メーカーの担当者ではなく、使っている本人がインカムの話をする。Saramonicのブースで行われたプレゼンテーションは、英国のカメラマン・ステディカムオペレーターのJohn Fryさんが、自分の現場でWiTalk9をどう使っているかを20分かけて話したものでした。放送、大規模イベント、企業映像、長編映画。「意思疎通が円滑になれば、すべての作業が速くなる。時間の節約は費用の節約につながる」。
数字も具体的です。ベースなしで500m、ベースを使えば約700m、ベースを中央に置けば両端のスタッフ間で約1.5km。ベース1台に16台、4台のベースで最大64台のヘッドセット。アプリで1人だけに話しかける個別通話。各ヘッドセットの3.5mm端子に番組音声や自分の音楽を入れる使い方まで。WiTalk9、新しいWiTalk9 X、そしてWiTalk9 Baseは、いずれもパンダスタジオレンタルで取り扱い中です。
動画で見た方が早いのは、Fryさんがヘッドセットを手に取って「マイクを下げるとオン、上げるとオフ」「側面のダイヤルで音量」「クッションはこんなに柔らかい」と、実物で操作を見せる場面です。あとは中盤、現場の写真をスライドで見せながら「私たちはステージ裏のトレーラー、カメラマンは数百m先」と距離を語るところ。インカムの話は、現場の写真があると腑に落ちます。
プレゼンの主役WiTalk9は、親機+子機8台の9人用がパンダスタジオレンタルにあります。「箱から出してすぐ使える」とFryさんが言った構成そのままです。
→ 動画の主役。親機1+子機8、ベースなしで500m:
トランシーバーからケーブル式インカム、そして完全ワイヤレスへ
Fryさんの話は自分の履歴から始まります。長い間、現場ではトランシーバーを使っていた。ボタンを押して話し、返答を待つ。音質や電池持ちに不満があり、現場に置き忘れて紛失することもあった。その後ベルトパック同士をケーブルでつなぐインカムへ。無線のものでもベルトパックとヘッドセットの間にはケーブルがあった。「それでも進歩だったが、今は完全にワイヤレス」。
WiTalk9は送受信機をヘッドセットに一体化し、聞くときも話すときも常時つながっている。「接続した全員がテーブルを囲むように自然に会話できる。ただし、そのテーブルは500m離れていてもよい」。オレンジ色が親機で、ハブやベースステーションは不要。親機を装着した人が使用エリアの中央付近にいれば、全員が親機につながり、箱から出してすぐ使える。
ヘッドセットの作り:柔らかいクッション、両耳・片耳、ノイズ低減、サイドトーン
従来のWiTalk9は反対側にバッテリーを備えてバランスが良い。「高価な製品も含めていろいろ使ったが、非常に快適。長時間カメラの後ろに座っていても耳や頭が締め付けられにくい」。イヤークッションは柔らかく、外部の音も遮る。両耳タイプは「コンサートでカメラがスピーカーの近くにある」ような騒がしい場所で、周囲の音を抑えて指示を聞き取るため。送る側もマイクのノイズ低減で、大音量のスピーカーや大勢の観客がいても背景の雑音を抑えて声を届ける。
操作はシンプル。マイクを下げるとオン、上げるとオフ。マイクのボタンでノイズ低減のレベルを調整、側面のダイヤルで音量、別のボタンとの組み合わせでサイドトーン(自分の声を耳に返す機能)の切り替え。「好みは分かれるが、私は声が届いていると分かるので使っている」。バッテリーは各ヘッドセットに2本付属し、「一日の撮影中に電池交換が必要だった記憶がない」「10時間以上の撮影でも一日使える」。
新しいWiTalk9 Xは設計が異なり、より軽量。ヘッドバンドも軽く、ヘルメット内で使うモデルもある(安全のためヘルメットが必要な現場でも併用できる)。両耳・片耳タイプがあり、分解して片耳から両耳へ、またはその逆に変更できる。
→ 新モデルWiTalk9 X。軽量で片耳・両耳を組み替えられる9人用:
3.5mm端子:番組音声も、自分の音楽も、同じヘッドセットに
Fryさんが「特に気に入っている」と言った機能がこれです。ヘッドセットには3.5mm端子があり、入出力できる。「以前、とても長い会議を撮影したことがあった。カメラマンが眠くなるような会議でも、これなら自分の音楽プレーヤーをつなげる。音楽を聴きながらインカムの指示も聞ける。自分だけに聞こえるので、ほかの人には影響しない」。
実務的にはこう使います。中継の現場ではインカム用と番組音声のモニター用でヘッドホンを2つ使う場面があるが、これなら各ヘッドセットに音を入れられるので、2つ装着する必要がない。端子は4極で、マイクとヘッドホンに分ける分岐ケーブルを使えば、ミキサーの番組音声やパソコンとの送受信にも使える。
WiTalk9 Base:700m、16台×4ベースで64台、8グループ、Zoom/Teamsの声を現場へ
ベースを使うと構成が広がります。Fryさんの整理を順に。
- 距離:ベースを使うと通信距離を約700mまで広げられる。ベースを中央に置けば、両端のスタッフ間は約1.5km
- 台数:ベース1台につき16台。4台のベースで最大64台のヘッドセット。「最初は3〜4台の小規模な構成で導入し、後から拡張できる」
- グループ:アプリでA・Bチャンネル、ベースでは8グループ。制作・カメラ・照明・ステージなど担当ごとに分け、異なるグループ間の送話・受話も設定できる。「監督は全員へ話しかけつつ、制作グループの音だけを聞くこともできる」
- 個別通話:アプリでヘッドセットを1台だけ選び、押している間その人だけに話しかける(親機装着者が使用)。「ピントが少し外れている時に、全員へ知らせず伝えたい」「経験の浅いスタッフにも、皆の前で指摘せずに個別に伝えられる」。「高級システムでは一般的だが、この価格帯では珍しい」
- 入出力:3.5mm入力、USB-C(パソコンに接続するとオーディオインターフェースとして動作。Zoomなどの音を取り込み、「世界のどこにいる監督やクライアントでも、Teamsを通じて現場のカメラチームへ直接指示できる」)、底面のEthernetで複数のベースを連結、4-wireなどで他社のベースとも接続(既存のインカムを生かして併用)
- 電源:AC電源でも、Vマウントバッテリーでも動く
→ 動画に登場したベース。Vマウント仕様で現場に持ち出せる:
現場の事例:スカウトのキャンプファイア、映画の6カメ、ステディカムの長回し
スライドで見せてくれた事例が、この動画の一番の価値です。英国のスカウトの大規模イベントでは、ステージ上のカメラマン、会場中央のテント付近のカメラマン、ステージ裏のトレーラーの自分たちが、数百m離れて同じ無線で問題なく通信した。キャンプファイアのライブ配信では、メインカメラとの間に400〜500人の観客がいた。「映像伝送はHollylandでインカムはSaramonicだったが、観客の影響で映像が途切れてもインカムは問題なく機能した」(Fryさんの現場での一事例です)。
昨年撮影した長編映画『Idiots Anonymous』は、12人の俳優がひと部屋にいて、6人を6台のカメラで撮影し、翌日に照明とカメラを反対向きにして残り6人を撮った。「演技が進行している間は止めたくない。WiTalkで私と監督からカメラへ指示を出せた。収録中でも『少し左へ』と小声で指示できた」。
そしてステディカム。「20年間ステディカムを扱っている。モニターを見ながらクローズアップへ近づいていくと、監督から『もう少し近づいて』と注文が出る。従来なら一度止めて撮り直し。3分の長回しだったら全員にとって大きな負担。双方がこれを着けていれば、撮りながら調整を指示できる。ライブと同じように撮影を続けられる」。
この機材が向いていそうな人・現場
- スイッチャー卓とカメラの間が数十m〜数百mあるホール・屋外イベントの配信チーム(WiTalk9・ベースなし500m)
- カメラ・照明・ステージなど部門ごとにグループを分け、監督が個別にも全員にも話したい中規模以上の制作(Base・8グループ・個別通話)
- リモートのクライアントや監督が、Zoom/Teams経由で現場のカメラに直接指示を出す企業配信(BaseのUSB-C)
- ヘルメット必須の現場や、片耳・両耳を現場ごとに変えたいチーム(WiTalk9 X)
持ち帰り:WiTalk9シリーズの数字、講演の説明から(すべてレンタルあり)
| 構成 | 距離 | 台数 | グループ・機能 |
|---|---|---|---|
| WiTalk9(親機+子機8) | 約500m | 9台 | アプリでA/B、個別通話、3.5mm入出力、バッテリー2本付属 |
| WiTalk9 X | 同上 | 3〜9人用キット | 軽量、ヘルメット内モデル、片耳↔両耳を組み替え |
| +WiTalk9 Base | 約700m(中央配置で両端1.5km) | 1台16台、4台で64台 | 8グループ、USB-Cオーディオインターフェース、Ethernet連結、4-wire、AC/Vマウント |
→ 3人の小規模構成から始めるなら。両耳の3人用:
レンタルで試す価値があるところ
インカムの「届く距離」と「聞こえ方」は、会場で試すしかありません。Fryさんの言う「最初は3〜4台で導入し、後から拡張」は、レンタルならそのまま実行できます。本番会場の下見にWiTalk9 X-3Dを持ち込んで、卓とカメラ位置の間で話してみる。届けば本番は9人用、届かなければベースを足す。買う前にその判断ができるのが、レンタルの使い方です。3.5mmに番組音声を入れる運用も、ミキサーと一緒に借りて先に試せます。
用途別に探すなら
Saramonicのインカムをまとめて見たい人
ワイヤレスインカムをメーカー横断で比べたい人
Day1のSaramonicブース取材(WiTalk9 X・K9 XTX・SG MS1)
→ 【Day1 #12 Saramonic記事の公開URLを挿入】
展示会で見た新製品が入荷したかを確かめたい人
→ 新着機材一覧
Day1のSaramonic記事はブース担当者の製品説明でしたが、この動画は使っている側の話です。両方読むと、WiTalk9の位置づけが立体的になります。Day3の最後の1本は、PTZカメラとスイッチャーを一体化したTelycamのMix Oneへ。
📦 意思疎通が速くなれば、全部が速くなる。
IBC 2026取材シリーズの動画は、撮れたものから順にPANDASTUDIO TVで公開しています。
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出典:パンダスタジオ IBC 2026 アムステルダム取材動画「IBC Day3 11 Saramonic WiTalk Presentation Rough v01」(2026年9月13日収録)
※製品名・仕様・発売時期は取材時のブース担当者の説明(字幕)に基づくもので、収録時点の情報です。掲載のレンタル商品は商品一覧(2026年7月版)でIDの実在を確認済みです。
