があります。事前に回転角とモーターのトルクが合っているか確認することをおすすめします。
Q2: DJI RS 3 Pro Combo(コンボ)と通常版のどちらを買うべきですか?
マニュアルレンズのオートフォーカス化(AF化)を目的としている場合は、絶対に「Combo」をおすすめします。Comboには、通常版には含まれていない「LiDARレンジファインダー」や「DJI フォーカスモーター (2022)」、ブリーフケースハンドルなどが最初からすべて同梱されているため、個別に買い揃えるよりもコストパフォーマンスが遥かに高く、互換性トラブルの心配もありません。
Q3: PD急速充電に対応する充電器は、どのようなものを用意すればよいですか?
最大24WのPD(Power Delivery)急速充電に対応する、USB-C出力端子を備えた市販のACアダプターやモバイルバッテリーをご利用ください。24W以上の高出力に対応した充電器とPD対応ケーブルを使用することで、わずか約1.5時間でバッテリーグリップをフル充電することが可能です。
Q4: LiDARフォーカスを使用する際、映像トランスミッターは必ず必要ですか?
いいえ、必須ではありません。LiDARレンジファインダーとフォーカスモーター、そしてDJI RS 3 Pro本体があれば、ジンバル単体のシステムだけでマニュアルレンズをオートフォーカス化して撮影できます。ただし、「映像トランスミッター(DJI Transmission)」を併用すると、外部モニターでLiDARウェーブフォームを確認しながらの高度な遠隔フォーカス操作が可能になります。
Q5: 雨天時の屋外撮影でもLiDARレンジファインダーは動作しますか?
LiDARレンジファインダー自体は防水・防滴仕様ではないため、雨天時の使用は推奨されません。また、空気中の雨粒や霧、激しい雪などは赤外線レーザーを遮ったり乱反射させたりする原因となり、測距精度が著しく低下し、意図しない場所にピントが合ってしまう可能性が高くなります。悪天候時にはレインカバー等で機材を保護し、マニュアルフォーカスを使用することをお勧めします。
