マイクロフォーサーズ(Micro4/3・MFT)マウントを採用するミラーレス一眼カメラユーザーにとって、交換レンズの選択肢は非常に豊富です。中でも、Pixco(ピクコ/バシュポ)が提供する「8mm F3.8 魚眼レンズ」は、圧倒的なコストパフォーマンスと独特の描写力で注目を集めています。本記事では、このCCTVレンズをベースとした超広角レンズの基本スペックから、180度の画角を活かした風景撮影・動画撮影・星景撮影などの実践的な活用法までを徹底的に解説いたします。完全なマニュアルフォーカス単焦点レンズでありながら、フィッシュアイ特有の歪曲収差や広角レンズならではのパンフォーカス表現を手軽に楽しめる本製品の魅力を、ビジネスパーソンやプロ志向のカメラ愛好家に向けて詳細に紐解いていきます。
Pixco(バシュポ)8mm F3.8魚眼レンズを構成する3つの基本要素
Pixco(ピクコ/バシュポ)ブランドとCCTVレンズの背景
Pixco(ピクコ/バシュポ)は、コストパフォーマンスに優れたカメラアクセサリーや交換レンズを提供するブランドとして、多くのカメラ愛好家から支持を集めています。特に本製品は、元々監視カメラなどに用いられるCCTVレンズの設計思想を応用しており、非常にコンパクトでありながら実用的な光学性能を備えている点が特徴です。CCTVレンズは、限られたスペースで広範囲を監視する目的で作られているため、その技術をマイクロフォーサーズ(MFT)規格のミラーレス一眼カメラに転用することで、手軽にフィッシュアイ(魚眼)の独特な描写を楽しむことが可能となりました。
また、PixcoのCCTVレンズシリーズは、単なる安価な代替品ではなく、オールドレンズのような独特の収差や周辺減光といった「味」を楽しむためのツールとしても高く評価されています。最新のデジタルカメラと組み合わせることで、現代の高度に補正されたレンズでは得られない、ノスタルジックでクリエイティブな表現を実現します。この背景を理解することで、本レンズが持つ独特の描写特性をより深く味わうことができるでしょう。
焦点距離8mm・開放F3.8がもたらす基本スペック
本レンズの基本スペックとして最も注目すべき点は、焦点距離8mmという超広角設計と、開放F値3.8という実用的な明るさのバランスです。8mmという焦点距離は、一般的な広角レンズの枠を超え、視界を大きく歪ませながら広範囲を一枚の画像に収めるフィッシュアイレンズ特有の表現を可能にします。対角線画角180度という驚異的な視野角は、人間の肉眼では捉えきれないダイナミックな空間を記録するのに最適です。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 対応マウント | マイクロフォーサーズ (MFT) |
| 焦点距離 | 8mm(35mm判換算:約16mm相当) |
| 最大口径比(開放F値) | F3.8 |
| フォーカス方式 | 完全マニュアルフォーカス (MF) |
| 画角 | 180度 |
マイクロフォーサーズ(MFT)規格における画角換算の考え方
マイクロフォーサーズ(Micro4/3・MFT)規格のカメラボディに本レンズを装着した場合、センサーサイズの関係から、焦点距離は35mm判換算で約16mm相当となります。一般的なMFT規格のレンズでは画角が狭くなる傾向がありますが、本製品は元々イメージサークルの小さいCCTVレンズをベースに設計されているため、MFTセンサー上でケラレ(周辺減光)を最小限に抑えつつ、フィッシュアイ特有の強烈なパースペクティブと180度に近い広い画角を維持しています。
この換算ロジックを理解することは、実際の撮影現場でどのような構図が得られるかを予測する上で非常に重要です。換算16mm相当の超広角レンズとして機能しながらも、魚眼レンズ特有の樽型歪曲収差が加わるため、直線が大きく湾曲する独特の視覚効果が得られます。これにより、建築物の撮影や狭い室内での撮影において、通常の16mm広角レンズとは全く異なる、クリエイティブでインパクトのある写真表現が可能となります。
180度の画角が生み出す3つの視覚的メリット
日常風景をダイナミックに変える超広角の魅力
180度という極めて広い画角を持つPixco 8mm F3.8魚眼レンズの最大の魅力は、見慣れた日常風景を劇的かつダイナミックな作品へと変貌させる力にあります。人間の視野を遥かに超える範囲を一度に捉えることができるため、空の広がりや地平線のカーブ、そびえ立つ高層建築物などを、圧倒的なスケール感で画面に収めることが可能です。被写体に極端に近づくことで遠近感が強調され、手前の物体はより大きく、奥の背景はより小さく描写されるという超広角特有のパースペクティブを存分に活かすことができます。
このような視覚的特性は、単なる記録写真を超えたアート性の高い表現を求めるクリエイターにとって強力な武器となります。例えば、足元の花壇から見上げるように撮影すれば、小さな花々が巨大なオブジェのように際立ち、背景の青空が半球状に広がる幻想的な一枚が完成します。日常の何気ないシーンに新しい視点をもたらし、撮影者のインスピレーションを大いに刺激するレンズです。
フィッシュアイ特有の歪曲収差を活かした表現手法
一般的なカメラレンズにおいては、直線が歪んで写る「歪曲収差(ディストーション)」は補正すべき欠点と見なされますが、フィッシュアイレンズにおいては、この強烈な樽型歪曲収差こそが最大の表現手法となります。Pixco 8mm F3.8は、画面の中心から周辺に向かって直線が大きく湾曲する特性を持っており、これを意図的に構図に取り入れることで、被写体を包み込むような独特の空間表現や、コミカルでデフォルメされたポートレート撮影が可能になります。
特に、水平線を画面の中央からずらして配置することで、地球の丸みを感じさせるような壮大な風景を描き出すことができます。また、動物や人物の顔に極端に接近して撮影する「鼻デカ写真」のような、ユーモア溢れる表現もフィッシュアイならではの醍醐味です。この歪曲収差をコントロールし、被写体のどの部分を歪ませ、どの部分を強調するかを計算しながら撮影することで、他にはないオリジナリティ溢れる作品を創出することができます。
狭い室内や限られたスペースでの撮影における優位性
不動産物件の室内撮影や、カフェなどの限られたスペースでの撮影において、180度の画角を持つ本レンズは圧倒的な優位性を発揮します。物理的に後ろに下がることができない狭い環境であっても、部屋の壁から天井、床に至るまで、空間全体を一枚の写真に収めることが可能です。これにより、実際の面積以上に空間を広く、開放的に見せる効果が期待できます。
また、VlogやYouTube向けの動画撮影においても、自撮り棒を使って自身を撮影する際、背景の状況をたっぷりと取り入れることができるため、視聴者に現場の臨場感を効果的に伝えることができます。マニュアルフォーカス単焦点レンズであるため、事前にピント位置を固定しておけば、カメラを動かしてもフォーカスが迷う(ハンチングする)心配がありません。このように、狭小空間での記録や情報伝達において、超広角レンズはビジネスシーンからパーソナルユースまで幅広く活躍する実用的なツールとなります。
マニュアルフォーカス単焦点レンズの3つの操作ポイント
絞りリングとピントリングの基本的な操作方法
Pixco 8mm F3.8は完全なマニュアルフォーカス(MF)レンズであり、オートフォーカス(AF)やカメラボディ側からの電子的な絞り制御には対応していません。そのため、撮影者はレンズ鏡筒に配置された「絞りリング」と「ピントリング」を直接手で回して操作する必要があります。絞りリングは、F3.8の開放から最小絞りまで無段階(クリックレス)で調整できる仕様となっており、動画撮影時に明るさを滑らかに変化させたい場面で非常に重宝します。
ピントリングの操作においては、鏡筒に刻印された距離指標を目安にフォーカシングを行います。マニュアル操作に不慣れな方にとっては最初は戸惑うかもしれませんが、ピントリングの適度なトルク感は微細な調整を可能にし、撮影者の意図をダイレクトに画作りに反映させることができます。この物理的な操作プロセス自体が、カメラという機械を操る純粋な喜びと、写真撮影の基礎を再確認させてくれる重要な要素となっています。
パンフォーカスを活用した迅速なスナップ撮影術
超広角レンズの光学的な特性として、焦点距離が短いため被写界深度(ピントが合って見える範囲)が非常に深いというメリットがあります。この特性を最大限に活かした撮影手法が「パンフォーカス」です。Pixco 8mm F3.8の絞りリングをF8やF11程度まで絞り込み、ピント位置を1メートルから無限遠の間に設定しておけば、手前から奥の背景まで画面全体にシャープなピントが合った状態を作り出すことができます。
パンフォーカスを活用することで、街中でのスナップ撮影や動きの速い被写体を追う際、都度ピント合わせを行う手間を完全に省くことが可能になります。カメラを構えてシャッターを切るだけで、瞬間のシャッターチャンスを逃さずに捉えることができるため、マニュアルフォーカスレンズ特有の「ピント合わせの遅さ」という弱点を完全に克服できます。この迅速なシューティングスタイルは、ドキュメンタリー撮影やストリートフォトグラフィーにおいて極めて有効な手法です。
ピーキング機能を併用した正確なピント合わせのコツ
パンフォーカスが有効な一方で、被写体に極端に接近するマクロ的な撮影や、開放F3.8を用いて少しでも背景をぼかしたい場合には、シビアなピント合わせが要求されます。このような場面で強力なサポートとなるのが、マイクロフォーサーズ機に搭載されている「フォーカスピーキング」機能と「ピント拡大」機能です。フォーカスピーキングを有効にすると、ピントが合っている被写体の輪郭に色(赤や黄色など)が付き、視覚的に合焦位置を瞬時に確認することができます。
さらに正確なピントを求める場合は、カメラ側のボタンにピント拡大(MFアシスト)機能を割り当て、画面の任意の部分を拡大表示しながらピントリングを微調整します。Pixco 8mm F3.8のような超広角レンズは、広範囲が写るため背面モニター全体ではピントの山が掴みにくいことがありますが、これらのデジタルアシスト機能を駆使することで、マニュアルフォーカスであってもプロフェッショナルレベルの精緻なピント合わせが確実に行えます。
Pixco 8mm F3.8が活躍する3つの主要な撮影シーン
広大な自然を収める風景撮影での活用法
大自然の壮大なスケール感を表現する風景撮影において、Pixco 8mm F3.8の180度という画角は無類の強さを発揮します。広がる海、連なる山脈、あるいは見渡す限りの星空など、標準レンズでは切り取ることしかできない景色を、その場の空気感ごと一枚の画像に封じ込めることができます。特に、手前に特徴的な岩や植物などの前景を配置し、奥に広大な背景を写し込む構図を取ることで、超広角特有の強烈な遠近感が生まれ、写真に深い立体感と奥行きを与えることができます。
また、フィッシュアイレンズ特有の歪曲収差を利用して、地平線を画面の上部や下部に配置することで、地球が丸いことを強調するようなドラマチックな表現も可能です。風景撮影においては、絞りをF8程度に絞り込み、三脚を使用して低ISO感度でじっくりと撮影することで、画面の隅々まで解像感の高いシャープな描写を得ることができます。軽量コンパクトな本レンズは、登山やハイキングなど、機材の重量を極力減らしたいアウトドアシーンでの携帯用レンズとしても最適です。
アクションやVlogなどの動画撮影における臨場感の演出
近年需要が高まっているVlog(ビデオブログ)やアクションカム的な動画撮影においても、Pixco 8mm F3.8は非常に魅力的な選択肢となります。マイクロフォーサーズ規格のミラーレスカメラに装着して自撮りを行う際、換算16mm相当の画角は、撮影者の顔だけでなく周囲の環境や背景を広くフレームに収めるのに十分な広さを提供します。これにより、視聴者は撮影者がどのような場所にいるのかを直感的に理解でき、映像に対する没入感と臨場感が飛躍的に向上します。
さらに、本レンズの絞りリングが無段階(クリックレス)仕様であることは、動画撮影において極めて有利に働きます。撮影中に明るさが変化する環境(例えば、屋外から屋内への移動など)において、絞りリングをスムーズに回すことで、カチカチという操作音を録音マイクに拾われることなく、滑らかに露出を調整することが可能です。マニュアルフォーカスによる固定ピントと組み合わせることで、意図しないフォーカスの迷いを排除した、プロライクで安定した映像制作が実現します。
F3.8の明るさを活かした星景撮影への挑戦
超広角レンズの王道とも言える被写体が、夜空いっぱいに広がる星々を捉える「星景撮影」です。Pixco 8mm F3.8は、開放F値3.8という明るさを備えており、マイクロフォーサーズ機の高感度性能と組み合わせることで、天の川や無数の星々を鮮明に記録することが可能です。180度の画角を活かせば、頭上に広がる全天の星空と、地上の風景(山や木々、テントなど)を同時に構図に収めることができ、ストーリー性のある星景写真を創り出すことができます。
星景撮影を成功させるためのポイントは、マニュアルフォーカスによる厳密なピント合わせです。明るい星を画面の中央に捉え、カメラのピント拡大機能を最大限に利用して、星が最も小さな点になるようにピントリングを慎重に調整します。ピントが合ったら、ピントリングが動かないようにテープ等で固定すると安心です。シャッタースピードは、星が線状に流れないよう15秒から20秒程度に設定し、ISO感度を1600〜3200の範囲で調整することで、ノイズを抑えつつ美しい星空を捉えることができるでしょう。
マイクロフォーサーズ機で本レンズを使用する際の3つの設定手順
「レンズなしレリーズ」機能の有効化プロセス
Pixco 8mm F3.8のような電子接点を持たない完全マニュアルレンズをマイクロフォーサーズ(MFT)機で使用する場合、最初に必ず行わなければならないカメラ側の設定があります。それが「レンズなしレリーズ(レンズ無し時のシャッター許可)」の有効化です。現代のデジタルカメラは、電子接点を通じてレンズが装着されていることを認識し、レンズが未装着の状態では誤作動を防ぐためにシャッターが切れない仕様になっていることが一般的です。
本レンズを装着した際、カメラは「レンズが装着されていない」と認識してしまうため、設定メニューから手動でこの制限を解除する必要があります。設定方法はメーカー(OM SYSTEM/オリンパス、パナソニックなど)によって異なりますが、通常は「カスタムメニュー」や「セットアップメニュー」内に該当の項目が存在します。この「レンズなしレリーズ」を「ON(許可)」に設定することで、初めてシャッターを切り、撮影を開始することが可能になります。購入後、いざ撮影しようとしてシャッターが切れないというトラブルを防ぐための必須の手順です。
ボディ内手ブレ補正を最適化するための焦点距離設定
多くのマイクロフォーサーズ機には強力なボディ内手ブレ補正(IBIS)機能が搭載されており、手持ち撮影時の歩留まりを劇的に向上させてくれます。しかし、電子接点を持たないPixco 8mm F3.8を使用する場合、カメラ側は装着されているレンズの焦点距離情報を自動で取得することができません。手ブレ補正機構は、レンズの焦点距離に基づいてセンサーの駆動量を計算しているため、正しい焦点距離が入力されていないと、逆にブレを増幅させたり、不自然な映像の揺れを引き起こしたりする原因となります。
これを防ぐためには、カメラのメニューから手動で焦点距離情報を入力する必要があります。手ブレ補正の設定項目内に「焦点距離入力」や「レンズ情報登録」といったメニューがあるため、そこに本レンズの実際の焦点距離である「8mm」を入力します(換算値の16mmではなく、レンズに記載された物理的な焦点距離を入力するのが基本です)。この一手間をかけることで、カメラの強力なボディ内手ブレ補正が正確に機能し、薄暗い環境でのスナップ撮影や、動画の手持ち歩き撮りにおいて、非常に安定したクリアな描写を得ることができます。
露出モード(絞り優先AE・マニュアル)の適切な選択
完全マニュアルレンズを使用する際の露出設定は、カメラの「Aモード(絞り優先AE)」または「Mモード(マニュアル露出)」を使用するのが基本となります。Aモードを使用する場合、レンズ側の絞りリングで任意のF値(例えばF8)に設定すると、カメラ側がレンズを通ってきた光量を測光し、適切なシャッタースピードとISO感度(オート設定時)を自動的に決定してくれます。これにより、絞り操作による被写界深度のコントロールに集中しながら、スピーディーな撮影が可能となります。
一方、星景撮影や動画撮影、あるいは露出を完全にコントロールしたい場合には、Mモード(マニュアル露出)を選択します。Mモードでは、レンズの絞りリングに加えて、カメラ側でシャッタースピードとISO感度を個別に設定します。背面モニターやEVF(電子ビューファインダー)に表示される露出メーターやヒストグラムを確認しながら、自分の意図した明るさになるよう各パラメーターを調整します。電子接点がないためExif情報に絞り値は記録されませんが、これらのモードを使いこなすことで、光を自在に操る本格的な写真表現を楽しむことができます。
他の広角交換レンズと比較した際の3つの強み
圧倒的なコストパフォーマンスと導入への手軽さ
カメラレンズ、特に超広角やフィッシュアイといった特殊なレンズは、一般的に高度な光学設計が要求されるため、純正品や有名サードパーティ製のものは非常に高価になる傾向があります。数万円から十数万円という投資が必要になることも珍しくありません。しかし、Pixco 8mm F3.8は、CCTVレンズの設計をベースに製造コストを徹底的に抑えることで、驚異的な低価格を実現しています。この圧倒的なコストパフォーマンスこそが、本製品の最大の強みと言えます。
「フィッシュアイレンズを使ってみたいが、使用頻度を考えると高価なレンズには手が出しづらい」と躊躇しているユーザーにとって、本レンズは非常に手軽なエントリーモデルとして機能します。安いからといって決して「おもちゃ」ではなく、絞りリングやピントリングを備えた実用的な金属製レンズであり、工夫次第でプロ顔負けのクリエイティブな作品を生み出すポテンシャルを秘めています。少ない投資で表現の幅を劇的に広げることができるため、初めての交換レンズや、遊び心を持ったサブレンズとして最適な選択肢です。
持ち運びに便利な小型軽量・コンパクト設計
マイクロフォーサーズシステムの最大のメリットは、システム全体が小型軽量にまとまる機動力の高さにあります。Pixco 8mm F3.8は、そのMFTシステムの利点を一切損なうことのない、極めてコンパクトで軽量な設計が施されています。手のひらにすっぽりと収まるパンケーキレンズに近いサイズ感であり、カメラボディに装着したままでも小さなバッグに容易に収納できます。
この優れた携帯性は、日常的なスナップ撮影や旅行、登山などのアクティビティにおいて絶大な威力を発揮します。「重くてかさばるから」という理由で広角レンズを自宅に置いていく必要がなくなり、常にカメラバッグの片隅に忍ばせておくことができます。ふとした瞬間に訪れるダイナミックな風景や、狭い路地裏の面白いパースペクティブに出会った際、サッと取り出してレンズを交換し、シャッターを切ることができる機動力は、撮影機会を大幅に増やし、結果として優れた作品を残す確率を高めてくれます。
金属製鏡筒がもたらす堅牢性と高い質感
低価格なレンズと聞くと、プラスチック製のチープな外装を想像しがちですが、Pixco 8mm F3.8はその期待を良い意味で裏切ります。本レンズの鏡筒はアルミニウム合金などの金属素材で構成されており、非常に堅牢で、手に取った際にひんやりとした金属特有の重厚感と高い質感を備えています。このクラシカルで無骨なデザインは、最新のミラーレスカメラに装着しても違和感なくマッチし、オールドレンズを彷彿とさせる所有欲を満たしてくれます。
また、金属製の鏡筒は耐久性にも優れており、アウトドアでの過酷な撮影環境においても安心して使用することができます。ピントリングや絞りリングの回転フィーリングも、適度な粘り(トルク)があり、プラスチック製レンズにはない滑らかで正確な操作感を提供します。このように、単なる安価な広角レンズという枠を超え、カメラに装着する喜びや、マニュアル操作の心地よさを味わうことができるビルドクオリティの高さも、他の同価格帯のレンズとは一線を画す明確な強みとなっています。
購入前に把握しておきたい3つの注意点と対策
周辺減光(ケラレ)の発生傾向とソフトウェア補正
Pixco 8mm F3.8を使用するにあたり、最も理解しておくべき特性の一つが「周辺減光」および「ケラレ」の発生です。本製品は元々イメージサークルの小さいCCTVレンズをベースにしているため、マイクロフォーサーズセンサーの四隅まで光が十分に届かず、画面の周辺部が暗く落ち込んだり、場合によっては黒い影(ケラレ)が明確に写り込んだりすることがあります。特に絞りを開放付近(F3.8)で使用した場合、この傾向はより顕著になります。
この現象への対策として、まずは「表現の一部として受け入れる」というアプローチがあります。周辺減光は、トイカメラやオールドレンズのようなレトロでノスタルジックな雰囲気を演出するスパイスとして、中央の被写体を際立たせる効果(トンネル効果)をもたらします。一方で、クリアな風景写真を求める場合には、Adobe Lightroomなどの画像編集ソフトウェアを使用して、後処理で周辺光量を補正する、あるいはケラレが発生している四隅を少しだけクロップ(トリミング)するといったデジタル補正を行うことで、容易に解決することが可能です。
逆光耐性とフレア・ゴーストへの実践的な対策
本レンズは、最新の高度なコーティング技術が施された純正の高級レンズと比較すると、逆光耐性において譲る部分があります。太陽などの強い光源が画面内に入り込む、あるいは画面のすぐ外にあるような状況下では、光の乱反射によるフレア(画面全体が白っぽくコントラストが低下する現象)や、ゴースト(光の輪や玉のような像)が発生しやすくなります。180度という超広角の特性上、光源を完全に画面外に追いやることは難しいため、撮影時には工夫が求められます。
実践的な対策としては、まずフレアやゴーストの発生を逆手に取り、写真にドラマチックな光の演出として意図的に取り入れる手法があります。あえて太陽光を画面の端に配置し、美しい光芒(光の筋)やゴーストをアクセントにする表現です。また、不要な光を遮りたい場合は、手や帽子、厚紙などを使ってレンズの斜め前方に「ハレ切り(簡易的なフード)」を作り、直射日光がレンズの前玉に当たるのを防ぐというアナログな手法が極めて効果的です。構図を少し変えるだけでもゴーストの出方は大きく変わるため、ファインダーを見ながら最適な角度を探ることが重要です。
完全マニュアル操作が初心者に与える学習効果と適性
Pixco 8mm F3.8はオートフォーカスや自動絞り制御が一切ない「完全マニュアルレンズ」であるため、カメラ任せの手軽な撮影に慣れている初心者にとっては、最初はハードルが高く感じられるかもしれません。ピント合わせや露出の調整をすべて自分の手で行う必要があり、シャッターチャンスを逃してしまうリスクも伴います。しかし、この「不便さ」こそが、写真の基礎原理を深く理解するための最高の教材となります。
絞りリングを回すことで被写界深度がどのように変化するのか、ピントリングを回すことで焦点がどのように移動するのかを、物理的な操作を通じて直感的に学ぶことができます。このレンズでパンフォーカスの技術や露出の三角関係(絞り・シャッタースピード・ISO感度)をマスターすれば、他のどんなレンズやカメラを使用する際にも役立つ、確固たる撮影スキルが身につきます。したがって、本製品は単なる特殊表現用のレンズとしてだけでなく、写真の腕を一段階ステップアップさせたいと願うカメラ愛好家にとって、非常に適性の高い学習ツールと言えるでしょう。
Pixco 8mm F3.8に関するよくある質問(FAQ)
- Q1: Pixco 8mm F3.8はオートフォーカス(AF)に対応していますか?
A1: いいえ、本レンズは完全なマニュアルフォーカス(MF)専用レンズです。ピント合わせや絞りの調整は、レンズ本体の金属リングを直接手動で回して行う必要があります。 - Q2: オリンパス(OM SYSTEM)とパナソニック、どちらのカメラでも使えますか?
A2: はい、マイクロフォーサーズ(MFT)マウントを採用しているカメラボディであれば、オリンパス(OM SYSTEM)やパナソニック(LUMIX)のどちらのメーカーであっても、マウントアダプター不要でそのまま装着・使用することが可能です。 - Q3: レンズを装着したのにシャッターが切れないのですが、どうすればよいですか?
A3: 本レンズは電子接点を持たないため、カメラ側がレンズを認識できません。カメラの設定メニューから「レンズなしレリーズ」または「レンズ無し時のシャッター」の項目を探し、「ON(許可)」に設定することでシャッターが切れるようになります。 - Q4: 前面にレンズフィルターやレンズフードを装着することは可能ですか?
A4: 本レンズはフィッシュアイ(魚眼)レンズ特有の設計により、前玉がドーム状に大きく突出しています。そのため、一般的なねじ込み式の保護フィルターやレンズフードを前面に装着することはできません。持ち運びの際は付属のレンズキャップをご使用ください。 - Q5: 撮影した写真の四隅が黒く写る(ケラレる)のは故障ですか?
A5: 故障ではありません。本製品はイメージサークルの小さいCCTVレンズをベースに設計されているため、マイクロフォーサーズセンサーの四隅まで完全に光が覆いきれず、周辺減光やケラレが発生する仕様となっています。レトロな表現としてそのまま楽しむか、画像編集ソフトでトリミング(クロップ)を行ってご活用ください。
