富士フイルムのXマウントユーザーの間で、手軽に本格的な単焦点レンズの描写を楽しめるとして高い注目を集めているのが、銘匠光学(TTArtisan)の「TTArtisan 17mm F1.4 C ASPH Xマウント ブラック」です。APS-Cサイズセンサーに最適化されたこの大口径広角レンズは、35mm判換算で約26mm相当という、日常のスナップ撮影から広大な風景写真、さらには本格的な星景撮影までカバーする極めて汎用性の高い画角を持っています。本記事では、このレンズが持つ圧倒的な明るさや美しいボケ味、堅牢なビルドクオリティといった基本性能から、マニュアルフォーカス(MF)を活かしたスナップ撮影テクニック、星景・夜景撮影でのポテンシャル、そして導入時に注意すべきポイントまで、プロの視点から徹底的に解説いたします。富士フイルム独自の「フィルムシミュレーション」との相性や設定方法についても触れていますので、愛機での撮影表現をさらに広げたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
TTArtisan 17mm F1.4 C ASPH(Xマウント)の基本性能と4つの魅力
富士フイルムXマウントに最適なAPS-C専用の広角単焦点レンズ
銘匠光学(TTArtisan)が提供する「17mm F1.4 C ASPH」は、富士フイルムのXマウントをはじめとするAPS-Cミラーレスカメラ専用に開発された広角単焦点レンズです。35mm判換算で26mm相当という画角は、人間の視野に近い自然な広がりを持ちながらも、適度な遠近感(パースペクティブ)を演出できるため、スナップ、旅行、ドキュメンタリー撮影など幅広いシーンで重宝します。富士フイルムのミラーレス一眼カメラボディは、クラシカルで美しい外観を持つものが多く、本レンズのレトロな佇まいとも完璧に調和します。重量約248g、全長約57.5mmという軽量コンパクトな設計は、日常の常用レンズとして持ち歩く際にも負担にならず、カメラの機動性を最大限に引き出します。
APS-C専用設計とすることで、イメージサークルを無駄なく活用し、画面の中心部から周辺部に至るまで破綻のない高い光学性能をコンパクトなサイズの中に凝縮しています。高画素化が進む富士フイルムのXシリーズイメージセンサーに対しても、十分な解像力を発揮する光学系(8群9枚、非球面レンズ1枚、高屈折低分散レンズ3枚)が採用されており、単焦点レンズらしいシャープでクリアな描写力を提供します。ズームレンズでは得られない、単焦点ならではの歪みの少なさと抜けの良い発色は、日常の何気ない光景をドラマチックな作品へと昇華させ、撮影者の創作意欲を刺激し続けることでしょう。
開放F1.4の大口径がもたらす美しいボケ味と圧倒的な明るさ
このレンズの最大の特長の一つが、開放F1.4という圧倒的な明るさを持つ大口径設計である点です。F1.4という数値は、一般的なズームレンズやエントリークラスの単焦点レンズと比較して、極めて多くの光をセンサーに届けることができます。これにより、夜間や室内といった光量の限られた暗いシチュエンスでも、ISO感度を過度に上げることなくシャッタースピードを確保でき、ノイズを極限まで抑えた高画質な撮影を可能にします。夕暮れ時や夜の街角での手持ち撮影において、手ブレを防ぎながら被写体をクリアに捉えることができる機動性は、表現の幅を大きく広げる重要なファクターとなります。
さらに、F1.4の大口径がもたらす被写界深度の浅さは、広角レンズでありながらも驚くほど美しいボケ味を生み出します。10枚の絞り羽根を採用することで、絞り開放時だけでなく、少し絞り込んだ状態でも滑らかで美しい円形ボケを維持し、背景を優しく溶かすような表現が可能です。最短撮影距離は0.2mと非常に短いため、被写体にギリギリまで近づくことで背景のボケ効果をさらに強調し、主役となる被写体を際立たせた印象的なマクロ風スナップを撮影することができます。広角ならではの広い背景の広がりと、大口径ならではのとろけるような美しいボケが融合した描写は、写真に独特の空気感と立体的な奥行き感を与えてくれます。
質感にこだわった堅牢な金属鏡筒と心地よい操作感
TTArtisan 17mm F1.4 C ASPHは、そのリーズナブルな価格帯からは想像できないほど、ビルドクオリティに徹底的なこだわりを持って作られています。レンズの外装は、プラスチック素材を一切排除し、鏡筒からマウント部に至るまで、高い工作精度で削り出されたアルミニウム合金製の金属鏡筒を採用しています。手にした瞬間に伝わる心地よい金属のひんやりとした質感と、適度な重量感は、所有する喜びを感じさせるとともに、長年の過酷な使用にも耐えうる抜群の堅牢性を保証します。クラシックなカメラボディとの相性も極めて良く、愛機に装着した際の精悍なビジュアルは、撮影に向かうモチベーションを大いに高めてくれます。
操作性においても妥協はありません。マニュアルフォーカス(MF)の要となるフォーカスリングは、重すぎず軽すぎない絶妙なトルク感に調整されており、ミリ単位の極めて繊細なピント合わせをスムーズに行うことができます。また、絞りリングには適度なクリック感が設けられており、ファインダーから目を離すことなく、指先の感覚だけで正確に絞り値をコントロールすることが可能です。物理的なメカニズムが指先を通じてダイレクトにカメラと対話しているような感覚は、オートフォーカスレンズでは味わえない、写真を「撮る」という根源的な楽しさを再発見させてくれる素晴らしい操作体験と言えます。
驚異的なコストパフォーマンスを実現する銘匠光学の技術力
銘匠光学(TTArtisan)は、高性能かつ高品質なMFレンズを、驚くほど手頃な価格で市場に提供することで世界中のフォトグラファーから高い評価を得ているブランドです。本レンズ「17mm F1.4 C ASPH」においてもその設計思想は遺憾なく発揮されており、最新の光学設計技術と効率的な製造プロセスを組み合わせることで、競合他社の大口径広角レンズを圧倒する驚異的なコストパフォーマンスを実現しています。高級な光学ガラスや非球面レンズを惜しみなく使用しながらも、この低価格を維持していることは、これからマニュアルフォーカスでの撮影に挑戦したい初心者から、サブレンズを探しているプロフェッショナルまで、幅広い層にとって非常に魅力的です。
ここで、TTArtisan 17mm F1.4 C ASPH(Xマウント)の主な仕様をまとめたスペック表を紹介します。このように優れた構成でありながら手に取りやすい実用的な設計となっています。
| 項目 | 仕様詳細 |
|---|---|
| 対応マウント | 富士フイルムXマウント(APS-C専用) |
| 焦点距離 | 17mm(35mm判換算:約26mm相当) |
| フォーカス | マニュアルフォーカス(MF)専用 |
| レンズ構成 | 8群9枚(非球面レンズ1枚、高屈折低分散レンズ3枚) |
| 絞り羽根枚数 | 10枚(最小絞り:F16) |
| 最短撮影距離 | 0.2m |
| フィルター径 | 40.5mm |
| 外径×全長/質量 | 約56mm × 57.5mm / 約248g |
マニュアルフォーカス(MF)でのスナップ撮影を極める4つのテクニック
換算約26mmの絶妙な画角を活かしたスナップ撮影の基本
35mm判換算で約26mm相当という画角は、ストリートスナップにおいて「万能」とも呼べる絶妙な広さを持っています。広角でありながら、被写体に一歩踏み込むことで主題をしっかりと主張させ、逆に一歩退くことで周囲の環境や背景の情報(コンテクスト)を一枚の絵にバランスよく収めることができます。この画角は、人間の広範な視野をそのまま切り取ったかのような、誇張のない自然な臨場感を表現するのに最適です。過度な歪みが生じにくいため、街並みの直線や建築物のパースペクティブを崩すことなく、整然とした都市の風景や路地裏のディテールを美しく整理してキャプチャーすることができます。
スナップ撮影でこの画角を活かすための基本は、「カメラを構える前に、自分の目で構図と距離感を決めておくこと」です。26mm相当の画角がどのような範囲を切り取るのかを体感的に覚えておけば、被写体を見つけた瞬間に立ち位置を調整し、無駄のない動きでカメラを構えてシャッターを切ることができます。このアプローチにより、ファインダー越しに迷う時間を最小限に抑え、被写体の自然な表情や、一瞬の光の移り変わり、動きのあるストリートの決定的な瞬間を逃さずに捉える、軽快でダイナミックなスナップワークが可能になります。
置きピン(被写界深度)を活用した軽快なノーファインダー撮影
マニュアルフォーカス(MF)レンズの最大の強みは、「置きピン」と呼ばれる、あらかじめ一定の距離にピントを固定して撮影するテクニックを直感的に行える点にあります。本レンズの鏡筒には、被写界深度目盛りが刻印されており、特定の絞り値(例えばF8やF11)に設定した際、どの距離からどの距離までピントが合って見えるか(被写界深度の範囲)を目視で確認できます。この目盛りを参考にしながら、フォーカスリングを「3メートル」や「パンフォーカス(無限遠マークと絞り値を合わせる)」に設定しておくことで、ピント合わせにかける時間を完全にゼロにし、シャッターを押すだけの瞬間的な撮影が可能となります。
この置きピンテクニックと相性が良いのが、カメラを目の高さに構えず、胸元や腰の位置から撮影する「ノーファインダー撮影」です。富士フイルムのチルト式やバリアングル式の液晶モニターを軽く確認する、あるいはモニターすら見ずに被写体にレンズを向けることで、被写体にカメラを意識させることなく、極めて自然でライブ感あふれる日常のドキュメンタリー写真を撮影することができます。オートフォーカスが迷いがちな、ガラス越しの風景や、複雑に動く人混みのなかでも、置きピンを設定していればピンボケの心配を排除し、狙った瞬間を完璧に捉え続けることができるスナップ最強の武器となります。
富士フイルムのピーキング機能を活用した正確なピント合わせ
マニュアルフォーカスレンズを使用する上で、多くのユーザーが不安に感じるのが「ピントを正確に合わせられるか」という点です。しかし、富士フイルムのミラーレスカメラには、強力なマニュアルフォーカスアシスト機能が搭載されており、その代表格が「フォーカスピーキング」機能です。この機能を有効にすると、ファインダーや背面液晶モニターに映る被写体のうち、ピントが合っている境界部分(コントラストが高い部分)に指定した色(レッド、ホワイト、ブルー、イエローなど)のハイライトが表示されます。これにより、ピントリングを回しながら、どのエリアにピントが合っているかを視覚的に一瞬で把握することができます。
より精密なピント合わせを行いたい場合は、カメラの「ダイヤル押し込み」やショートカットキーに割り当てられた「フォーカスアシスト(デジタルズーム)」機能を併用することを強く推奨します。ピントを合わせたい部分をワンタッチで部分的に拡大表示し、ピーキング表示と組み合わせることで、F1.4という極めて薄い被写界深度であっても、ポートレートでの「瞳」や静物のディテールに対して、ピンポイントで驚くほど精密なピント合わせが可能になります。これらのカメラアシスト機能をマスターすることで、MFの難易度は劇的に下がり、むしろAF以上に撮影者の意図をダイレクトに反映させた自由自在なピン取りが可能になります。
絞りリングとフォーカスリングの直感的な操作による表現の変化
TTArtisan 17mm F1.4 C ASPHは、すべての操作をマニュアルで行うからこそ、絞りリングとフォーカスリングの連携によって、写真の表現を無段階かつ直感的に変化させることができます。F1.4という開放絞りでは、ピントの合っている極めて狭い面だけがシャープに立ち上がり、そこから前後に向けて急激にボケが広がっていくため、ドラマチックで幻想的な世界を作り出せます。一方で、絞りリングをF5.6からF8、F11へと回していくにつれて、画面全体の解像感が増し、手前の地面から遠くのビル群にいたるまで、画面の隅々まですっきりとシャープに描写される「パンフォーカス」へと表情を大きく変化させます。
この、絞りとピントの密接な相互作用を指先でコントロールしながら撮るプロセスは、露出や被写界深度の基本原理を体得するのにも非常に適しています。被写体の立体感を強調してエモーショナルに切り取りたいのか、あるいは街の混沌とした空気感をディテール豊かに克明に記録したいのか、その場の状況と自分の創作意図に合わせて瞬時にリングを回す。この一連の動作が、無意識のうちに身体感覚として身についていくことで、撮影者のクリエイティビティはさらに研ぎ澄まされ、単に「写す」だけでなく「光と影と空間をコントロールする」という写真の本質的な面白さを堪能することができるのです。
星景・風景撮影で本領を発揮する大口径レンズの活用法4選
F1.4の明るさを活かしてノイズを抑えた美しい星空を捉える
星景撮影(星空と地上風景を一緒に収める写真)において、レンズの「明るさ(開放F値)」は最も重視されるスペックの一つです。夜空の暗い環境下で星を撮影する場合、F4やF5.6といった暗いレンズでは、十分な露出を得るためにISO感度を極端に上げる(ISO 6400や12800以上)必要があり、結果として写真全体がざらついたノイズだらけになってしまいます。しかし、開放F1.4の驚異的な明るさを持つ本レンズであれば、ISO感度をISO 1600や3200といった実用的な範囲に抑えつつ、ノイズのないクリアで息をのむほど美しい星空を捉えることができます。センサーに多くの光を短時間で届けることができるため、星のまたたきをクリアに再現します。
また、大口径であることは、地球の自転による「星のブレ(流れ)」を防ぐためにも決定的な優位性をもたらします。広角17mm(換算26mm)のレンズで星を点として写すためには、いわゆる「500ルール(500÷換算焦点距離=ブレない限界秒数)」を適用すると、約19秒以下のシャッタースピードが求められます。F1.4であれば、シャッタースピードを8秒〜10秒程度に短縮しても十分に明るい星々の光を蓄積させることができるため、星が線状に流れず、完璧な点像としてきらめく満天の星空と、ブレのない静謐な山々や建物などの地上風景を、見事に一枚の作品として調和させることが可能になります。
非球面レンズ(ASPH)採用による周辺光量と収差の抑制
大口径レンズの設計において避けて通れない最大の課題が、画面周辺部での描写性能の低下や、各種収差(サジタルコマ収差や歪曲収差)の発生、そして画面の四隅が暗くなる周辺光量落ちです。特に星景撮影では、画面端にある小さな星が鳥が羽を広げたような歪んだ形状(コマ収差)になりやすく、レンズの実力が極端に試されます。TTArtisan 17mm F1.4 C ASPHは、名前に「ASPH(非球面レンズ)」を冠している通り、高度な光学設計のなかで高精度の非球面レンズを1枚、さらには高屈折低分散レンズを3枚配置することで、これら光学的な弱点を高度に補正しています。
これにより、F1.4の開放付近での撮影であっても、周辺光量の大幅な低下を防ぎ、画面の四隅まで十分に明るい均一な露出を提供します。また、コマ収差が良好に抑えられているため、夜空の端に位置する微小な星々であっても変形することなく、点光源としてシャープに描き出します。風景撮影においても、水平線や直線を多く含む建築物を撮影した際のディストーション(歪曲収差)が極限まで低減されているため、不自然な歪みのない、極めてナチュラルで説得力のある美しい構図を担保することが可能になり、RAW現像時のデジタル補正の手間も最小限に抑えることができます。
広角 17mm のダイナミックなパースペクティブを活かした風景写真
広角17mm(換算約26mm)が持つ最大の魅力の一つが、手前の被写体を大きく、遠くの被写体をより小さく見せることで生まれる、ダイナミックなパースペクティブ(遠近感)です。この視覚的効果を巧みに風景写真に取り入れることで、平面の二次元写真であるにもかかわらず、見る者をその場に引き込むような、圧倒的な立体感とスケール感を持った作品を作り出すことができます。例えば、手前にある美しい花々や特徴的な岩肌、打ち寄せる波などにカメラを極限まで近づけ、背景に広大な空や連なる山々を配置する「広角ならではのローアングル・ローアプローチ構図」は、日常の視点を超えた劇的な視覚表現を可能にします。
このダイナミズムを活かす際のポイントは、画面の中に「視線の導線(リーディングライン)」を作ることです。道、川の流れ、建物の並びなどを、画面の四隅から中央へと向かうように対角線上に配置することで、広角レンズ特有のパースが強調され、視線をスムーズに主役の被写体や無限遠へと導くことができます。17mmという画角は、広すぎて不要なものが写り込みすぎることもなく、狭すぎてダイナミックさを損なうこともないため、自然風景から雄大な都市のスカイラインまで、自分の意志を構図の中に明確に落とし込みやすく、非常にバランスの取りやすい画角として、風景写真の主力として大いに活躍してくれます。
夜景や都市景観をクリアに描き出す絞り値の選び方
夜景や都市景観を美しく撮影するためには、ただ絞りを開放にするだけでなく、シチュエーションに応じた適切な絞り値(F値)の選択が極めて重要となります。本レンズはF1.4という驚異的な明るさを誇りますが、三脚を使用してじっくりと街明かりやビルのディテールを撮影するシーンでは、絞りをF5.6からF8、あるいはF11付近まで絞り込むことをおすすめします。レンズというのは一般的に、開放値から2〜3段絞り込んだ時に最も高い解像度(シャープネス)を発揮し、色収差や周辺の甘さが劇的に改善される特性を持っています。絞り込むことで、中央から周辺部に至るまで、超高画質でクリアに研ぎ澄まされた都市のきらめきを描写できます。
さらに、F8以上にしっかりと絞り込むことで、10枚の絞り羽根が生み出す「光条(光の光線)」が美しく現れます。夜の街灯や車のヘッドライト、ビル群の点光源から、シャープで針のように鋭い10本の光のラインが伸びる描写は、夜景写真に幻想的で洗練されたアクセントを添えてくれます。三脚を使用し、ISO感度を「ISO 100」や「ISO 200」などの常用低感度に固定し、絞りをF8程度にして数秒から数十秒のスローシャッターを切る。このアプローチにより、走る車のテールランプが描く光の川(光跡)と、シャープに輝く光条、ノイズのまったくないクリアな夜空が見事に融合した、プロフェッショナルな都市景観写真を思いのままに表現することができます。
TTArtisan 17mm F1.4 C ASPH導入時に押さえるべき4つの注意点
電子接点非搭載によるカメラ本体での設定方法と注意点
TTArtisan 17mm F1.4 C ASPHは、驚異的な低価格と小型軽量化を実現するために、カメラ本体と電子的な通信を行う「電子接点」を搭載していません。そのため、このレンズを富士フイルムのカメラに装着した初期状態では、カメラ側がレンズが装着されていることを認識できず、シャッターボタンを押しても写真が撮れない状態になります。これを解決するためには、カメラの設定メニューから「レンズなしレリーズ」という項目を見つけ、設定を「ON(許可)」に変更する必要があります。この簡単な設定変更を一度行うだけで、電子接点のないすべてのマニュアルレンズが正常に動作し、自由な撮影を楽しむことができるようになります。
もう一つの注意点として、電子接点がないために、撮影した写真の「EXIFデータ(撮影データ)」にレンズの名称や実際に撮影した時の絞り値(F値)が自動的に記録されない点が挙げられます。後から写真の情報を確認・管理したい場合は、富士フイルムのメニュー内にある「マウントアダプター設定」等を利用して、手動で「焦点距離 17mm」を設定・登録しておくことをおすすめします。これを登録しておけば、ボディ内手ブレ補正(IBIS)を搭載したカメラにおいて、手ブレ補正機能が「17mm」に最適化され、ブレを正確に補正してくれる恩恵も受けられます。
マニュアルフォーカス(MF)初心者が慣れるまでのポイント
オートフォーカス(AF)での撮影に慣れ親しんだ方にとって、すべてのピント合わせを自分で行うマニュアルフォーカス(MF)は、最初は戸惑いや難しさを感じるかもしれません。特に、開放F1.4で近接撮影を行う際には、ピントが合う範囲(被写界深度)が数ミリ単位と極めて薄くなるため、わずかなカメラの揺れや被写体の動きでピント位置がずれてしまい、意図しないボケ写真になってしまうことがあります。MFに慣れるための最初のステップとしては、まず屋外の明るい場所で、比較的距離が離れていて動かない被写体(建物、標識、ベンチなど)を、少し絞り込んだ状態(F4〜F5.6程度)で撮影する練習から始めるのが良いでしょう。
少し絞ることで被写界深度が広くなり、ピント合わせの許容範囲が広がるため、ピントリングを回した際の変化が掴みやすくなります。ピントが合う感覚が掴めてきたら、徐々に絞りを開放(F1.4)に近づけたり、動く被写体や近距離の撮影に挑戦してみましょう。また、ピントリングを回する際は、一気に合わせようとせず、一度目標地点を通り過ぎてから(オーバーシュート)、再度戻しながら最もシャープに見える位置で止める「挟み撃ち」のような動かし方を意識すると、MFならではの確実な合焦へと早くスムーズに上達することができます。
レンズフードの互換性とフィルター径への対応
TTArtisan 17mm F1.4 C ASPHは、その光学性能を最大限に維持し、不必要な迷光によるゴーストやフレアを防止するため、そして大切な前玉レンズを物理的な衝撃や傷から守るためにも、適切なレンズフードの使用が推奨されます。本レンズには専用のプラスチック製バヨネットフードが付属している場合や、クラシカルなデザインにマッチするサードパーティ製のねじ込み式金属フードを購入して装着することができます。しかし、ねじ込み式フードを装着する場合は、本レンズのフィルター径が「40.5mm」という、比較的小柄で珍しいサイズである点に十分留意しなければなりません。
市販されている保護フィルターやNDフィルター、PLフィルター等を購入する際も、必ず「40.5mm」の口径サイズを指定して選ぶ必要があります。また、あまりに厚みのあるフィルターや、フィルターを重ね付けした上にさらにフードを装着しようとすると、広角17mmという画角の広さゆえに、画面の四隅が暗く影のようになってしまう「ケラレ」現象が発生する恐れがあります。これを防ぐためには、可能な限り「薄枠(スリム)設計」のフィルターを選択し、フードも広角レンズ専用の「広角対応ねじ込み式フード」を選ぶなど、事前の確認が重要です。
富士フイルム「フィルムシミュレーション」との相性と色表現
富士フイルム製カメラの最大のアイデンティティであり、多くのフォトグラファーを魅力し続けているのが、かつての銀塩フィルムの風合いをデジタルで忠実に再現する「フィルムシミュレーション」機能です。TTArtisan 17mm F1.4 C ASPHは、このフィルムシミュレーションとの相性が非常に素晴らしいことで知られています。本レンズの描写傾向は、現代の極限までカミソリのようにシャープでデジタルライクな超高級レンズ群とは異なり、適度な柔らかさと深いコントラスト、どこか哀愁を帯びた情緒的なトーン(オールドレンズのような味わい)を持っています。この独特なアナログ感が、富士フイルムの絵作りの思想と完璧に合致するのです。
例えば、彩度を落として渋い陰影を強調する「クラシッククローム」や、温かみのあるレトロな発色を楽しめる「クラシックネガ」を本レンズと組み合わせることで、映画のワンシーンを切り取ったかのような、ノスタルジックで情緒溢れるスナップ写真を無調整で生み出すことができます。さらに、F1.4の開放で見られるかすかな周辺光量落ちや、強い光源を入れた際のエモーショナルなフレア・ゴーストを逆手にとり、モノクロ表現の傑作である「ACROS(アクロス)」に設定すれば、光と影のコントラストが極限まで高まり、まるで数十年前にタイムスリップしたかのような重厚な作品づくりが可能になります。
FAQ(よくある質問と回答)
- Q1: このレンズは富士フイルムのオートフォーカス(AF)に対応していますか?
A1: いいえ、本レンズはマニュアルフォーカス(MF)専用レンズです。ピント合わせはご自身でレンズのフォーカスリングを回して行う必要がありますが、富士フイルムのカメラに搭載されている「フォーカスピーキング」や「フォーカスアシスト(拡大表示)」機能を利用することで、初心者でもスムーズかつ正確にピントを合わせることができます。 - Q2: カメラに装着してもシャッターが切れません。故障でしょうか?
A2: 故障ではありません。本レンズにはカメラと電子通信を行う接点がないため、初期状態ではカメラがレンズを検知できません。カメラのセットアップメニュー内にある「レンズなしレリーズ」の設定を「ON(許可)」に変更することで、シャッターが切れるようになります。 - Q3: 星景撮影で無限遠(∞)ピントを正確に合わせるコツを教えてください。
A3: ピントリングの無限遠(∞)マークの印の位置にただ合わせるだけでは、気温による膨張などの影響でわずかにピントがズレることがあります。最も確実な方法は、液晶画面やファインダーで「フォーカスアシスト」機能を使って画面を最大まで拡大し、遠くの明るい星や、遠方の街灯などの点光源が、最も小さくクリアな点になる位置へと手動で微調整を行うことです。 - Q4: フィルター径は何mmですか?また市販の丸型フードは使えますか?
A4: 本レンズのフィルター径は「40.5mm」です。市販の40.5mm径のプロテクトフィルターやNDフィルターなどを装着することが可能です。市販のねじ込み式フードも使用できますが、広角レンズのため、フードの形状やフィルターの厚みによっては、画面の四隅に影が映り込む「ケラレ」が発生する場合があります。「薄枠タイプ」のフィルターや広角用のフードの使用を推奨します。 - Q5: EXIFデータに撮影時の絞り値(F値)は記録されますか?
A5: 電子接点が搭載されていないため、撮影した写真のEXIFデータに実際の「絞り値(F値)」や「レンズ名」は自動的に記録されません。ただし、カメラ本体の「マウントアダプター設定」等に、手動で焦点距離「17mm」を設定・登録しておくことで、焦点距離の情報だけはEXIFに記録され、管理が容易になるとともに、ボディ内手ブレ補正搭載機種においては適切な補正効果を得ることができます。
