カラー写真の彩度を0にしてモノクロにすると、なぜか眠い。SNSで見る「質感のあるモノクロ」にならない。理由は、モノクロ現像は彩度を抜くことではなく、色をどの明るさに変換するかを決める作業だからです。
「いまさら聞けないRAW現像超入門編セミナー SILKYPIX」のダイジェスト4本目は、カメラマンの横山さんが、ギターを持った人物写真を素材に、モノクロの質感を5段で作っていく16分です。この回は、セミナー全体の中で一番「写真」の話でした。
見どころは11分40秒からのノイズリダクションをオフにする場面です。「ちょっとデジタル臭いね、肌がツルツルすぎるよね」と拡大して、ノイズリダクションを切ると質感が戻る。その後、あえてノイズを足して「こっちが味気ないの分かります?」と比較する。文章で「ノイズを残す」と読むと信じにくいのですが、画面で見ると納得します。
手元の写真で試すなら、SILKYPIXをインストール済みのノートPCを借りて、この5段を順になぞってください。
→ SILKYPIX インストール済ノートPC:
1段目:カラーフィルター。フィルターの色が明るくなり、補色が暗くなる
SILKYPIXの詳細パネルには「モノクロコントローラー」というモノクロ専用のコントロールがあります。その中のカラーフィルターで、赤を付けると緑が暗くなり、青を付けると顔が暗くなる。横山さんが高校の写真部向けに作ったという資料の説明が分かりやすくて、赤い背景に緑で「色」と書いた被写体を、レッドフィルターで撮ると背景が明るく文字が暗く、グリーンフィルターだと逆になる。カラーフィルターを使うと、フィルター色が明るくなって、補色(反対色)が暗くなる。
空の青は、レッドフィルターで暗く落ちる。だから空が締まって車体が明るい、コントラストの高いモノクロになる。「このフィルター選びが、モノクロで写真のベースを決める基本」です。
今回は「紫」。赤系だと肌の質感が弱くなる
人物とギターの写真で横山さんが選んだのは紫でした。「赤系を選んじゃうと、肌の質感が弱くなっちゃう」。紫だと肌の凹凸や質感が出てくる。フィルターの濃さで明るさの比率を変えずにトーンが決まるので、少し薄くして「緑に対して赤い肌の色、という相対的な比率」を決めていました。正解はないので、いろいろ試す。ただし「肌ならこれ」という自分の基準を一つ持っておくと速いです。
2段目・3段目:レベル補正で黒と白を決めてから、S字カーブ
モノクロは色を調整できないので、やれることはトーンとコントラストです。ここで横山さんが「S字カーブを描く前にやってほしいこと」として挙げたのがレベル補正。トーンカーブの後ろに出ているヒストグラム(明るさの分布図)の左右の三角を内側に入れると、左は黒が締まり、右はハイライトの明るさが決まる。
山の裾に持ってくれば白飛びはない、内側に入れればそこから白飛びが始まる。ただし「決してここがいいわけじゃない。ここに持ってくれば正解、とかじゃなくて、真っ白な部分がありますよという一つの目印」。ヒストグラムで写真の良し悪しは分からない、画面を見て調整する。特にモノクロは黒の締まりとハイライトの抜けの比率で見た目が大きく変わるので、ここを先にやる。
その上でS字カーブ。おすすめは点を3つ打つやり方です。真ん中、中間より上、中間より下。下の点を下げると暗部のコントラストが締まり、上の点を上げるとハイライトが鮮やかに明るくなる。「慣れるまではこれだけでいい」。
4段目:焼き込み。部分補正ブラシの「反転」で背景だけ落とす
画面全体に均一な光が当たってフラットすぎるので、人にスポットライトが当たったような雰囲気を作りたい。部分補正ツールのブラシを人より少し大きくして、人をぐるっと囲う。ただ、やりたいのはその逆で、「反転」のチェックを入れると、塗った部分以外に効果がかかる。人物の明るさは変えずに、背景の明るさだけ少し暗くして人物を目立たせる。「レンズの周辺減光を自分でコントロールして使うような感じ。これが焼き込みという作業」です。
5段目:ノイズリダクションを切って、シャープを上げて、ノイズを足す
ここがこの回の核心です。ISO400で撮った写真を拡大すると、肌がツルツルでデジタル臭い。ノイズリダクションをオフにすると、本来センサーが捉えた情報が戻って質感が出る。さらにノイズを強調するためにあえてシャープネスを強くすると、ノイズにまみれて立体感が出る。
理屈はこうです。デジタルのモノクロは、グレーが0から255の256段階しかない。線のグラデーションだと256段階しか表現できず、グレーとグレーのつながりが悪くなる。点で表現すると、2つの点や3つの点でグレーを表現できるので、より深いグレーが表現できる。それがモノクロのノイズの役割。足りなければ「効果」の中のノイズ付加で足す。極端にやるとザラザラになるので、やりたいのはそこではなく質感の分だけ。
ノイズを乗せると、ハイライトとボケのつながり、ボケ足も変わってきます。「銀塩フィルムのプリントで、こんな感じのボケ、見たことありませんか」。私はここで、動画のフィルムグレインを足す理由がようやく腹落ちしました。ノイズはごまかしではなく、階調の足し算です。
持ち帰りツール:モノクロ現像 5ステップ表
| 段 | 操作 | 見るところ | 横山さんの言葉 |
|---|---|---|---|
| 1 | モノクロコントローラー→カラーフィルターで色を選ぶ(濃さも) | 肌やギターの質感が出る色か。赤系は肌の質感が弱くなる | フィルター色が明るく、補色が暗く |
| 2 | レベル補正:左の三角で黒を締め、右の三角でハイライトを決める | ヒストグラムは目印。画面を見て決める | 黒の締まりとハイライトの抜けの比率 |
| 3 | トーンカーブに3点(真ん中、上、下)でS字 | 下を下げて暗部を締め、上を上げてハイライトを明るく | 慣れるまではこれだけでいい |
| 4 | 部分補正ブラシで人を囲い、「反転」で背景を暗く | 人物の明るさは変えない | 周辺減光を自分でコントロールする焼き込み |
| 5 | ノイズリダクションをオフ→シャープを上げる→足りなければノイズ付加 | 拡大して肌がツルツルなら質感が消えている | 点で表現すると、より深いグレーになる |
順番が大事です。5段目を先にやると、ノイズだらけのフラットな写真になります。1〜3で骨格を作ってから、4で光を作り、5で質感を足す。
→ 5段を自分の写真で通すなら:
このダイジェストが向いていそうな人
- 店舗の紹介写真や社員のポートレートをモノクロで統一したいが、「彩度0」にしただけで安っぽくなって困っている担当者。カラーフィルターで肌の質感を選ぶところからです
- ストリートスナップで古い街並みや質感のあるものを撮っていて、カラーだと質感が色に紛れると感じている人。横山さんも「モノクロの方が向いている被写体は結構ある」と言っていました
- ノイズは悪、と信じてノイズリダクションを常に最大にしている人。モノクロでは階調の足し算になる、という逆の考え方です
レンタルで試す価値があるところ
横山さんは「高感度であえて撮って、ノイズを出してあげるのも一つの手」と言っていました。つまりモノクロの質感は、撮影時のISOと現像時のノイズ処理の組み合わせで決まります。自分のカメラのISO400、1600、3200のRAWを持ち込んで、SILKYPIX入りのノートでノイズリダクションのオンとオフを比べると、「自分のカメラはどのISOでどんな粒が出るか」が分かります。これはスペック表には載っていません。
📦 モノクロは彩度を抜く作業ではなく、色を明るさに変換して、粒で階調を足す作業です。
次のダイジェスト05は、霞んだ風景をレベル補正と霞除去で救う回です。全編アーカイブ(93分)の記事もあります。
