距離フライトの12時間を、単なる移動で終わらせないという選択<

この記事を書いた人・監修した人

経営学、情報工学を大学院で学ぶ。大学院修了後に仲間とIT企業を起業。中央官公庁、大企業、JAXAのシステム構築を行う。最初の会社を売却後に、第2起業でパンダスタジオを設立。ジブリ映画、ガンダム、エバンゲリオンなどの多くのアニメーション映画の音声製作をしていた東京テレビセンター、浜町スタジオを買収し再建事業を担当。

長距離フライトの12時間を、単なる移動で終わらせないという選択

私は長距離フライトがあまり得意ではありません。機内ではほとんど眠れず、座っているだけでも想像以上に体力を使います。香港までの5時間でも短いとは感じませんし、アメリカ便のような長距離となれば、これまでは「どうやって時間をやり過ごすか」を考えるのが常でした。 多くの方と同じように、これまでは映画や音楽を準備して、なるべく快適に過ごす工夫をしてきました。もちろん、それも大切です。移動中に無理をしないことは、出張全体の質にも関わります。 ただ今回は、少し考え方を変えてみました。 どうせ眠れないのであれば、この時間を仕事に転換できないか。 衛星インターネットとAIを活用すれば、これまで“耐える時間”だったフライトを、“積み上がる時間”に変えられるかもしれない。そう考え、アメリカ行きの12時間で実際に試してみることにしました。

JAL機内Wi-Fiは高いか

その問いよりも、「成果に変わるか」を考えたい

JALの国際線では、機内Wi-Fiが24時間18.8ドルで利用できます。日本円にすると、およそ3,000円です。金額だけ見れば、安いとは言いにくいかもしれません。ただ、私はこうした費用を判断する時、常に同じ基準で見ています。 その費用は、消費なのか、投資なのか。 もし映画を観て時間を過ごすためだけに使うのであれば、これは消費です。 一方で、仕事が進み、コンテンツが増え、将来の売上や問い合わせにつながるのであれば、十分に投資として成立します。 経営の現場では、コストを単純に削ること以上に、「何に使えば最もリターンが出るか」を考える方が重要です。移動時間も、見方を変えれば資産化できる余地があります。
JALの機内インターネット接続料金画面
▲図1:JALの機内インターネット接続料金。価格だけでなく、そこから何を生み出せるかで判断したいところです。

まず試して分かったこと

機内Wi-Fiは「速いか」より「安定しているか」が重要だった

最初の1時間は無料だったため、まずは接続状況を試しました。 結論から言えば、軽い作業なら可能です。 ただし、快適かと言われると、そこは別問題でした。 体感としては、スマートフォンのテザリングよりかなり遅い印象です。速度測定も試しましたが、思うように計測できず、結果が0表示になる場面もありました。つまり、単純な速度よりも、通信環境そのものの不安定さが大きな課題だったということです。  
速度測定を試みたものの、安定して計測できる状態ではありませんでした。
さらに見落とせないのが、申込と同時に24時間の利用時間がカウントダウンされることです。 つまり、「使えているかどうか」に関係なく時間は進みます。 この点は、実務上の示唆があります。 機内Wi-Fiを活用するなら、契約の前に作業環境を整え、着手する仕事を明確にしておくことが重要です。  
▲図3:申込と同時に利用時間のカウントダウンが始まる。準備の有無が効率を大きく左右します。

機内で仕事はできるのか

Web業務は可能、ただしクラウドAIは回線品質に強く依存する

今回の検証で明確になったのは、通常のWeb業務はある程度こなせるということです。 社内システムの確認、管理画面の閲覧、軽い入力作業、メール対応。こうした業務は、回線がつながっている限り問題なく進められます。 一方で、厳しかったのはクラウドAIを使った作業です。 AIへの指示送信、生成処理、画像作成、アップロード。この一連の流れは、地上では気にならない通信品質の差が、そのまま生産性の差になります。 特にネックだったのは、アップロードの遅さ接続の断続的な切断でした。
▲図4:AIを使ったコンテンツ生成画面。こうした業務は回線の質に大きく左右されます。
この点は、経営におけるIT活用そのものにも通じます。 便利な仕組みほど、前提条件が崩れたときの脆さが出やすい。クラウドAIは強力ですが、安定したネットワークがあって初めて、その力を十分に引き出せるのだと実感しました。

本当の課題は低速ではなく、切断だった

つながらない時間を前提に仕事を組み立てる必要がある

フライト中、回線が完全に使えなくなる時間帯が何度もありました。短いものは数分、長いものでは15分から30分程度です。これは、単に「少し遅いWi-Fi」という話ではありません。接続が前提の仕事が止まる環境だということです。 そのため、長い生成処理を一度流して待つような使い方には向きません。むしろ、接続できる瞬間に処理をまとめて進め、切れたら無理をしない。この考え方に切り替える必要がありました。
衛星インターネットに接続できない状態の画面:通信不能になる時間帯も少なくありませんでした。
ここで感じたのは、経営判断と似た構造です。 環境が理想的でない時、重要なのは不満を言うことではなく、制約条件の中で勝ち筋を組み直すことです。

そこで私は、機内で274本の記事を書くことにした

不安定な環境でも進められる仕事に集中する

では、その制約の中で何を進めるべきか。 考えた結果、パンダスタジオレンタルの機材紹介ブログに取り組むことにしました。確認すると、公開済みの記事数は9,726本。あと274本で10,000本に到達します。 これは、ひとつの節目です。 しかも、AIを使いながら進めれば、通信が生きている時間を最大限活かせる可能性がある。 そこで、機内で274本の記事作成とアップロードに挑戦することにしました。 もちろん、実際には簡単ではありません。回線断、タイムアウト、処理停止が何度も起こります。そこで運用を変え、iPadで通信状態を確認しながら、つながっている間だけまとめて処理を進める形にしました。 派手さはありません。 ですが、経営でも現場でも、成果を出すのは往々にしてこうした地道な運用です。

予想以上に大きかったのは、通信品質より準備不足の影響

機内で仕事をするなら、地上で勝負を決めておくべき

今回、最も大きな反省点はここでした。 WordPressの管理画面にアクセスしようとしたところ、海外からの不正アクセス対策に引っかかり、ログインできなかったのです。普段であればVPNで日本経由に切り替えますが、今回は軽さを優先して持ってきたMacBook AirにVPN環境を整えていませんでした。 機内で追加インストールすればよい、と考えたものの、今度はApp Storeへの接続自体が不安定で思うように進みません。 この経験から得た教訓は明確です。 機内で仕事をするなら、必要な環境はすべて地上で整えておくべきです。
  • VPN
  • 認証アプリ
  • 必要ソフト
  • ログイン確認
  • 作業データ
  • 海外アクセス時の例外設定
こうした準備は、一見地味ですが、空の上では決定的な差になります。経営でも同じで、成果は本番で突然生まれるのではなく、事前準備の質に大きく左右されます。

アラスカ上空で10,000本達成

移動時間を成果に変えられたのは、大きな手応えだった

接続できる時に処理を進め、切れたら待つ。 その繰り返しの結果、アラスカ上空を通過した頃、274本の記事作成とアップロードを完了することができました。 これで、パンダスタジオレンタルの公開記事数は10,000本です。
<img src=”https://gyazo.com/30cef3b93ac45e41b5bc9b89586586e7.png” alt=”ブログ記事数が10000本に到達した管理画面” loading=”lazy”>
▲図6:機内で10,000本目の記事達成。積み上げは、場所を選ばず価値になります。
数字そのものももちろん嬉しいのですが、それ以上に大きかったのは、これまで“消耗するだけだった時間”を“成果が残る時間”に変えられたことです。 これは、今後の出張の考え方を変える経験になりました。

今回のフライトで得た学び

次回に向けて改善すべきこと

今回の経験を、実務的な学びとして整理すると次の通りです。
  • 搭乗前にノートPCは必ずフル充電する
  • ラウンジでの充電も含め、電源準備を徹底する
  • 機内のUSB給電は補助と考える
  • 画面輝度を落として稼働時間を延ばす
  • VPNや認証アプリは搭乗前に必ず入れておく
  • App Store頼みの運用は避ける
  • クラウドAIだけでなく、ローカル環境も検討する
  • 接続断を前提に、短い単位で処理を区切る
  • 乾燥対策、姿勢対策、ノイズ対策も生産性に直結する
特に実感したのは、生産性は通信環境だけで決まらないということです。端末選定、バッテリー、姿勢、集中環境。こうした要素の総和が、実際のアウトプットを左右します。

まとめ

長距離フライトは、工夫次第で「耐える時間」から「積み上げる時間」に変えられる

今回の結論は明確です。 機内Wi-FiとAIを使えば、長距離フライトを完全なオフィスにはできなくても、十分に価値ある仕事時間には変えられる。 ただし、それには条件があります。
  • 回線は不安定である
  • クラウド前提の作業には限界がある
  • 事前準備の質が成果を大きく左右する
この現実を正しく受け止めたうえで、できる仕事を選び、進め方を工夫すれば、移動時間は決して無駄ではありません。 経営者にとって、時間は最も重要な資産のひとつです。 だからこそ私は、これからも「移動だから仕方ない」で終わらせず、どうすれば価値に変えられるかを考え続けたいと思います。 今回、274本の記事を書き、10,000本に到達できたことは、そのひとつの証明になりました。

この記事が役に立ったらハートを押してね

メニュー
  • 今日
  • 週間
  • 月間
  • 累計
カテゴリー