映像制作の現場において、視聴者の目を引くシネマティックな表現はますます重要性を増しています。特に映画のようなワイドスクリーン映像を実現するアナモルフィックレンズ(アナモフィックレンズ)は、多くのクリエイターが導入を検討する機材の一つです。本記事では、SIRUI(シルイ)が展開するフルサイズ対応の「SIRUI Saturn V2シリーズ フルサイズ アナモルフィック シネマレンズ 35mm / 50mm / 75mm T2.9 1.6X Eマウント 専用ハードケース付きセット」に焦点を当て、そのスペックや特徴、SONY(ソニー)のEマウント(FEマウント)カメラと組み合わせた際の性能について詳細に検証します。
フルサイズ対応アナモルフィックレンズ「SIRUI Saturn V2」の4つの主要スペック
1.6倍のスクイーズファクターが実現する圧倒的なシネマスコープ画角
SIRUI(シルイ)のSaturn(サターン)V2シリーズにおける最大の特徴は、1.6倍という高いスクイーズファクター(圧縮率)を備えている点です。一般的な1.33倍のアナモルフィックレンズと比較して、水平方向により広い画角を取り込むことが可能となっており、3:2のフルサイズセンサー使用時には2.4:1、16:9のセンサーモード設定時には実に2.8:1という極めてワイドなシネマスコープのアスペクト比を実現します。従来の球面レンズで同様の横長映像を作る場合、上下をクロップ(切り抜き)する必要があり、センサーの有効画素数を犠牲にしなければなりませんでした。しかし、この1.6Xアナモフィックレンズを使用することで、フルサイズセンサーの全てのピクセルを余すことなく活用しながら、映画館のスクリーンのような圧倒的な没入感とスケール感を持つシネマティックな映像表現が可能となります。風景の広がりや空間の奥行きをダイナミックに捉えたい映像制作において、この1.6倍というスペックは大きなアドバンテージをもたらします。
カーボンファイバー採用による大幅な軽量化とコンパクトな筐体設計
フルサイズ対応のアナモルフィックレンズ(アナモフィックレンズ)は、その複雑な光学構造ゆえに大型で重量がかさむものが一般的であり、ワンマンオペレーションや少人数での映像制作においては機動力低下の要因となっていました。SIRUI Saturn V2シリーズは、レンズ鏡筒の先端部分などに軽量かつ高強度なカーボンファイバー素材を採用することで、従来のシネマレンズの常識を覆す大幅な軽量化とコンパクトな筐体設計を達成しています。35mm、50mm、75mmの各レンズがいずれも約400g〜500g前後という驚異的な軽さに収まっており、フルサイズ用の1.6Xアナモルフィックレンズとしては世界最小・最軽量クラスのサイズ感を実現しています。この小型軽量設計により、長時間のロケーション撮影や移動を伴う現場での負担が劇的に軽減されるだけでなく、小型のカメラリグやジンバルへの搭載も容易になり、機動力を活かしたフットワークの軽い撮影スタイルを強力にサポートします。
暗所での撮影にも対応する開放T2.9の明るさと光学性能
シネマレンズにおいて露出の基準となるT値(透過光量)が、35mm、50mm、75mmの3本すべてにおいて開放T2.9で統一されている点も、SIRUI Saturn V2シリーズの優れたスペックの一つです。T値はF値とは異なり、レンズ内部での光の反射や吸収ロスを計算に含めた実質的な明るさを示す指標であるため、複数本のレンズを切り替えて撮影する際にも露出のばらつきが生じにくく、照明セッティングの再調整にかかる時間を短縮できます。開放T2.9という十分な明るさを確保していることで、室内や夜間、夕暮れ時といった光量の少ない低照度環境での撮影においても、カメラ側のISO感度を過度に上げることなくノイズを抑えたクリアな映像を記録することが可能です。また、絞り羽根には10枚(35mm/50mm)または13枚(75mm)の構造が採用されており、開放付近での浅い被写界深度を活かした撮影から、少し絞り込んでシャープネスを高めた撮影まで、シチュエーションに応じた柔軟な露出コントロールと高い光学性能を発揮します。
ソニーEマウント(FEマウント)に最適化された高い汎用性
本レンズセットは、現在の映像制作市場において高いシェアを誇るSONY(ソニー)のEマウントレンズ(フルサイズ対応のFEマウント)に最適化された設計となっています。フランジバックの短いミラーレス一眼カメラの特性を活かした光学設計により、マウントアダプターを介することなくソニー製のカメラボディへダイレクトに装着でき、通信エラーやガタつきのない安定した運用が可能です。プロフェッショナル向けのCinema LineであるFX3、FX6、FX9といったシネマカメラから、写真と動画のハイブリッド機であるα7S IIIやα7 IV、さらにはVLOGCAMシリーズのZV-E1に至るまで、幅広いソニーEマウント機との高い親和性を誇ります。SIRUI Eマウント アナモルフィックレンズとして、既存のソニー製カメラシステムにそのまま組み込むことができるため、新たに専用のシネマカメラボディを調達する必要がなく、現在の機材資産を活かしながら手軽にアナモルフィック撮影のワークフローを構築できる高い汎用性を備えています。
シネマティックな映像表現を可能にするアナモフィックレンズの4つの特徴
アナモルフィックレンズ特有の美しい楕円ボケと立体感の創出
アナモルフィックレンズ(アナモフィックレンズ)を映像制作に導入する大きな理由の一つが、球面レンズでは決して得られない独特のボケ味です。SIRUI Saturn V2は1.6倍のスクイーズファクターを持っているため、背景や前景の点光源が縦方向に引き伸ばされた美しいラグビーボール状の「楕円ボケ」として描写されます。開放T2.9の浅い被写界深度と相まって、ピントが合っている被写体と背景との分離感が強調され、画面全体に絵画のような奥行きと強い立体感が創出されます。特に、街灯や木漏れ日、イルミネーションなどが背景に存在するシーンにおいて、この特有の楕円ボケは視覚的なアクセントとして機能し、日常の何気ない風景であっても瞬時に映画のワンシーンのようなドラマチックでシネマティックな印象へと昇華させます。また、フォーカスを奥から手前へと移動させるラックフォーカスの際にも、ボケの形状が独特の変形を見せるため、視聴者の視線を効果的に誘導する演出が可能です。
印象的な横方向のレンズフレアによる映画のような演出効果
アナモフィックレンズの代名詞とも言えるもう一つの視覚的特徴が、強い光源がレンズに入射した際に発生する水平方向のストリーク(線状のレンズフレア)です。SIRUI Saturn V2シリーズは、コーティング技術の最適化により、車のヘッドライトや街灯、逆光時の太陽光などに対して、画面を横一文字に貫く印象的なレンズフレアを発生させます。このフレアは、映像にSF映画のような近未来感や、ノスタルジックでエモーショナルな雰囲気を付加する強力な演出効果を持っています。また、一般的なオールドレンズや安価なアダプターで見られるような、画面全体が白っぽく濁ってコントラストが著しく低下する現象(ハレーション)が適切にコントロールされており、被写体のディテールやシャドウ部の締まりを維持したまま、美しい光のラインのみを際立たせることができます。照明の角度やカメラのパンニングに合わせて意図的にフレアを発生させることで、クリエイターの表現の幅を大きく広げることが可能です。
フルサイズセンサーの性能を最大限に引き出す高い解像度
従来のアナモルフィックレンズは、独特の味わいがある反面、周辺部の解像度低下やピント面の甘さが課題となるケースが少なくありませんでした。しかし、SIRUI(シルイ)のSaturn V2シリーズは最新の光学設計と高精度な非球面レンズの採用により、フルサイズセンサーが持つ高い解像性能を最大限に引き出すシャープな描写力を実現しています。開放T2.9からピント面は十分な解像感を備えており、4Kや8Kといった高解像度フォーマットでの動画記録にも余裕をもって対応します。被写体の肌の質感や髪の毛のディテール、建築物の細かな構造に至るまで緻密に描写しつつ、アウトフォーカス部分は滑らかにボケていくため、現代のデジタルシネマに求められるクリアで高精細な画質と、アナモルフィックならではの味わい深い表現を高次元で両立しています。大画面モニターやスクリーンでの上映を前提とした商用映像や映画制作においても、妥協のないクオリティを提供します。
歪みを抑えた自然な描写力と豊かな色彩表現
広角から中望遠に至るまで、アナモルフィックレンズ特有の光学系は糸巻き型や樽型の歪曲収差(ディストーション)が発生しやすいという特性がありますが、SIRUI Saturn V2シリーズではこれらの歪みが極めて良好に補正されています。建物や水平線などの直線的な被写体を撮影した際にも不自然な曲がりが少なく、スッキリとした見やすい構図を作ることができます。さらに、レンズコーティングの改良により色収差も徹底的に抑えられており、ハイライト部のフリンジ発生を低減するとともに、自然で豊かな色彩表現と滑らかな階調再現を可能にしています。特に重要な要素として、35mm、50mm、75mmの3本のレンズ間でカラーバランス(色味)が厳密に統一されている点が挙げられます。これにより、撮影現場でレンズを交換してもカットごとの色のズレが生じにくく、ポストプロダクションにおけるカラーグレーディング作業の効率を大幅に向上させることができます。
映像制作の現場を網羅する35mm・50mm・75mmレンズセットの活用法
広大な風景や建築物をダイナミックに捉える35mmの広角表現
セットに含まれる35mmレンズは、1.6倍のスクイーズファクターによって水平方向の画角が約22mm相当の超広角レンズに匹敵する広がりを見せます。この圧倒的なワイド画角は、雄大な自然風景や都市のスカイライン、巨大な建築物の全景をダイナミックにフレーム内に収めるエスタブリッシング・ショット(状況説明のカット)において絶大な威力を発揮します。また、室内のような限られたスペースや狭い路地での撮影においても、カメラの引きしろが確保できない状況下で空間全体を広く見せることが可能です。垂直方向の画角は35mmのまま維持されるため、一般的な22mmの球面広角レンズで発生しがちな「周辺部の被写体が極端に引き伸ばされるパースペクティブの誇張」が抑えられ、自然なプロポーションを保ちながら横方向の広がりだけを強調できるのが大きな利点です。最短撮影距離は0.9mに設定されており、背景の広大な環境を活かしたダイナミックな映像表現に適しています。
自然な遠近感で被写体を際立たせる50mmの標準域撮影
50mmレンズは、水平方向において約31mm相当の広角〜準標準域の画角を提供し、垂直方向には人間の視覚に近い自然な遠近感をもたらすため、あらゆる映像制作の現場で最も使用頻度が高くなる一本です。広すぎず狭すぎない絶妙な画角バランスにより、被写体となる人物と、その周囲の背景情報(ロケーションの雰囲気)を同時にバランス良く画面内に配置するミディアムショットやウエストショットに最適です。ドキュメンタリーやインタビュー撮影、ドラマの対話シーンなどにおいて、視聴者に違和感を与えない自然な距離感でストーリーを展開させることができます。また、開放T2.9の明るさと50mmという焦点距離の組み合わせは、背景を適度にぼかして被写体を立体的に浮き上がらせる効果が高く、35mmよりも被写体に集中させたい場面で重宝します。最短撮影距離は0.9mとなっており、テーブル越しのカットや日常的な動作を切り取るシーンなど、汎用性の高い標準シネマレンズとして機能します。
ポートレートや感情のクローズアップに最適な75mmの中望遠効果
75mmレンズは、水平方向で約47mm相当の標準的な画角を持ちながら、中望遠レンズ特有の圧縮効果と非常に浅い被写界深度を実現する一本です。主に人物のバストアップや顔のクローズアップ、特定のオブジェクトを強調するインサートカットにおいて、その真価を発揮します。背景が整理されて大きくボケるため、雑多なロケーションであっても不要な視覚情報を排除し、演者の繊細な表情の変化や感情の動きに視聴者の視線を強く引きつけることが可能です。また、35mmや50mmと比較してアナモルフィック特有の楕円ボケや水平フレアがより大きく顕著に現れるため、幻想的でエモーショナルなポートレート映像やミュージックビデオの撮影において極めて高い演出効果を生み出します。最短撮影距離は0.85mと3本の中で最も短く設計されており、被写体に一歩踏み込んでその存在感を際立たせる印象的なカットを撮影することができます。
専用ハードケース付き3本セットがもたらす機材運用の効率化
SIRUI Saturn V2シリーズは、これら35mm、50mm、75mmの3本が「専用ハードケース付きセット」としてパッケージングされています。映像制作の現場において、広角・標準・中望遠の主要3焦点距離が最初から揃っていることは、あらゆる撮影シチュエーションに即座に対応できる体制が整うことを意味します。付属する専用ハードケースは、防塵・防滴性能や耐衝撃性に優れた堅牢な造りとなっており、内部には各レンズの形状に合わせて精密にカットされたウレタンクッションが配置されています。これにより、過酷なロケーションへの移動や航空機での機材輸送時にも、高価なシネマレンズを振動や衝撃から確実に保護します。また、現場でのセッティングや撤収時にも、3本のレンズとキャップ類を一括して管理・収納できるため、機材の紛失リスクを防ぎ、レンズ交換のワークフローをスムーズに行うことができるなど、機材運用の効率化に大きく貢献します。
| スペック項目 | SIRUI Saturn V2 35mm | SIRUI Saturn V2 50mm | SIRUI Saturn V2 75mm |
|---|---|---|---|
| 対応マウント | ソニー Eマウント(フルサイズ) | ソニー Eマウント(フルサイズ) | ソニー Eマウント(フルサイズ) |
| スクイーズファクター | 1.6倍(1.6X) | 1.6倍(1.6X) | 1.6倍(1.6X) |
| 水平相当画角(約) | 22mm相当 | 31mm相当 | 47mm相当 |
| 絞り値(T値) | T2.9 – T16 | T2.9 – T16 | T2.9 – T16 |
| 絞り羽根枚数 | 10枚 | 10枚 | 13枚 |
| 最短撮影距離 | 0.9m | 0.9m | 0.85m |
| フィルター径 | 62mm | 62mm | 62mm |
従来モデルから進化したSIRUI Saturn V2シリーズの4つの改良点
外装デザインの刷新による耐久性と操作性の向上
SIRUI Saturn V2シリーズは、初代Saturnシリーズから外装デザインと構造の大幅な刷新が行われており、プロの映像制作現場におけるハードな使用に耐えうる耐久性と操作性の向上が図られています。カーボンファイバーによる軽量性のメリットを継承しつつ、マウント周辺やギアリングなどの負荷がかかる重要なパーツには高精度なアルミニウム合金を採用し、全体の剛性感とビルドクオリティが一段と高められました。また、レンズ表面に施されたフォーカス距離表示(メートルおよびフィート)やT値のインデックス刻印は、視認性の高いフォントと配色に改められており、薄暗いスタジオや夜間のロケーション撮影においても、カメラアシスタントやオペレーターが瞬時に設定値を読み取れるよう配慮されています。表面仕上げも傷や摩耗に強い処理が施されており、長期間にわたる業務運用においても高い信頼性を維持する設計となっています。
シネマレンズとしての使い勝手を高める統一されたギア位置
複数本の単焦点シネマレンズを運用する現場において、レンズ交換に伴うタイムロスを最小限に抑えることは極めて重要です。SIRUI Saturn V2シリーズでは、35mm、50mm、75mmの3本すべてにおいて、フォーカスリングとアパチャー(絞り)リングの0.8Mod標準シネマギアの位置が完全に統一されています。これにより、カメラリグにマニュアルフォローフォーカスやワイヤレスフォローフォーカス(モーター駆動システム)を装着している場合でも、焦点距離を変更するためにレンズを交換した際、フォローフォーカスギアの位置を前後にスライドさせて再調整する手間が一切発生しません。レンズをマウントから外して別の焦点距離のレンズを装着するだけで、即座に次のカットの撮影に入ることができるため、限られた撮影時間の中で多様なアングルや画角を求められるコマーシャル撮影や映画制作の現場において、圧倒的なワークフローの高速化を実現します。
フォーカスブリージングの抑制による安定した構図の維持
動画撮影において、ピント位置を手前から奥、あるいは奥から手前へと移動させた際に、画角(像倍率)が変化してしまう現象を「フォーカスブリージング」と呼びます。この現象が顕著なレンズを使用すると、ピント送りのたびに画面全体がズームしたように伸縮してしまい、視聴者に不自然な印象を与え、せっかくのシネマティックな没入感を損なう原因となります。SIRUI Saturn V2シリーズは、内部の光学エレメントの移動制御を最適化することで、このフォーカスブリージングを従来モデル以上に効果的に抑制しています。特に中望遠の75mmや標準の50mmを使用して、手前の人物から奥の人物へと劇的にフォーカスを移動させるような演出を行う際にも、フレームの四隅の構図がしっかりと維持され、視覚的なノイズのない安定した映像表現が可能です。プロフェッショナルなシネマレンズとして求められる厳格な基準をクリアする改良点と言えます。
ジンバルやドローン撮影におけるバランス調整の負担軽減
現代の映像制作では、電動3軸ジンバル(スタビライザー)や大型ドローンを用いた移動撮影が不可欠となっていますが、従来の重く長いアナモルフィックレンズは、モーターへの負荷が大きくバランス調整も困難でした。SIRUI Saturn V2シリーズは、35mm、50mm、75mmの3本間で全長や重量の差が最小限に抑えられており、かつすべてが軽量コンパクトにまとめられています。この統一されたフォームファクターにより、例えばジンバル上で35mmから50mmへレンズを交換した際にも、重心の変化が極めて少なく、ジンバルのバランス調整を一からやり直す必要がありません。わずかな微調整、あるいはキャリブレーションのみで即座に撮影を再開できるため、現場でのセッティング時間を大幅に短縮します。また、小型軽量のDJI RSシリーズなどの片手持ちジンバルにも余裕をもって搭載でき、モーターのトルク不足による微振動を防ぐなど、特機運用における負担を劇的に軽減します。
SONYミラーレスカメラ(Eマウント)との組み合わせによる性能検証
αシリーズやFXシリーズとの装着バランスと取り回しの良さ
SONY(ソニー)のEマウント(FEマウント)を採用するフルサイズミラーレスカメラ、具体的にはα7S IIIやα7 IVなどのαシリーズ、およびFX3やZV-E1といったコンパクトなシネマラインのボディにSIRUI Saturn V2を装着した際の重量バランスは極めて良好です。一般的なフルサイズ用アナモルフィックレンズは重量が1kgを超えることも珍しくなく、小型なソニーのボディに装着すると極端な「フロントヘビー(前重心)」となり、マウント部への負荷やホールディング性の悪化を招いていました。しかし、本レンズはカーボンファイバー採用による軽量設計のおかげで、小型のEマウントボディにダイレクトに装着しても重心が手元近くに収まり、まるで一般的な大口径単焦点レンズを扱っているかのような優れた取り回しの良さを発揮します。三脚への固定時にレンズサポート(レンズの先端を支えるパーツ)を必須としないケースも多く、システム全体の小型化に大きく寄与します。
動画撮影時におけるマニュアルフォーカスの精密な操作感
シネマレンズであるSIRUI Saturn V2は完全なマニュアルフォーカス(MF)およびマニュアル絞り設計となっており、ソニー製カメラの動画撮影機能と組み合わせることで精密なピント操作が可能です。フォーカスリングは適度なトルク感(粘り)を持って滑らかに回転し、急激なピントの飛びを防ぎながら微細なフォーカシングを行えるよう調整されています。また、回転角(フォーカススロー)が十分に広く設計されているため、開放T2.9での極めて浅いピント面であっても、ミリ単位での正確なピント合わせや、一定の速度での滑らかなラックフォーカスが容易に行えます。ソニーのカメラボディ側が備えている「ピーキング表示機能」や「ピント拡大機能」を併用することで、アナモルフィックレンズ特有の縦長に圧縮された状態であっても、ファインダーや背面モニター上で確実に合焦位置を把握でき、マニュアル操作ならではの意図を反映した映像表現を楽しめます。
カメラ内デスクイーズ機能や外部モニターとの連携性
1.6倍のアナモルフィックレンズで撮影する際、カメラのセンサーには水平方向が1.6倍に圧縮された(縦長に潰れた)映像が記録されます。そのため、撮影現場で正しい構図や被写体のプロポーションを確認するには、映像を横に引き伸ばして表示する「デスクイーズ表示」が必要となります。SONYのFX3やFX6などのCinema Lineカメラには、カメラ本体のモニター上でデスクイーズ表示を行う機能が搭載されていますが、1.6倍(1.6X)の倍率に完全対応させる場合や、α7シリーズなど本体にデスクイーズ機能を持たないカメラを使用する場合には、HDMI出力を介した外部フィールドモニター(AtomosやSmallRig、Portkeys製など)との連携が有効です。近年の外部モニターは1.6Xのアナモルフィックデスクイーズ表示に標準対応しているため、カメラとモニターを接続するだけで、2.4:1や2.8:1の完成形に近いワイドスクリーン映像をリアルタイムで確認しながら、確実なフレーミングとフォーカシングを行うことができます。
手持ち撮影からリグを組んだ本格運用までの適応力
SIRUI Saturn V2とSONY Eマウント機の組み合わせは、撮影スタイルを選ばない高い適応力を持っています。レンズ自体が非常に軽量であるため、カメラボディの強力な光学式5軸ボディ内手ブレ補正(アクティブモード等 ※一部クロップに注意)を活かし、ケージやハンドルすら付けないミニマムな状態での手持ち(ハンドヘルド)ラン&ガン撮影が可能です。一方で、レンズには標準的な0.8Modのシネマギアが備わっているため、カメラケージ、ベースプレート、15mmロッド、マットボックス、ワイヤレスフォローフォーカス、Vマウントバッテリーなどをフル装備した本格的なシネマリグへの組み込みにも完全に対応します。ドキュメンタリーのような機動力が求められる現場では軽快な手持ちスタイルで、CMや映画のように厳密なオペレーションが求められる現場ではフルリグを組んだスタイルでと、一つのレンズセットで多様な制作スケールに柔軟に適応できる点が大きな強みです。
SIRUI Saturn V2 シネマレンズセットの導入前に確認すべき4つのポイント
作風に合わせて選択可能なブルーフレアとニュートラルフレアの違い
SIRUI Saturn V2シリーズを導入するにあたり、事前に確認しておくべき重要な選択肢が「フレアのタイプ」です。本シリーズには、往年のSF映画やアクション映画で象徴的に使われてきた鮮やかで存在感のある青い光の線を発生させる「ブルーフレア(クラシックフレア)」モデルと、光源そのものの色(暖色系のライトであればオレンジやゴールド、白色光であれば白)に応じた自然なフレアを発生させる「ニュートラルフレア(ナチュラルフレア)」モデルの2種類がラインナップされています。ブルーフレアは一目見てアナモルフィックと分かる強い視覚的インパクトとクールな演出効果を持つ一方、ニュートラルフレアはドラマやコマーシャル、ウェディング映像などにおいて、作品のトーンやカラーグレーディングを邪魔せず上品にシネマティックな質感を加えることができます。自身の映像制作のジャンルやクライアントの求める作風に合わせて、最適なフレアタイプを選択することが重要です。
- ブルーフレアモデルの特徴: 光源に対して鮮やかな青色の水平ストリークが発生。SF調、ミュージックビデオ、スタイリッシュな夜間撮影など、非日常感や強いアクセントを求める映像制作に最適。
- ニュートラルフレアモデルの特徴: 光源の色味を反映した自然で控えめな水平ストリークが発生。企業VP、映画、ブライダル、自然風景など、落ち着いたトーンや汎用性を重視する現場に最適。
編集ソフトでの1.6倍デスクイーズ処理に関するワークフロー
アナモルフィックレンズで撮影した動画ファイルは、そのままでは縦長に圧縮された状態であるため、ポストプロダクション(編集作業)の段階で水平方向に1.6倍引き伸ばす「デスクイーズ処理」を行う必要があります。DaVinci Resolve、Adobe Premiere Pro、Final Cut Proといった主要なノンリニア編集ソフトはすべてこの処理に対応していますが、事前にワークフローを把握しておくことが大切です。具体的には、読み込んだクリップの属性(ピクセルアスペクト比)を「1.6」または「アナモルフィック 1.6x」に変更するか、タイムラインの解像度設定をシネマスコープ比率(例:3840×1600など)に設定した上で、クリップのスケール(幅)を160%(または高さを62.5%)に調整する手法をとります。また、カメラ内手ブレ補正ではなく編集ソフト側のワープスタビライザー等を使用する場合は、デスクイーズ処理を行った後にネスト化(複合クリップ化)してから適用するなど、球面レンズとは異なる編集手順が必要になる点を理解しておく必要があります。
フィルター径の統一によるNDフィルター等のアクセサリー共有
日中の屋外撮影において、シネマレンズの開放T2.9付近の浅い被写界深度を維持しながら適切なシャッタースピード(フレームレートの約2倍の逆数)を守るためには、光量を減衰させるNDフィルターの使用が必須となります。SIRUI Saturn V2シリーズは、35mm、50mm、75mmの3本すべてにおいて、レンズ先端のフィルターネジ径が「62mm」に統一されています。一般的なアナモルフィックレンズでは焦点距離によって前玉の大きさが異なり、フィルター径がバラバラになるケースや、そもそも円形フィルターが装着できない出目金構造になっていることも少なくありません。しかし本レンズセットは62mm径で完全に統一されているため、高価な可変NDフィルターやブラックミストフィルターなどのエフェクトフィルターを1枚用意するだけで、3本すべてのレンズで使い回すことが可能です。ステップアップリングを併用する際も管理が容易であり、アクセサリー類の導入コストと現場での着脱の手間を大幅に削減できます。
コストパフォーマンスに優れたフルサイズシネマレンズとしての投資価値
かつて、フルサイズセンサーに対応したアナモルフィックシネマレンズは、1本あたり数百万円という極めて高価な価格帯に位置しており、ハリウッド映画や大規模なCM制作現場などでしかレンタル・導入ができない特別な機材でした。しかし、SIRUI(シルイ)のSaturn V2シリーズは、光学設計の効率化とカーボンファイバー等の最新素材の活用により、3本セット(専用ハードケース付き)でありながら、個人のビデオグラファーや中小規模の映像制作会社でも十分に購入可能な圧倒的コストパフォーマンスを実現しています。35mm、50mm、75mmという実用性の高い3つの焦点距離が一気に揃い、お手持ちのSONY Eマウントカメラを瞬時に本格的なシネマカメラへとアップグレードできる点を考慮すれば、その投資価値は極めて高いと言えます。他社との映像表現の差別化を図り、クライアントに対してワンランク上のシネマティックな映像クオリティを提案するための強力な武器として、導入を検討するに値するレンズセットです。
